第20話会場は目黒区である

久坂らの騒がしいさで精神的に疲弊しているのに、目黒駅の乗降場プラットホームはさらに人が多い。非常に。

「・・・さすがは、東京。

俺がいつもいる福井県なんかよりも

人がうごめいていぜ・・・

特に休日になると・・・おののくほどだ。」

俺のそう弱音を吐いていると久坂は

これぐらいの人の量には慣れているのか

怪訝そうにして言うのだ。

「うーん、確かに人が多いけど・・・

普通じゃないかな?」

「なっ!?こ、これが普通だと、お前

なにを言っているのか分かっているのか。

まるで、ゴキブ――」

「アアァァー、アァーーー!!」

エリーゼは叫ぶ人目も気にせずに。

「ほら見ろ久坂!これが普通の

反応なんだ!人を狂わせるにはこの場所は

あまりにも・・・地獄すぎる。

平常心を奪い苦しませる。」

「その前にわたしが貴方の言葉を遮った

意図を分からないようね・・・」

「意図?・・・ああ、ゴキ―――」

「わあぁーーーー!!?」

「わぁー!?」

つい仰け反るほどに甲高い悲鳴。

そして、周りの人もこちらに視線を向けられ

る・・・そして、ヤバイ集団だと判断されたのだろう離れていき結果俺達の半径

何メートルか消えていた。

喜ぶべきか泣くべきか、そして恥ずかしい。

その状況を作ったエリーゼは俺に指をさす。

「だ・か・ら、貴方その単語を普通に

言うの?Gジィーとか別の呼び方が

普通でしょ。」

「・・・んっ?そうなのか。」

安藤や久坂に視線を向けるとうんうんと

頷く。・・・そ、そうなのか。

そんなやり取りをしていると

爽やかなイケメン安藤はスマイルで言う。

こいつは爽やかに笑わうのがデフォルト。

「由利は本当にまっすぐだけど、

非常識な所とか常識な所があるのが

なんだかスゴい矛盾だな。」

「はぁー?安藤なにを言っているのか

分からない説明だぞそれ。」

だが、安藤の言葉に納得する者が二人。

「あっはは、あまりにも適切だよね。

由利くんいつも言動が対極って言うのか

言っていることと行動が一致していなかったり、していたりするからねぇ!」

久坂は腹を抑えて哄笑する。嘲笑とかではなく、親しさを感じる大笑いで。

「プッ、ぐぐ・・・。」

なんとか笑いを堪えようとするエリーゼ。

「・・・お前ら、後でクイズでボロ負け

してアイデンティティを壊すことを

決めたこらなぁ俺は・・・っ!?」

プラットホームの真ん中でそんな

ケンカ?をしていると聞き覚えのある声が

耳に届いた・・・すぐ離れよう。

「は、早く改札に向かおう!今すぐに!」

「そうだな。部長そろそろ行きましょう。」

「そうだね。いつまで駄弁るわけにも

いかないからね。」

「まったく、どこの誰かが非常識を

発揮しなかったらこんなことには・・・」

やれやれとエリーゼはそんなしぐさをする。

い、いまは甘んじよう。それより

気づく前に早く移動しないければ遅れる。

だが、相手が気づいていて向かっているのに

逃れることなんてできなかった。

「応援しに来たわよクイズ部!」

(面倒な人が来てしまったよ。)

俺がそう嘆き俺達は振り返ると

黒きポニーテールをした同い年の

本田牡丹達が来ましたよ。

俺以外の三人は驚くちなみに俺は

プラットホームで無駄な話をしている途中で

気づいたが・・・。

久坂が本田さんに笑顔で対応する。

「由利くんのクラスメイトさんですよね。」

「え、ええ・・・そう・・・です。」

「うん。由利くんも喜んでいるよ。

代わりに彼にお礼するね、ありがとう!」

そして、両手で本田の右手を自然に握り

屈託のない笑顔で歓迎する。

「は、はい!」

恥ずかしそうにでも嬉しさの方が上のようで

嬉しそうにする。

「ねぇ・・・あの人もしかして・・・」

俺の傍まで来たエリーゼは小声でそう言う。

懸念の理由は分かっている。

意中の久坂にライバルが現れた・・・

そう不安でいた。俺は本田のなにゆえこんな反応したか分かっている。

「心配無用だ。あいつは・・・本田は

久坂に純粋にこの選ばれたクイズに

羨望の眼差しを向けているだけだ。

・・・と、思う。」

「思うって・・・言われてみたら

恋をしているような顔には見えないし

わたしの懸念だったかな?」

エリーゼ安堵。そして、久坂が此方に

チラチラと不安そうに振り返っている?

