第11話 進捗状況確認

 一日粘って何もなしというのはいくらなんでも。

 妙に屋島が楽しそうだと思ったら、欲しいものがただでもらえたらしい。わざわざ夜中に見せびらかしに来るくらいだから相当うれしかったのだろう。ただし顔には出ないし声にも出ない。雰囲気と行動で充分。

「ヨシツネさんは?」

 〉〉まだ寝てるんじゃない? 日曜だからね。

 KRE鎌倉支部の一階は事務所。二階がスタッフ休憩室。キッチンもある。能登が入ったことがあるのはそこまでで、最上階の三階はKRE次期社長・岐蘇キソの自室。

 巽恒ヨシツネはここには住んでいない。支部から五分ほど歩いたところにある一軒家。もともと廃屋だったらしいが人が住めるレベルまで無理に改造させたらしい。勿論どこぞの次期社長に無理に無理を言って。

「今日は行かないのかな」

 〉〉行きたいみたいだよ。結構やる気じゃん。

「居る場所がわかるんなら早く決着つければ、て思っただけだよ」

 〉〉ノリウキだったらなにもらった?

「なんでもいいからひとつ、だよね。結構難しいなあ」

 〉〉欲張りなのか。欲がないのか。本当に欲しいものは売ってないのか。

「なにそれ」

 伊舞イマイがお茶を運んできてくれた。温かくて美味しい。

「そういえば、キソさんは」

「若なら朝から会議です。おそらく夕方まで戻らないかと」伊舞が言う。

「あ、じゃあひとりで大変ですね」

「そうですねえ」末尾を濁しながら伊舞がディスプレイの前に腰掛ける。

 抜けているように見えて伊舞はひとりでなんでもこなす。相手を油断させているかもしれない、と疑ってしまう。しかし明らかに仕事の邪魔をしに来ている能登たちのことを邪険にもせず優しく迎え入れてくれるので、岐蘇に厭な顔で睨まれても特に気にせず居座り続けることができる。ほとんどは屋島に連れられてなんとなくついてきてしまうだけなのだが。

 〉〉ヨシツネさんも居ないし、一度出直す?

「俺が時間作ったときに限っていないんだよねあの人」

「ヨシツネさんなら出掛けられましたよ。デートだそうで」伊舞が言う。

「え? 誰と?」

 〉〉女の人ってことはないから男じゃない?

「え、なんで?」

 〉〉どこに行ったんだろうね。

 わけがわからない。

 だって巽恒は。

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