第24話 第二回春のクイズ一年代表大会

予選の全ての戦いは終了を告げる拡声器の

厳かな言葉。

『午後2時、全ての予選戦は終了した。

敗戦となった各校の代表部も次の活躍を

期待する。えー、早速ですが

次の舞台となる場所は旧講義室でクイズ部は

開始の40分前に――』

久坂らとめちゃくちゃな話題をしていると

次の戦いの場所を報せるものだった。

「ようやく、賽は投げられたわけか。

行くぞ久坂!」

「一応、わたしが部長なんだけど・・・

って、早い早い!別に走らなくてもー!?」

目的の場所に俺は駆けつける。

そこは、旧センター試験の名残があった

・・・いや、ここで多くのチームが集まった

場所だ。前になかったものがある。

それは、元の教壇にあった所に

厳かなクイズ挑むための机が置いていた。

向かい合うように二つ。

予選と同じく机の平らな端ギリギリまで

画面が取り付けていて傍らには入力するため

のペンが置かれている。

「なるほど・・・テレビやネットで

よく見かけるあの机が置かれているのか。

予選なんかよりも面白そうだ。」

「はぁ、はぁ・・・そう熱くなってくれたら、誘ったかいがあったかな。」

久坂が息を切らしながら、追い付き

そんな前の勧誘の事を言うのだ。

「・・・随分、前の事を。

そう上から目線はやめろ同い年だろうが。」

「いや、いや!立場的にはわたしが

部長!それにけっこう尻拭いしているのに

それを言うの!?」

「ちっ!」

「えぇー、舌打ちするの・・・まあ、

いいんだけど。」

軽口の応戦をすると、エリーゼと安藤の

二人が背後から話の間に入る。

「舌打ちなんて、したっぱの分限で

身の程知った方がいいよね。」

「ふん、毒舌のエリーゼか。

そう毒を吐いていると、本当に毒を吐く

ような力を覚醒するぞ!」

「いや、わけがわからなくなっている。」

エリーゼの牙は、回避する。

「今日はなんだか、バイタリティーが

溢れている由利はそう熱くなるのだった。」

「・・・なんだよその、語り口は。」

いつもの爽やかな安藤とは思えない

皮肉な親しそうにからかうセリフ。

スポーツマンシップの塊の男がそんな

事を言うなんて珍しい。

俺が呆気に取られていると、安藤は

はは!と思わず失笑する。

「失礼。このひねくれた台詞を無性に言いたくなってねぇ。」

「爽やかスポーツ様がそれを言うか。」

「ふっ、由利・・・それは偏見だね。

皆がスポーツやっているから

爽やかなんてないよ。

どっちかと言うと、山賊のような

社会不適合者の集まりだよ。」

「いや、それが一番の偏見だろ!!?」

どうしたんだ、エリーゼも安藤も。

俺が困惑をしていたのか、三人は

同じタイミングで笑う。

「・・・本当にどうしたんだ。

変な物を食ったのか?

胃薬あるから、ほら食べろ。」

ポケットから胃薬(もちろん処方ではなく

市販の物)を取り出す。

久坂は、こめかみを押さえながらため息。

「どうして胃薬をポケットなんかに

入れていたかツッコまないことにするけど

・・・エリ、安藤も由利くんを受け入れ

ているから、こんな珍妙なやりとりを

しているて、わたしは思うよ。」

久坂が優しい笑みでそう言うのだった。

二人は否定しない、肯定だとこういうときは

受け取るがそれは、早計だと判断し

そうかよ!と返事するのみ。

さて、そんな無駄口をしていると

時間が訪れた。

マイクを持つさきの厳かなおじさんが元は

教壇の中央に移動し説明が始まる。

似た場所がいくつかあり、そこでチーム戦を

する。予選と違いチームの中から一対一で

クイズ全10問戦い。

最大4回勝負で3勝した方が勝利となる。

そしてこのチーム戦の戦いする場所は、

この講義室と多目的用室などで行う。

『――えー、それではトーナメント表を

黒板に貼りますので、呼ばれたチームは

職員の指示に従い向かうようにして

ください。それでは、第二回春のクイズ

一年代表大会のトーナメントを始めます。』

そんな厳かとは相反するように

淡々と述べる。だが、周りの相手チームらは

気迫で溢れている輩が多い。

(やっとか。ようやくこの無聊が終わる。

ここからが、熱い戦いだな。くっくくく!)

