これは前振りだからな

 前回、長谷川は学校を休むと楽ができるということに味を締めたようだ。

 長谷川がまた学校を休んだらしい。というか出席率を計算して、しれっと学校休み始めたからね。担任の先生には病弱という設定がされている。そんなんで学校でも浮いた存在として扱われている。先生も心配して休むたびに、俺にお見舞いを頼んでくるからな。


 そんなどうでもいい話を考えながらボロいアパートの203号室のベルを鳴らす。

 長谷川は前回みたいにパジャマではなく、よそ行きのかわいいワンピースを着ていた。

「いらっしゃい」

 自然と中に入れてくれた。

「タバコは吸わないでね。お母さんにばれちゃうから」

 長谷川の表情はこれ以上ないってくらい笑顔で部屋に案内された。特筆するような部屋ではなかった。ごく自然に使ってるんだなぁなんて思ったり。これで下着が干してあるのがラノベ定番なのだが、そんなものなかった。残念……って残念じゃねぇよ! 


 お茶を持ってくると言ってキッチン? のほうに行ったらしい。することもないのでスマホををぽちぽちといじっているとノックの音。開けて見ると煎茶の用意なのか、ポットにコップとを持っていたのでポットを預かって遠慮なく机の上に置いた。

 ポットからお湯を出してしばし。

「はい。どうぞ」

 と差し出してくれたのはいいんだが、嬉しいんだが。がっつり胸の谷間を見てしまった……。約得?

「ふふ。ちゃんと見えた?」

 やっぱりわざとか。

「えー。はい。見ました。黒のかなり際どい下着でした」

 こんなところで嘘ついてどーすんねんとありのままを伝えた

「正直は美徳よ」

「なんでそんなに気合い入ってるん?」

「脱がされるときに恥ずかしくないようによ」

「脱がさないよ!」

 俺をからかうのが大好きな長谷川みうなのです。


「ねぇ。キスしたいわ」

 唐突な要求に飲んでたお茶を吹き出しそうになった。

「しない」

「私のことは見てくれないの?」

「……」

 無遠慮に突き出してしてはいけないなにかが長谷川の中にもあるのだろう。

「ビビって踏み込めないよ、俺」


「あなたには知ってほしいだから……」

 彼女の決意は硬い。だからこそ

「長谷川の隠してることを教えてほしい」

 俺から一歩踏み込んだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る