この主人公ってヘイトが集まってるよな
どきどき家庭訪問編~長谷川みう~続きだよ!
成り行きというのか、強引というのか。初めて長谷川と初めて帰宅の路。
さっきまで恥ずかしがって前をスタスタと早足である長谷川は急に立ち止まった。そりゃ横断歩道で赤信号だからな。交通量も多いし。
肩を並べて同じ信号が青になるのを待つ間
「さっきはごめんなさい」
珍しく長谷川から謝ってきた。っていうか俺は何一つ悪い子としてないよ? でもこうやって謝ってきたんだ。「いや俺は……」なんてくだらないこという必要はないだろ。
信号が青になり一歩踏み出すと俺の手に、冷たい手が少し触れて、これまた恥ずかしそうにしている。
なるほどね。その冷たい手を優しく包んであげる。見るからに嬉しそうで、それがまた俺を嬉しくさせた。
そしてお互いの歩むスピードが自然とゆっくりになった。きっとこの静かで暖かい時間を過ごしたいと、俺も長谷川もそう思ったんだ。
徒歩で10分。
鍵を開けて長谷川を招き入れようとしたら、深呼吸してる。毒舌とツンとしているのは長谷川の表面でしかない。きっと学校でも知っている人はいないだろう。これが長谷川のかわいいところだ。リアル「ツンデレ」って現実にいないと思ってたけど、いたわ。めっちゃかわいいのな。
「今日、神楽坂さんは?」
「たぶん来ないな。今日は家族で飯を食いに行くって言ってたから」
「じゃあ私が貴方に服を破かれて、下着を口に入れられて大声を出せないように犯されても助けは来ないのね」
「生々しいからやめて! いろいろと突っ込みたい……」
アホな会話をしながら俺の部屋まで案内する。
やっぱり少し緊張してるのが伝わってきた。
「リビングのほうがよかったか?」
一応気遣いはする。てか、好きな人の家に初めて入るって、かなり勇気必要だよな。
「いいの! いいの! 貴方の部屋がいいの」
ということで自室。やっべ布団ひきっぱなしじゃん。
「悪り、ちょっと片付けるわ」
布団のところでかがみこんだとき、思いっきり背中を押された。顔から布団に突っ込んだ。「なにすんだこのやろう」なんて文句を言う前に(まぁ言う気はなかった)が背中に重みがやってきた。重みって表現するしかないが実際は軽いことは想像できるよな?
「ねぇ。このまま私を抱いて?」
いつもの冗談の類じゃない。だって声が震えていたから。
「貴方には神楽坂さんがいる。長い時間を積み重ねた愛情がある。それを感じる。と私は……。
貴方には三原まゆがいる。見ていてわかった。彼女と貴方にはなにか大きな秘密を共有している。
私にはなにもない。秘密も、積み重ねてきたものも。きっと貴方はふたりどちらかを選ぶ。だからせめて一回だけでも貴方を感じたい
初めて人を好きになった。最後は涙で終わるのはわかってる。それでも」
最後まで話しをさせなかった。そんなきれいな告白をされてなにもしないなんて俺にはできない。
体勢をうつ伏せから横向きに。それだけで涙でいっぱいの長谷川の顔が隣に来た。
そのままキスをした。長谷川がぎゅっと俺のワイシャツを掴んだ。
「そんな自分を安売りするなよ。答えを出せない俺が悪いんだ。
俺は3人の誰かを選ぶほどできた人間じゃない。でもちゃんと考えたいんだ。だから少し考えたいんだ」
「私も選択肢に入ってる?」
不安そうな瞳。
「入ってるよ。だから待っててくれ。ちゃんと答えを出すから」
そのまま深いキスをして長谷川は帰っていった。
本気で自分が嫌いになっていく。
それでも想いには応えたい。
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