だが、1回戦の戦いを元の教壇のステージにした右端でパイプ椅子に座りながら

チーム戦の一回は安藤。ジャンルが

黒板を裏に回す司会者。どうやら、

裏はモニターとなっていて観客にも

観れるようにしている。ちなみに観客席は

センター試験に挑んでいた席を再利用

として、ほとんど何も手を加えずにして

観客席にした。

左に向けると知り合いが真剣な表情。

そして、向かいの相手チーム観客席からだと

左の席。安藤の対戦相手が緊張した面持ちで

中央のクイズ向けにした机に向かう。

『それでは、ジャンルは生物学、植物学に

なりました!』

安藤と対戦相手は会釈して座り

いつでも解答できるようにペンを持ち

画面ギリギリに構えるようにする。

ジャンルを決定するのは、発展した

AIで正解を判断も担っている。

さて、試合が始まるようだ。

「さあ、見せてもらおうか

クイズ猛者による果敢な解答スピードを!」

『第一問。この映像は答えてください!』

モニターがモザイクでなにかがうごめく映像。これは、よくあるクイズであり

駆け引きでもある。

絶対的な自信がなく解答すれば不正解は

もちろんあり、ペナルティとして

相手が間違えるまで、または30秒の

解答権無効がありもし間違えば

相手にゆっくり映像時間を観ることが

できる。先に不正解すれば、

一問目は負けと同義である。

そんなプレッシャーの中、安藤はペンを

素早く書き込みタン!とペンで最後に

叩くとモニターの右下端に解答内容が。

鸚哥インコ正解です!』

最終問題の10まで相手に解答させる

一度も与えず圧倒的なスピードで終わる。

相手はうつむき、肩を震え始める。

相手も真剣に過酷な練習もあったのだろう。

それが、一問も解答出来ずに終わった。

おそらく嗚咽しているだろう。

「ありがとうございました。」

腰を上げた安藤が頭を下げそう言い終えると

俺達が座る椅子に進む。

「・・・ちょっと、やり過ぎじやないか?」

俺の問いに瞬かせる安藤そして、

爽やかな笑みで応える。

「まさか、由利がそれを言うんだ。

これは、真剣勝負だからね。

手加減こそ失礼になるじゃないか。」

「・・・そういうものか。」

そして、次のチーム戦二人目の戦いでは

エリーゼが席に向かうと、観客の声援が

安藤や対戦相手よりも轟音。耳を塞ぎ、

右の席を見ると久坂と安藤は、俺の

反応に苦笑する。あれ?慣れているの。

『次のジャンルは・・・漢字に

なりました!』

漢字は、クイズが最も多く

そして、エリーゼが苦手なジャンル。

帰国子女のエリーゼは漢字には

アドバンテージがありどうしても

一般の日本人よりも劣るのは必然。

「エリー・・・。」

祈るように目を閉じる久坂。

「まぁ、大丈夫だろ。」

俺は知っているエリーゼの努力を。

「えっ・・・そう・・・だね。うん!」

(エリーゼの漢字検定で言えば

4級ぐらいのレベル。久坂にはわるいが

負ける。・・・最悪あの安藤が圧倒した

ようなことがあるかもしれない。

だけど、俺と戦っていたエリーゼの

解答速度は速い・・・つまりは、

解答できる漢字なら思ったけど、そう

甘くないだろう。そして、この敗北で

糧にする展開が理想的だ。)

腕を組みエリーゼ敗北確定でこの勝負を

静かに観るのを撤しようとする。

エリーゼが静かに呼吸をする。

「ただ、静かに解答するだけ。」

ルーティン。闘志を燃やし実力を完全的に

発揮しようとするエリーゼ。

そして、対戦相手の茶髪ポニーテールの

女性もルーティンを

「ただ、静かに解答するだけ。」

・・・エリーゼと同じセリフをした。

(これは、対戦相手の心理的妨害か、

たまたま同じだけなのかともかく、

エリーゼは、集中の世界に入っている。)

