走った先に

真野に拒絶された京子はパタパタと走って階段を駆け上ろうと足をかけると五段目くらいで踏み外した。タイミング良く後ろから来ていた栞は京子の元に駆け寄った。


「京!」


上半身だけ起こした京子は笑った。


「栞、私の名前安定しないよね。」

「そんなのどうでもいいから、ほら、保健室行くよ!足捻ってる。」


腕を引っ張って京子をおんぶした栞は保健室まで歩きながら京子に質問をした。


「ねぇ京子、なんかあった?」

「え?ううん。何にもないよ。」

「嘘ばっかり。早見先生の話から変だよ。」


栞は京子を背負い直しながら前を見た。


「ちゃんと話してよ。」

「うん…」


栞の背中に顔を埋めた京子は元気なく頷きながら栞に言った。


「また筋肉ついたの?」

「…テニス部のエースで部長ですから…」


ふふっと笑った京子を保健室まで運んだ栞はため息をついた。

保健室の先生はいなく栞が京子を椅子に座らせて先生を呼びに行った。

すぐに戻ってきた栞は汗をかいていた。


「もうすぐ代理の先生くるから。痛い?」

「うん、足首…」

「うわ、腫れてる。」


靴下を脱がしてくれる栞の短い髪を見ながら京子は栞に言った。


「私、恋したの。」

「え?まさか、早見先生?」

「ううん。ドレスに。」

「は?」


京子を見上げた栞は目があった京子を疑いの目で見つめた。


「少しヨレヨレなんだけどデザインとか本当に綺麗で。だからそのドレスを着て見たいって思ってて。私、展示品もあるのにそのドレスの事で頭がいっぱいで全然デザイン画をかけないの。」


真剣に話す京子を見て近くの椅子を引っ張って座った栞は足を組んだ。


「それだけ?」


京子は少し考えてから首を振った。


「ううん。それだけじゃない。そのドレスを着たいって言ったら真野先生が“着れない”って言うの。サイズも丈も大丈夫そうなんだけど。それで追求したら話逸らされたり拒絶されたの。」


保健室の外を見た京子は続けた。


「凄く気になったの。どうしてもしりたくなったの。」


その姿を見た栞は髪をかいた。


「ねえ、あんたのその興味も分かるけど、それよりあんた真野先生の事…」


そう言いかけると保健室のドアが開き息を切らした真野が京子の足を見た。

腫れて赤くなった京子の足を何も言わずにに手当てした後自分の額を拭った真野は京子に尋ねた。


「痛みは?」

「いえ、無いです。ありがとうございます…」

「もう、今日は帰りな。親は?」

「あ、えと、2人とも仕事で…」

「送ってく。」


そう言って保健室を出た真野を追いかけるように栞はたち上がった。


「荷物持ってきてあげる。教室にある?」

「うん、お願い。」


保健室のドアを閉めた栞は真野に声をかけた。


「真野先生!」


振り返った真野は栞を見て怪訝そうに振り向いた。栞は真野の目の前に立った。


「何でそんな慌ててんの?」

「別に。」

「普通に考えて今の時代教師の車に乗せるなんてやばいでしょ?」


少し考えた真野は栞を見て言った。


「…俺の所為だから。」

「え?」


聞き返した栞に答える間も無く真野は栞を横切り職員室に戻った。

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