第28話 紫のグラジオラス花言葉は情熱

『決勝戦。数多の猛者を打ち破り頂点を

つかめるのは一校のみ。それでは

オープン!』

緞帳が開く。

「「わあぁぁぁぁーー!!」」

観客席はまだ、戦う前から熱狂であった。

俺達や対戦相手を見て。

「す、スゴいなぁ。こんなに熱くなって

声を出すのは。」

「フフ、わたしは慣れているけど

やっぱり由利くんを見ていると面白くって」

天然ボケの久坂が微笑みに内心舌打ちする。

「・・・はぁ、なんだかお前は

俺の保護者かって思えてならない。」

「あはは、わたしそんなにお姉さんキャラ

ような包容力あるなんて

照れるなぁ~」

「ちがう。まったく違うからなぁ!」

俺の言葉に包容力と勝手に受け取り

恥じらい嬉しそうな姿に一度嘆息して

弱々しいツッコミをする。

『それでは早速、第一戦目を開始!

それでは、前へ。』

久坂の話をしていると、とうとう戦いが

始まる。なんだか、俺も緊張してきた。

「それじゃあ、勝ってくるよ。」

イベントなど慣れているのかいつもの

笑顔で立ち上がる安藤・・・ちがう!

手が震えていった。

「うん。期待しているねぇ!」

久坂は短い返事。信頼の眼差しを向けて

小さくガッツポッズして。

「落ち着いて答えてね」

エリーゼは、助言のような応援。

さて、三人が俺に視線を向けて

いやがるなぁ・・・わっーているよ!

「その・・・なんだ。

お前には期待していないが、熱いクイズ

をするのだけは期待しているから、

いつものようにやればいいんじゃないか?」

「ああ、みんなありがとう。

とくに由利なんだか熱くなれたぜ!」

微笑みながらサムズアップをする。

俺も仕方なくサムズアップして答える。

「ねぇ、エリー。由利くんが恥ずかしそうに答えるの見るとなんだか、

二人は好きじゃないかなんて邪推するのは

わたしだけかな?」

「大丈夫あっちゃん。わたしも同じことを

考えていた。」

二人がひそひそと話をしているが、

聞こえているぞ。隣に座っているん

だから必然そうなると

思いもしなかったのか?

「お前らなぁ・・・」

こめかみを抑え、俺は自然にため息が

こぼれる。

「あははは、なんだか、勇気が出たよ。

それじゃあ行ってくる」

これ以上の会話しているといつまでも

進まないからだと思ったのか

そう言って向かっていく。


『出題するのは全部で15問。

福井県吉田群よしだぐん

永平寺正解高校えいへいじせいかいこうこう安藤左内あんどうさない

彼は爽やかにクイズを解きときには

果敢に攻める姿から、

高貴こうきの美しき戦士・・・・・

の二つ名を呼ばれています』

出身校や名前や二つ名まで説明する司会者。

安藤が歩くと色鮮やかな

スポットライトが向けられる。もはや

高校一年限定の決勝規模ではないほど。

「「キャァーーーーーー!!」」

「「わあぁーーー!!」」

黄色い声に熱い声援。彼は手を振り答える。

『その強さと美しさは、部の希望か!

京都左京区さきょうく

流星左京高校りゅうせいさきょうこうこう一年クイズ部の山城阿琉やましろある!彼女の実力はいかに?』

黒のツインテールでスタイル抜群。

山城阿琉は、今まで決勝や頂上決戦を

したことがなかった。だからこそ

緊張の渦に呑まれていた。

「よろしくお願いします」

安藤は、対戦相手に頭を下げ

いつもの言葉を発する。

「よ、よろしくおねがいしゃす!」

逆に上手く挨拶の言葉を発せず

羞恥に苛まれることになった山城阿琉。

安藤や司会者はよくある失敗の一つで

こういうときは、無反応が傷を最小限に

知っている。クイズに挑む二人が

筐体のイスに座ると司会者は前よりも

早口で声高に言う。

『これが、決戦の火蓋を切ることでしょう。

観客も熱狂!仲間を見守る姿に期待を

応えようと静かな闘志を燃やせています。

クイズを出題するジャンルはランダム。

読み上げている途中でも分かったら

今回も答えてください。答えは隣に置いてあるペンです。

それでは、第一問・・・・・・・

第17代内閣総理大臣は?』

先に答えるのは山城阿琉。安藤はペンを

動いていなかった。

『おぉーと、先に回答したのは山城さん

大隈重信おおくましげのぶ正解!』

巨大モニターに答えと右下に解答者の

名前が表示。

「・・・よし!」

小さくガッツポッズする山城。山城阿琉の

得意な歴史が出たのですぐ答えれた。

『それでは、第三問。

通算本塁打ほんるいだ868本の記録を

持つ野球選手は?』

入力をしたのは、安藤。

『安藤の回答は・・・・・

王貞治おうさだはる。正解!

ちなみにこの記録は、一位でありまして

今でも記録を塗り替えていない。』

戦いは加熱していく。三問と四問も

安藤が疾風のごとく回答し二点を得る。

『第五問。この難読漢字を答えてください』

観客と待機する永平寺高校と流星左京高校の

クイズ代表の一年らもモニターを向ける。

大きく漢字が表示していて間隔を

置いている。

葡萄

赤茄子

鳳梨

桜桃

全部で四問だった。僅かに山城が素早く動く。先に回答したのは山城阿琉だった。

『山城さんが速かった!

ぶどう、トマト、パイナップル、

さくらんぼ・・・全問正解。

当たり前のように答えていく、安藤さんも

山城さんも間違わずに!

