珍しく前編だよ!

「子猫を拾った?」

 つい今しがたコンビニに行くと出ていったまゆは、食べ物でも飲み物でもなく子猫を抱いて帰ってきた。

 すでにまゆになついているようで、玄関でまゆが猫をくすぐってあげているのだが、これまた気持ちよさそうに目を細めている。

 なんかこの光景を見ているとだめとは言いづらい。いや、猫もかわいいけど楽しそうに猫と戯れているまゆがかわいいのだ。でもこれ美姫に見つかったら……。


「ダメです」

 やっぱりな。

「なんで美姫ちゃんの許可が必要なの?」

 1歩もひかないまゆ。いつの間にかまゆは『美姫ちゃん』って呼び始めたのね。仲が深まったと思えば大変うれしいものだ。

「私はこの家の家事、全部やってるの。猫を飼うって言っても最終的に面倒を見るのは私だからダメです」

「私だってこの家にいるもん。ちゃんとお世話できる……」

 段々声が湿っぽくなってきた。

「とりあえず新しい飼い主さんが見つかるまではいいじゃん」

「貴方はそうやって三原さんのこと甘やかすし……」

 旗色が悪いようなのでそそくさ玄関から脱出。


 まゆは猫をリビングまで連れてくると、ソファーに座ってずっと飽きずになでている。絵になるなぁ、なんてしみじみ思ってしまった。

[「名前決めてあげないとな」

「名前なんて決めたらますます離れなくなるよ」

 美姫は大変ご機嫌斜め。

「なにをそんなに敵対視してるん?」

「別に~~」


「飼う飼わないはおいといて。少なくとも一時的には一緒に生活数するんだから、飯とかトイレとか買わんとな」

「そうだね」

 ちらっと見ると、まゆは猫と一緒に丸くなって眠ってしまったようだ。

 それを美姫も微笑ましく見てる。

「みう?」

「貴方の部屋で寝てるよ」

「さいですか」

 堂々と俺の部屋に侵入したのか。見られたくないものあるんだが……。これでも年頃の男の子ですよ? ていうかみんな眠るの好きね。あと数日で学校始まるんだが大丈夫なんかね。


 まゆには30分ほどのお昼寝してもらおう。


「まゆ。猫用の物買いに行くから起きてー」

 一応起きてくれたが眠そうに目をこすっている。

「どこにそんなお金あるの?」

 美姫が絶賛不機嫌だ。これは長続きしそうだなぁ。猫くらい別にいいと思うんだが。


 近場のショッピングモールまで行こうと思ったんたが、みうが

「大きいドラッグストアのほうが意外と揃ってる」

と教えてくれたのでマ○モトキ○シまで自転車でやってきた。ちなみにまゆの自転車は美姫のものだ。

美姫はなし崩し的に猫を飼うことを認めた。ほんとに渋々だったがまゆが珍しく強固な姿勢だったので、押し負けたというのが本当のところだった。

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