いい加減、馴れ初めとか書いてもいいんじゃね?
「ねぇ。いつまで私のこと、「長谷川」って呼ぶの?」
昼飯に愛妻?(違うけど)弁当を教室で食べていると、後ろから声をかけられた。
「まぁいろいろと理由があるんだよ」
口にしていた唐揚げを飲み込んでから、その唐突な疑問に答えた。
「その理由を教えなさい」
なんで長谷川は他の誰かが見ているところでは高圧的なのか。暴力的なまでの美を持つ彼女のその姿には女子から羨望の眼差しを集め、男子の視線を1人残らず集めている。話しかけられている俺には嫉妬の眼差ししかない。
「食後の一服行きたいから後でもいいか?」
「まだタバコ吸ってたの? 頭が悪く見えるから辞めなさい」
「実際、頭悪いんだから間違いないだろ?」
弁当箱をカバンにしまい返事を待たずに席を立つと、これまた何も言わないで長谷川が当然のようについてきた。
「なんでついて来るんだ?」
「なんでかしらね?」
「質問に質問で返すと頭悪く見えるぞ」
話しながら来たのは屋上。鍵はかかっているが、俺はこっそり作った合鍵で錠を開けるとかなり寒い外に出た。
一応、下から見られないために影に隠れるとポッケトからタバコ(アメスピ)とターボライターを出して火をつけた。
食後の一服って格別に美味しく感じる。
ポケット灰皿で火をもみ消すと
「満足した?」
タバコを吸っているときは一言も発しなかった長谷川からの質問。
「満足だよ」
短く答えるとそっと後ろから抱きしめられた。
「どうした?」
「やっと貴方と二人っきりになれたから」
「さっきから二人っきりだったじゃん」
「タバコを吸ってるときの貴方は神楽坂さんのことを考えてるから……。」
相変わらず鋭い女の子だ。
「その一歩引いてる感じは好きだよ」
「怖くて踏み込めないビビリなだけよ」
後ろにいるから表情は見られないが、声はかすかに震えていた。
どれくらいそうしていたのだろう。
ぱっと長谷川が離れた。俺が振り返ると彼女の瞳には涙が溜まっていた。どう声をかけたらいいかん悩んでいると、彼女はすっと背伸びしてキスをしてきた。避けることは可能だったかもしれない。でもそうしなかった。よくないことだとはわかってる。
でも長谷川の顔に笑顔が戻ったのが嬉しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます