後半だけど後半ぽくないわ

「いい加減一回帰るわ」

 昼下がりにみうが切り出した。まぁ数日帰らないのって親的に心配の種でしかないだろ。帰るというのは妥当な判断だ。

「りょーかい」

 適当に返すと

「なに言ってるの。あなたも来るのよ」

「なぜに?」

 嫌な予感しかしない。

「一緒に来るのよ。お母さんには、休みの間だけ彼氏の家に泊まるって伝えたの。そしたら紹介してほしいって」

 完全にとばっちりだ。

「えー」

 めんどくさそうなイベントだなぁ。

「貴方は行く必要ない!」

 美姫が語尾を強く反抗した。

 あれ? 美姫はまゆの勉強見てあげてたんじゃないの?


 あれやこれやとあり、結局みうのことを送っていた。

「バイトは決まったのかい?」

 道中俺から切り出すと

「決まってないわ。そもそもバイトってしたくないのよね」

「お母さんにプレゼント買ってあげるんじゃないのか?」

「そのつもりなんだけど……。なんか人から指図されるっていうのが嫌なの」

「いろいろ突っ込みどころはあるセリフだな」

 みうは暴力的な美を持っているので、それを活かせる仕事……キャバクラしか思いつかん。

「バイト計画は終了ね。だいたい私を時給900円で従わせようとするのが間違いなのよ」

 確かにみうを安く使うって聞くとカチンとくるな。いや、俺のみうではないが。


 みうの住んでいるアパートに到着した。すぐに帰ろうとしたが、みうが「お茶でも飲んでけば?」と言ったのでお言葉に甘えて室内に入った。

 みうの家で誰かの影を見たことがない。母親の話すら聞いたことがない。

 父親が夜逃げしたというのは教えてくれた。でも生活のほとんどが謎に包まれている。

「着替えるからちょっと待ってて」

 家に入るなりそう言った。その後茶目っ気たっぷりに

「覗いてもいいわよ」

 輝かしい笑顔で嬉しいことを言ってくれるのがにみうだ。まぁ実際には覗かないが。

 みうの私服ってワンピースしか見たことない。寒い日に足を出す女の子の根性ってすごいよな。みうってかなりスラッとしてるけど胸ってどんくらいあるんだろ? なんて煩悩まみれのことを考えていると、みうが戻ってきた。女の子の価値は胸じゃないのは強調したいところだ。


 「いい加減はっきりしない?」


 決意に満ちた顔だった。きちんと向かい合わない会話が始まった。

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