最近、美姫のほうが難産になってる

12月最後の日曜日、朝の7時半。目覚ましをセットしたわけではないがいつもだいたいこの時間に目が覚める。

 俺は惰眠をむさぼるタイプではないので起きようと思い布団から抜け出した。あまりの寒さに自室のエアコンをつけて、一旦タバコを吸いにキッチンの換気扇の下まで「寒い寒い」と言いながら移動する。部屋がタバコ臭くなるのは避けたいのでそこまで行くのだ。ニコチンを要求する脳みそからの欲求に従って、火をつけて紫煙を曇らせると頭がスッキリしてきた。


 朝飯を適当に食パンで済ませようとしたところで美姫が来たらしい。玄関のドアが開く音が聞こえた。インターホンなんか鳴らさずに合鍵で自宅に入るような気軽さでキッチンまで入ってきて

「おはよ!」

 ずっと見てきたかわいらしい笑顔で元気に挨拶。

「あぁ。おはよ」

「朝ごはんまだでしょ? 目玉焼きとバターロールでいいかな?」

「いつもありがとな」


 作ってくれた朝飯を食べてる俺の様子を美姫はニコニコしながら見ている。

 バターロールをパクっと口にしたタイミングで

「今日、スーパーに買い物に行くんだけど付き合てもらってもいいかな?」

「俺のための買い物だろ? 荷物持ちくらいさせてくれ」

 一度自室に戻って適当に服を着てキッチンまで戻ると美姫が洗い物をしていた。なにからなにまでやってくれて。いつも感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。そしてその好意に未だはっきりと応えられなくて自分のことが嫌いになる。なにがダメとかなにが良いとかそういう問題ではない。


 そんなことをソファーに座って考えているうちに美姫が隣に座ってきた。そっと頭を俺の肩に預けてきた。すやすやと寝息が聞こえる。眠ってしまったようだ。いつも俺の家で家事をして自宅で勉強して、疲れて当たり前だ。今は休ましてあげよう。


 そのまま1時間くらいだろうか。目を覚ました美姫は照れているのか恥ずかしかったのかなかなか顔を見せてくれなかった。そんな美姫を俺は「相変わらずかわいいな」なんて思っちゃうあたりちょろいな。


 買い物に行く途中、犬の散歩をしているおばあさんに「夫婦でお出かけ?」なんて言われて、また美姫は照れていた。


 美姫といる生活も俺は大好きだ。


 

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