たまには真面目なお話も

告白


 小さなときに初めて抱いた夢はお嫁さんだった。いつもとなりにいる男の子のことが好きで、大好きで。お嫁さんになりたいって夢見てた。今考えると恥ずかしいけど、微笑ましい夢だと思う。

 それはおとぎ話のように続いてる。きっと彼を好きと思う気持ちは永遠に終わらないんだ。

 彼は私のことをどう思っていたのだろう。偶然出会っただけ? 私は運命だと思ってる。

 何度も好きと伝えようとして、何度もためらった。言うことで変わってしまう何かがある気がしたから。

 ずっと不安だった。彼が私の隣からいなくなってしまうことが。積み重ねた時間が長くなればなるほど、その不安は大きくなっていった。

 でも今は彼が隣で笑ってくれている。

 それがなによりも嬉しい、の。




 今日も今日とて美姫と下校している。でもなぜか美姫が暗かった。時折見せる暗さだ。いつもこのシーンだと美姫のセリフは

「私を置いてかないで」

やっぱりな。なにを不安に思っているのかはさすがに解る。でも軽々に答えてはいけないことだ。だから俺にできることはひとつだけ。そっと手を握って家まで送ることだ。


回想


 昔、というほどでもないがまだ中学生だったときだ。美姫の友達にキレられた。美姫の気持ちを知ってて答えを出さない。

 その優柔不断が美姫を傷つけてる、と。

 俺もキレた。俺と美姫が積み重ねた時間の間にどんな気持ちがあるのか知らないくせに踏み込んでくるな、と。

 美姫が泣きながら間に入って仲裁となったのだが、むしゃくしゃした気持ちの吐出口に困って人生で初めてタバコを吸った。なにが美味いのか解らなかったがなんとなく愛煙家の気持ちがわかったような気がした。


 それからずっと。美姫はタバコのことだけはなにも言わず黙認している。


 そこが俺たちの踏み越えられないラインだということだろう。

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