夜は明ける

学祭1日目が終わって学校が暗くなった頃、

真野と早見は真野の自宅で晩酌をしていた。


「で、結局高橋さんに言ったの?恋人が姉の透子だったって。」

「恋人とは言ってない。」

「ふうん。可哀想に。高橋さん、尚に気があったかもしれないのに教えたんだ。」


ビールを飲んだ真野は早見を見ずに言った。


「仕方ないだろ。向こうが知りたがったんだから。

それに着ようとしたら嫌でもわかる。」

「まあ、俺もちらっと言っちゃったんだけどね。」

「言ってんじゃねぇか。」

「それで、どうするの?」


ビールを置いた早見はぐいっと向かいに座る真野に詰め寄った。


「何が。」

「何がって…告白されるかもしれないでしょ?」

「知らない。」

「冷たいなあ。」


そっぽを向いた真野は早見に言い直した。


「透子の代わりはいない。」

「はいはい。ごめんね尚。」


引き下がった早見は部屋のカーテンを除き丸い月を見て呟いた。


「今頃泣いてるかもしれないね。」


真野は何も言わずにビールを流し込んだ。


家に帰ってからずっと寝ていた京子はむくりと起き上がり姉の部屋へ足を運んだ。

仏壇の前に座り手を合わせる。

写真を手に取り京子は話し始めた。


「お姉ちゃんの好きな人を好きになっちゃった。お姉ちゃん、私どうすればいい?」


ただこちらを見て笑う透子の写真は何も言わなかった。胸に抱いた京子は姉の部屋で静かに泣いた。

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