相手を困惑させる目的なら失敗している。

対戦相手の女性はエリーゼがチラッと見る。

どうやら、戸惑わせるのが目的の反応だな

あの様子からして。そして、失敗したと

理解すると逆に戸惑う。

『第一問。この漢字を答えてください。』

巨大モニターに【魑魅魍魎】と表示。

先に答えるは相手側。左下にこう表示する。

ちみもうりょう

『おぉーと、正解!』

それから、次々と相手側が正解していく。

「苦手なジャンルだったんなら、

小細工をしなくてもよかったわねぇ。」

余裕綽々となると、相手は完全にもう

勝ったような態度をする。

いや、もう勝っている7問も正解している。

「・・・・・。」

だけど、エリーゼは諦めていない。

牙は、闘志は、まだ鋭く強くある。

「・・・これが、バトルピクシーな

わけねぇ・・・敵として戦えて誇りに

思うわ。」

その諦めない精神と姿に対戦相手も

琴線を触れ称賛の言葉。

エリーゼの反応しない。五感のすべてを

持ってクイズに使うために変換している

のだと、強い印象を与えるのだ。それが

違うと分かっていても・・・。

『第8問。この偉人の名前は?』

画面にかの有名な江戸無血開城に導かせた

一人の写真と【篤姫】と。

「っー・・・・・よし。」

『おぉーと、この問題の正解者は

エリーゼ選手!そう答えは【あつひめ】!』

「ぐっ、・・・なんて速さ!?」

相手は悔しそうにする。どう足掻いても

覆せない勝利を約束された正解数せいかいすう。渇望する勝利を貪欲となった

者達に一つの取るに足らないミスでも

遺憾いかんなのである。

『勝者、今治いまばり選手!』

だが、この一点以外は、全て相手が

正解する。絶対的な実力、差で・・・。

「やったーーー!!」

相手の今治は、両手を上げ歓喜の叫び。

「・・・ぐっ、うぅ。」

一方のエリーゼは、集中の糸が解かれ

倒れるような勢いでうつむく。

どんな表情が伺えないが嗚咽しているのは

容易に想像はできる。

席を立ち簡単な対戦相手に礼を済ませると

相手が手を伸ばす。

「さすが、バトルピクシー。

同じランクSとは、思えない気迫でした。

まるで、上位と戦っているようでした。」

相手の今治は純粋に讃えるエリーゼを。

エリーゼも腕で涙を強引に拭い反対の手で

相手の今治に拍手する。

「ありがとう。強かった・・・でも

次があったらわたしが勝つ!」

そう好戦的に笑い宣言するのだった。

しっかりした足取りで席に座るエリーゼは、

久坂に視線を向ける。

「ごめん、あっちゃん負けてしまった。」

「ううん、仕方ないよ苦手な漢字だった

んだし。」

久坂は、親友に優しく励ます。

「そうだよ、エリーゼは頑張った。」

安藤も想い人に励ます。

エリーゼは二人に励まされ

笑顔で答えようとする。

「うん。・・・ありがと――」

「エリーゼ、つまらないするなよ!」

エリーゼの言葉を俺は容赦なく遮る。

突然のエリーゼの感謝を伝えようとするのを

邪推にしたのだ。もちろん奴が怒るだろう。

「そんな言いかたないだろ!」

安藤が激昂する。まったく、本質が見えて

いるのになぜそんな事を選択したか

安藤に苛立つ。

「その言葉、そのまま返すぜ!」

「・・・はぁ、なにを!」

「エリーゼに取り繕わせるのが、励ましなのか?久坂と安藤。」

「えっ!?」

久坂は自分の発言にもたらすことを

想像したのか驚愕する。

「なっ・・・そうだな。由利の

言うとおりだ。俺は・・・」

「やめろ安藤。相手を想うのは

美しいことだ。ただ、月並みでどこか

装飾した言葉はすてろ。

エリーゼに伝えるべきは、配慮のある

まっすぐな言葉だけだ。」

「・・・そう、だな。わかったぜ由利!」

そう強い決意で言う安藤。

そもそも安藤は、これじゃあ駄目だと

分かっていても、飾りつけた表情と言葉。

それを、嫌悪感が奴はあった。俺はただ

それを背中を押しただけ。

「エリーゼ俺は・・・悔しかった。

だから、次こそ勝てるように

俺も協力するぜ!」

「・・・安藤。」

涙目のエリーゼが閉じたり開いたりする

瞳そして、半眼になる。

「盛り上ってわるいけど、それ普通に

わたしがいない時にやるべきじゃ?

