繋がる
膝を立てた真野は時計をチラリと見て独り言の様に話し出した。
「6年前、ドレスを展示する事になった時に好きな人がいたんだ。デッサン中に何度か見に来て高橋と同じ様に言ったんだ。“こういう綺麗なドレス着て見たい”って。元々ドレスは誰の為とかではなく作っていたんだけどその時その人の為に作りたいって思ったんだ。」
そう言って立ち上がった真野はドレスの前でしゃがみ込みドレスの裾を持ち上げた。
「え…足の部分…」
京子も立ち上がって持ち上げられた裾を見ると
スカートの中の足が出るところが丸く縫われて歩けない様になっていた。
「歩けなかったんだ。俺の好きな人は。」
「やっぱり…」
「あいつは、透子は車椅子だからドレスを着れても立つ事が出来ない。だから足を保護する為に中は厚手の生地で出来てるんだ。」
マーメードドレスの尾鰭となる部分の中の生地は厚手の生地で追われていた。
「びっくりしたよ。まさか妹も同じ事言うなんて。
透子は死ぬ間際に言ったんだ。」
「何て…」
「“私は人魚姫なんだって。素敵よね。”って。」
朝に言った京子の言葉を思い出して京子は口元に手を当てた。
「透子を人魚だと思ったのは高橋だけじゃない。俺もマーメードドレスを作ってる時に思ったよ。」
立ち上がった真野はポケットのタバコを出そうとして戻した。京子は何も言わずに真野を見つめていた。真野は京子の方を向いた。
「タバコ吸ってくる。高橋も体育館戻れよ。」
出て行った真野を見つめて京子はその場に崩れ落ちてため息をついた。
「あの時名前を呼ばれたと思ったのに…」
3人でドレスを着た日、真野が言ったのは京子の名前では無く、京子を見て似ていた透子の名前だったと知り京子涙を流した。
「なんだ…」
京子は学校祭の午後の後夜祭準備に戻らなかった。
京子の携帯電話が栞とマリの着信で震えた事にも
京子は気がつかなかった。
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