彼女が12の時
京子がまだ12歳の頃だった。
6歳年上の姉にいつも付きまとっていた。
「お姉ちゃん、足痛い?」
「ん?大丈夫だよ。」
シスコンだったのもあるが姉は生まれつき両足が不自由で車椅子生活を余儀なく送っていたのもあり、
京子が出来るだけ姉に付き添いてつだっていたのだ。家事も勉強も完璧な姉は部活には入っていなかったが3年の文化祭の時は遅かった。
車椅子な為によく両親は送り迎えしていた。
姉の口癖は“大丈夫”だった。
強く優しい姉は泣く姿を見せなかった。
同時に少し好奇心旺盛だった。その点は姉妹にているとよく両親にも言われていた。
ある日のことだった。
姉がいつものように学校へ行く支度をしていた時、
京子は何となく言った。
「お姉ちゃんは人魚姫だね。」
「あら、じゃあ王子様に会えるかしら。」
人魚姫の話を知らない京子は足が不自由な事を理由に姉に言うと姉はにこやかに答えて学校へ行った。
帰りは両親の迎えだと思っていた京子は時計を気にしながら姉の帰りを待っていた。
しばらくして8時を過ぎた頃、一通の電話があった。姉が車に跳ねられて死んだ。
暗闇で無灯火の車が突っ込んで来たものの車椅子の姉は避け切れることなくそのまま即死だった。
京子は泣いた。
「人魚姫は泡になって消えるなんて知らないよ!そんなことなら言わなかったのに!お姉ちゃん!」
葬式の時京子はそればかり言っていた。
帰りの車で京子は姉の笑顔を思い出していた。
「お母さん。」
「ん?」
運転する母に京子は尋ねた。
「私、お姉ちゃんに似てる?」
母はバックミラーを見て笑った。
「そうねえ。そっくりよ透子に。」
京子はそっかと笑い車の外を見た。
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