感動がなんだかしない。」

エリーゼが安藤に辛辣な言葉。そして、

俺にも視線を向ける・・・え?

俺にも言っているのか!?いや、言ったのは

俺なわけで・・・もういいや。

「ふふ、でも・・・ありがとう。」

エリーゼがうつむきながら、そう呟く。

「え?どういたしまして。」

安徳は嬉しそうに頭を掻きながら言う。

『それでは、とうとう3人目の戦い―』

どうやら、次の戦いが始まるようだ。

「エリーゼのかたきは取る!」

メラメラと目を燃やしながら立ち上がる

部長の久坂。そして戦いになると、

苛烈だった。

『なんと、8問目も正解!

ネギの収穫量一の都道府県は北海道。』

「・・・相手が涙目じゃないか。」

俺は久坂の苛烈な解答スピードに

嘆息する。こういう収穫量のクイズでは

後々からヒントが出てくるが

もちろん知っていると圧倒的に有利になる。

ジャンルが地理は、久坂は強かった。

そして、残りの問題も正解して完勝。

そう完全なる勝利を全問正解の形で。

安藤よりも早く解答して。

戻ってくる久坂を俺は何やっているの?

そう眼差しだけで訴えると久坂は困惑する。

「そ、そう睨まなくても。」

「俺も手加減はしない主義だが・・・

何て言うか私怨みたいなの感じたんだが?」

「き、気のせいだよ。きっと・・・」

目を逸らしあからさま過ぎる言い訳。

「ハァー、もういい。次は俺か。」

俺は立ち上がり場所を向かう。

「由利くんはわたしよりも

容赦がないんだから、正解したら

相手に会釈して忖度してねぇ!」

「なにそのアドバイス!?」

久坂が謎の声援?をすると他の二人が

黙っていなかった。

「対戦相手に暴言やどや顔は控えてよ。」

「暴言はともかく、どや顔は

お前たちだろうがあぁぁぁ!!」

エリーゼにツッコム。はいはい、安藤の

ボケを捌くよ。

「由利ならもう勝ったなぁ。」

「まさかのお前が普通なのかぁぁ!!?」

「えぇー、普通でそんな恐い顔で

叫ばなくても!?」

『すみません。あまりにも奇行を

されてしまいますと観客達が・・・』

拡声器のまま、注意されてしまった。

・・・恥ずかしい。

俺が中央に歩を進めると観客達がざわめく。

「あれ、だれだろ?」

「久坂ちゃんやエリーゼちゃんも

いるチームなんだから、有名じゃないか?」

「いや、見たことない・・・おまえ

知っているか?」

「残念ながら僕も聞いたことありません。」

クイズのために用意した机に座り相手の

黒髪の男は自信が溢れた色で呟く。

「よし、弱そうだ。」

「なら、お前は強いのか?」

「ああ、強いぜ。なんだって去年では

準決勝まで行けたんだぜ個人戦で。」

なるほど、ようやく見つけた強者を!

「そうか・・・

さあ、魂を揺さぶる戦いをしようぜ!」

戦いの火蓋を切る。

ジャンルは世界史で俺は次々と

正解していく。

(・・・弱いなぁ。)

『おぉーと、またも正解。龍造寺隆信りゅうぞうじたかのぶが討ち死にしたのは

沖田畷おきたなわての戦い!』

「あいつ、すげぞー!」

「久坂ちゃんやエリーゼちゃん同じぐらい

強い!?」

観客は、熱狂するが俺は難なく熱くならず

全て正解して1回戦の戦いは、勝利した。

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