みうにとっての彼
今回はみうの視点で進みます
彼は歪だ。3人の女の子に(私を含め)好かれているのに答えを出せないでいる。
いつだったか彼が泣いているところを見てしまった。私は
「なんで泣いてるの?」
って聞いたら
「俺にも分からない」
ってはぐらかされてしまった。いつもの私なら突っ込んで話を聞くところだけど、あまりにも悲しそうに泣いていたので優しく抱きしめることしかできなかった。
彼には重すぎるのだろう。私だって3人の好きな人から1人を選べと言われたら、きっと身が裂けるほど悩んで泣いてしまう。
時々彼が悲しそうに笑っていることに気がついているのは私だけだろう。三原さんはベッタリしてるだけで彼の気持ちを考えている様子は見られない。長谷川さんは近すぎて気がつけていないのか、いたわりの言葉とかをかけているところを見たことがない。
私が初めて彼に出会ったのは桜が満開に咲き乱れていた高2の春だ。自分で言うのもなんだけど、男の人が渡しを見る視線は特別感があった。でも彼は全く興味がないように女の子と一緒に横をすり抜けていった。付き合ってるのかな? というのが第一印象だった。次に出会ったのが校舎裏。告白の呼び出しで、「なんで告白ごときで私をよびだすのかしら? いい迷惑だわ」そこにいたのが彼だった。ぷかぷかとタバコの煙を吐き出していて、まるで告白する感じじゃなかった。
「あなたが呼び出したの?」
「知らん。はじめましてだな」
本当に私に興味がないらしい。それが逆に私の興味を引き出した。
「告白の呼び出しでここに来たのだけど」
「じゃあ俺はお邪魔だな。これ吸い終わったら消えるからちょっと待ってくれ」
「学校でタバコ吸うなんて無駄な度胸があるのね」
「まぁここならばれないし。てかこんなところに呼び出されて来ちゃうとか犯される心配とかしないの?」
「下世話な話ね。初対面の女の子に『犯される』とか失礼よ」
「そりゃ悪かったな」
彼はポケット灰皿にタバコを入れて立ち去ろうとした。
「私のことかわいいとか思う?」
「どんだけ自信あんだよ……。かわいいんじゃないかな」
「思ってないのが丸わかりなんだけと」
「顔だけが全てじゃないからな」
さばさばしてる。なんか人生を達観していてかわいそうに思えた。人をかわいそうにおもうなんて傲慢なのはわかってるけどね。
「私、貴方に興味が湧いたわ。名前教えてくれる?」
「……だよ」
そこに私を呼び出したであろう男の子が現れた。恋敵と勘違いしたのか彼を睨みつけている。彼は実にめんどくさそうに
「俺は消えるから怒らないでくれや」
そのまま立ち去ろうとしたので
「彼が私の彼氏なの。だから諦めてね」
精一杯の嫌がらせと面倒を切り抜けるために嘘をひとつ。
彼の引きつった顔を見ることができてなぜか満足感。
それから彼の教室まで行って会話をするようになり。いつの間にか好きになっていた。
人を好きになるのに理由は必要ないってことだわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます