第8話 双子語り1 挑発無限大
「うーん、玲奈ちゃんって子は随分攻撃的だねえ」
ヒロはふむふむと頷いて聞いていたが、ここで口を挟んできた。
「うん。美人さんなんだけどね。なんかテレビでニュースとか読んでいそうな感じ」
「しかし、トモもねえ。いきなりそんなこと言われて困ったでしょう?」
「すごく困った。反応しようがなかったし」
私はケーキをつつきながら答える。
「しかしコージ君の好みを玲奈ちゃんって子に教えちゃうのはないわー」
「うん。それは自分でも思ってる。今から考えると、私玲奈ちゃんを挑発しちゃってる感じだよね?」
「してるしてる、めちゃくちゃ挑発してるよ。乱闘になってもおかしくないぐらい。うちの学校なら間違いなく取っ組み合いだよ」
女子校のワイルドさをなめちゃダメだよ、とヒロは続けてアイスコーヒーを一口。そんな話を聞くと、女子校がこわくなる。
ヒロの通うオカジョは文字通り丘の上にあるカトリック系の女子校で、世間一般的にはバリバリのお嬢様学校で通っている。
「そんなので取っ組み合いになったりするの? オカジョの子はみんなお嬢さんなんじゃないの?」
「甘い甘い。男子の目がないからみんな暴走してるよ。取っ組み合いなんて日常茶飯事だもん」
へえー、そういうもんなんだー、と思ったけど詳しく聞くのはやめとこう。私の話に関係ないし。
「話それちゃったけど、私としては挑発する気は毛頭なかったんだけどね」
「トモ、気が付いてなかったみたいだけど、投げつけられた白手袋を拾い上げて捨てた感じだよ?」
「……反省してます。後悔もしてます」
「玲奈ちゃんって子はその時相当悔しかったと思うよ。彼女、よく我慢したよね」
「悔しい? 悔しいの? 玲奈ちゃんが? なんで?」
「だってトモの言ったことは『チョコあげようとしているのに好みも把握してないの?』って馬鹿にしてるみたいなもんだもん」
「あー、なるほど。その発想はなかったわ」
「そこんとこが分からないとかダメすぎだよ。だいたいトモはさあ、昔からマイペースすぎるんだよね」
「いや、世の中の誰に言われてもいいけど、ヒロにだけは言われたくない! だいたい今日のことだってさ、ヒロが余計なことするから……。私、ずっとやめてって言ってたじゃん!」
そう言えば私、激怒してるんだった。こんなところで人格攻撃されたら、怒るよ? 私だって。怒りのチャージが溜まってきたぞ。
ヒロは私の顔色が変わったのを目ざとく察して、あわててポケットを探り始めた。
「まあ、それはいいや。トモ、ちょっと待って」
ヒロはスマホを取り出すと、電話をかけ始めた。
「2丁目の小田ですけど……。……18番と21番を。……はい。……お願いします」
「どこにかけたの?」
「長くなりそうだから、ピザ頼んじゃった。20分ぐらいで来るって。適当に選んだけど、いいでしょ?」
「うん、別になんでもいいや」
「よーし、こうなったら、とことん聞くよ、トモ。それで続きは?」
なんか、ヒロはこういうとこ、上手いよね。
仕方なく、私は続きを話し始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます