1時間を900円で売るのってもったいなくない?前編
「バイトがしたい」
4人でグダグダテレビを見ていたときに、みうが切り出した。このコメディ、唐突が多い気がするが気にしないでいこう。いや、気にしないでください……。
「なぜに?」
「どんなバイト?」
俺と美姫の質問が被った。
「金欠なの」
短い返答だなぁ。
「ぐへへ。おじさんがちょっとしたバイトを紹介してあげるよ」
「きもい」
「ちょっとそれはない」
「大丈夫?」
全員に拒否された。まぁわざとやったことだが。さあ誰がどのセリフを言ったでしょう? 正解者には――特になにもないが。
「なんのバイトがしたいの?」
美姫はかなり現実主義なのはまだ語ってなかったな。
「うーん……。キャバクラ?」
補導されるわ。
「そんなに金欠なの?」
美姫から鋭い質問。ちなみにまゆは子猫と戯れて話を聞くことを放棄したようだ。
「お母さんの誕生日プレゼント買いたいの」
思ったよりほのぼのした理由だった。
「まぁ校則ではバイトを禁止してないしいいんでね?」
みうがバイトねぇ……。嫌な予感しかしないんだが、一生懸命求人を見ているみうは真剣そのものだ。余計な口は挟まないようがいいだろう。
「ちなみに何を買いたいんだ?」
「悩んでる」
母子家庭? らしいのでお母さんを大切にしてるのだろう。そう考えると、みうのお家事情ってまったく知らないな。――これって誤用か?
誕生日といえば、昔美姫の誕生日をすっかり忘れて寝てたら顔を踏まれた記憶が蘇った。あれはなだめるために3日かかったんだよ……。以来誕生日は必ず祝っている。本音を言えば誕生日なんて祝うのも祝われるのもめんどくさいから、その慣習は廃止して欲しいものだ。
そういえば、まゆとみうの誕生日を知らないことに気がついた。美姫は8月29日だ。
「まゆー。みうー。ふたりって誕生日いつー?」
「「知らないの?」」
おっと藪蛇だった……。
みうがすたすた俺の前まで歩いてきてスネを蹴っ飛ばしてきた。地味に痛い……。
まゆが12月7日。
みうが3月3日だった。
忘れないように気をつけねば。
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