学校祭

一般開放している京子の高校は人で賑わっていた。

焼きそばを売っていた京子のクラスはノルマを達成し在庫の調達にクラスの男子が走っていた。

京子は栞と一緒に午前中出店を周った。


「午後からステージかあ。明日は出店だし。結局毎年慌ただしいんだよねえ。」


手にいっぱい食べ物をぶら下げた栞は満喫した顔でそう言った。


「ステージも盛り上がるじゃない。部活の出し物もあって。」

「陸上はダンスだよ。はーぁ。」


殆どは運動部のステージを見る1日目は教員のバンドも観る事ができる。


「早見も真野も今年はバンドだよ。」

「新卒だから大変だよね。」


すっかり教師を見下した栞はクスクス笑った。


「来年はもう社会人か。やだなー、就活。」

「働くの?」

「うん、大学なんて無理。」


栞は首を大げさに振った。


「京は?」

「私は…決めてないや。」


ヘラっと笑った京子に栞は笑った。

楽しむ2人は人の波に消えて行った。

午後のステージ発表に移り並べられた椅子についた2人は体育館の熱気に少しだけぐったりした。


「暑くない?」

「人も多いからねぇ。」


ざわざわと暗いステージの上で司会者がマイクを持って盛り上げる。

その姿を見ていた京子は最後なんだと噛み締めた。


「最初のステージは新卒の先生方によるバンドです!どうぞ!」


ステージの幕があがると何人の教員がステージに立っていた。早見はドラムの前に座り、真野はキーボードの前に立っていた。


「あの2人楽器できるの?」


京子の耳元に話しかけた栞に京子も返事をする。


「わかんない…」


ドラムのスティック音が鳴り聞いたことのある曲が流れる。ボーカル担当の教員が熱く歌うのを生徒が盛り上がる。いつしか栞も白熱した様子で飛び跳ねているのを見た京子は体育館を出た。

途中話しかけられた先生に体調が悪いと行って美術室へ向かった。


「はあ、涼しい。」


窓の空いた美術室は人口密度が薄く涼しい風が

なびいていた。窓の下に座った京子は自分のドレスと飾られた真野のドレスを見た。


「綺麗だなあ。」


そう言って京子は体育館の騒ぎ声を聞きながら目を閉じた。うとうとして目を開けると目の前に真野がしゃがんでいた。


「わっ。真野先生…」

「またサボりか?最後の文化祭なのに。」

「あはは、人が多くて…」


真野は京子の右隣に腰かけた。


「バンド終わったんですか?」

「嗚呼。ついさっきな。」

「キーボード出来たんですね。」

「かなり練習したからな。」


ふふっと笑った京子は真野を見た。


「あのドレス、やっぱり着たいです。」

「まだ諦めてなかったのか。」

「着れるまで言いますよ。」


ドレスを見た真野は京子を見ずに話し出した。


「あれは好きな人の為に作ったドレスなんだ。」


真野は壁に頭を立てて目を閉じた。

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