もはや、スピード勝負の模様になった

みたいに』

戦いは、ほぼ拮抗していた。回答数なら

安藤左内が上であるが一点差だ。

珍しく傍観するクイズの狂人者の

由利騎魅正。彼は出題に出たクイズは

全て――もとい王貞治以外のクイズは

分かっていた。スポーツや芸能には

無知に等しい。もちろん無知というなにも

知らなくはないが、まったくない。

彼は気づいたいた。山城という女子は

クイズに答えていく内に段々と調子が

良くなっていることに。

(あの女は純粋にクイズを楽しんでいる。

あの感情は安藤にはない!アイツは

クイズに熱くなるが世界のような・・・

自分の世界がない・・・・・

難儀な相手で面白い奴だ!)

由利はあの山城阿琉の戦いに心が熱くなる。

自分の世界。そう考えている由利は

周りが消失しクイズしか見えなくなることをそう呼んでいる。

「・・・・・おもしれぇ。初戦から

こんなに熱いなら俺の出番が楽しみだな」

つい、いつもの発作的な発言をすると

エリーゼは、飽きれ顔で言う。

「ハァー、まさか仲間の勝利よりも

クイズの流れに燃えるって・・・」

「それが、由利くんだからねぇ」

「そうよね。アイツはいつもクイズを楽しそうにしているから仕方ないわよね」

久坂篤とエリーゼは、熱中する傍観者の

由利に苦笑していた。慧眼けいがん

由利は向けられる羨望のようなものと

ひそひそ話が聴こえていた。

「・・・なんだよ、それ。そういうのは

俺が彼処あそこに立ているときに

使うべきセリフだろ。こんな傍観して

いるときに使うなよ」

否定しようと抵抗したが、効果はなかった。

そんなほのぼのした会話とは違い

安藤左内は焦燥感しょうそうかん

冷静な判断能力が磨り減っていくような

感覚にいた。

(ヤバイなぁこれは。あせりが

止まってくれない。この戦いは・・・

負けたくない。由利を越えるのにこんな

所で・・・負けられるかあぁぁぁぁ!!)

安藤左内は部長の久坂の強さにうらやましかった。だが、由利騎魅正と

幾度と戦い由利の強さとクイズに対する

強い感情にいつの間にか憧憬どうけい

の存在になっていた。

そして、あまりにも険しく高い壁でも

あった。クイズに対するスタンスも

想いも・・・なにもかもが。

「グラジオラスは、常に俺を

ストレリチアにハボタンを。」

花に造詣が深い安藤左内は全力を発動する。

追い込まれ切迫感に落ち着かせるために

好きな言葉を言う。こんなナルシストな

言葉は自分でも重々に理解している。

だが、その羞恥な決めセリフを放つことで

これ以上の羞恥はないと悶絶しそうに

襲われるがもう一方で背水の陣でもある。

これ以上ない・・・・・退く場所がなく

全力で本当の勇気と蛮勇ばんゆう

双方が起こすこの言葉が切り札。

『なんと、安藤左内ここでルーティンの

セリフを言ったあぁぁ!

わたしの目の錯覚なのだろうか

あふれてくる自信と本気を

覚えさせるのは!?』

司会者の解説と言葉に観客の声援が上がる。

『第六問。この素因数分解そいんすうぶんかいの答えてください』

二人のパネルには∫999と。

素因数分解。∫の中にある数字を

一番低い数字から割っていく。

最初は半分に出来るかで、考えた方が

確実でスピーディーにいける。

そして、割った数は割っていくそれを

何度も繰り返していき、不可能になるまで。

そして、割る数字を書くのは∫の外の左に

書くという中学で学ぶもの。

そして、この場合は早く解けるか

または、知っているかが勝負の

分かれ目となる。

計算は始める二人そして、長く感じる

短いときが経ち先に答えたのは安藤。

『答えを書いたのは安藤さん。

答えは・・・3の3乗さんじょう×かける37・・・正解!速かった。

答えるのが速かったです』

「なっ・・・くっ!」

歯軋はぎしりをするほど悔しがる

山城阿琉は深呼吸しそして実力を

鼓舞するための言葉を放つ。

「成せば・・・なる!」

(これが、彼女の本領発揮ことか・・・)

安藤は、冷や汗が流れるのを感じながら

大丈夫だと落ち着かせる。

だが、第七、八、九も向かいにいる相手の

山城阿琉が答えこれで一点差で山城が

逆転した。

「くっ!」

「勝ってる・・・このままいけば!」

『第十問。元亀げんき元年は何年?

・・・安藤さんが先に答えた!

1570年・・・・・正解。これで互角となった!』

「よし!」

由利ほどでないが安藤左内もこの戦いに

燃えていた。

そして次も安藤が答えその次は

油断したのか山城が答えるが十三問で

安藤が勝つが、山城も次に正解した。

そして、最後の問題にして後、一点で

勝利が決まる場面となる。

『これで、最後のクイズ!第十五問。

紫のグラジオラスの花言葉は?』

それは、花言葉のクイズ。そしてそれは

勝負は決まった・・・安藤が得意で

由利に勝ったことがある得意分野。

『安藤が回答したそれは

情熱・・・正解と同時に勝者、

安藤左内と決まりましたー!!』

「うおおぉぉぉぉぉーー!!」

勝利の歓喜をおたけびを上げろーーーと

言わんばかりに叫ぶ。

「「ワアァァァァ!!」」

観客も応えるようにおたけぶ。

初戦の激戦を勝利になり由利達は

安堵し敗北した山城阿琉は僅差で負けて

しまったその顔は清々すがすがしかった。

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