「ああ、久坂が少し困っているから

行ってくる俺の客だしなぁ。」

「まぁ、せいぜい迷惑かけないよう

しなさいよ・・・それと助かったわ。」

これぐらい感謝されることではないと

思うのだがすぐに助け船を出さないと

いけないので頷いて答えると、

久坂の隣に立つと、本田はあからさまに

元気にパァーとそんな喜びを形に

したような反応する。

「感謝しなさい!貴方の勇姿を見るために

来たわよ。どう?嬉しいでしょ、

涙して感謝するといいわよ♪」

「・・・テンションが高いなあ 。

俺はランクEなんだからそんな過度な期待されても少し困るのだが。」

「なら、期待しないで貴方のはついでに

見に来ただけだから、

勘違いしないでよね。」

これが、アニメやラノベなら頬を赤らめるか

上目遣いとかするだろうけど、

残念ながら現実は起きないし、こいつは

俺の事を好きじゃないだろうし、

テキトーにあしらう。

「はい、はい。分かっていたよ

そんなことは、俺が消えたらチャンスが

あるからなぁ。」

「な、なにそれは・・・ワタシがせっかく

来たって言うのにそんな勘違いは

しないでほしい!」

一瞬だけ、悲しそうにしてすぐに取り繕い

強気な態度を取る。

どう答えるのが正解か悩んでいると

今まで話に参加しなかった長い黒髪の

ツインテールを靡かせ上目遣いで

答える轟花菜。

「あ、あの・・・本田さんがわたしに

誘って応援に来たんです。

それに、一番早く集合場所に来て・・・

本当は由利さんに一番に応援したいと

思うんです!」

「か、花菜!?ち、ちがうから勘違いしないでよね。たまたま早く起きて暇だったから

早く来ただけに過ぎないから!」

しどろもどろになる本田。そうだとしたら

装飾などした飾り付けた言葉ではなく

たまには本音で感謝をするか。

「その・・・なんだ・・・・・

嬉しく思う。いや、違うなぁ。

ありがとう来てくれて。」

そして、手を差し出し拍手を求める俺。

我ながらキャラが違いにも甚だし過ぎて

恥ずかしくなり視線を逸らす。

「え・・・えーと・・・・・うん。」

差し出した手を恐る恐る手を握る本田。

見ると本田は顔を沸騰するほど赤くなって

いて視線が合うと彼女は視線を逸らす。

まあ、恥ずかし過ぎるよなこれは。

そして久坂は、言う勘違いして。

「こう見ると初々しいカップル見たい

だよね!二人とも。」

なんでそうなって・・・轟香菜は頷きながら

なんだか、呆然となって言う。

「うん・・・・・あの、わたしも・・・・・

由利くんのために応援に来ました。」

全力頭を下げながら左手を前に向ける。

こ、これ・・・告白みたいに錯覚した。

いやいや、自意識過剰だなぁそれは。

勢いで言ったら恥ずかしくなって壮大的な

行動したに過ぎないだろう。

本田の拍手はこれで十分だろう離す。

「あっ・・・・・。」

(そう残念にされると、困るけど

すまない本田!)

良心の呵責に苛まれ次に轟香菜の手を掴み

少し強めで熱い気持ちで答える。

「ありがとう嬉しく思う!」

「わぁーー、はい!!」

自信がない儚い顔など一切ない

満面な笑顔で答える轟香菜。

「由利くんがここまでモテると部長として

誇らしいよわたし!」

「久坂これをモテるなんて盲目だな。

これは、純粋な応援の言葉だろ!

二人に対して失礼だろ。」

すると、本田と轟香菜は肩がビクッと

幻聴しそうな動きをした。

「由利くんときどきシンプルに失礼な

誤解するよね。」

久坂はそう言うのだった。それよりも

本田や轟香菜のあの肩が急に上がったのは

どういう反応かさすがに推測ができない。

そして、応援に来たクラスメイトの最後の

一人が爽やかに言う。

「普通に羨ましいよ由利君。

僕もいや、俺も応援しているよ。」

氏家陽が僕を俺に変えたのは恐らく

久坂がいるから、少し勇ましさを

アピールなどする。本人に訊いていないから

憶測に過ぎないが。

「由利くん皆、由利くんのために

来たんだね・・・やったねぇ!

ボッチだった時代を終止符だよ。」

「いや、俺はそれが望んでいたんだが!?」

そんなツッコミしても、なぜか久坂は

どこ吹く風である。

「わたしたちの応援の人達よりも

由利くんの応援三人が早いんなんて

スゴいよ!」

「うれしくねぇー、いやもちろん

お前達が来てくれたのは望外で嬉しい。

あっ、氏家拍手だ!」

いつまでも轟香菜の手を握るわけには

いかない。長い拍手を解くと

轟香菜は、拍手した手をじぃーと見ている。

「唐突だね由利君は、どこまでいくか

楽しませてもらうぜ!」

「フッ、せいぜい楽しむがいい!」

そして、手を離し俺達クイズ部と応援に

来たランクS三人と目的地に向かうため

各に行くための通路のコンコースで

中高生の集団が・・・。

「才媛の久坂さんが舞い降りて来たーー!」

「落ちいた服装が素敵・・・学生服も

いいけどこっちもありよね!」

「イヤ、あんた現役高校生だし

同じ女子で心を奪われるのは分かるけど。」

およそ十数人の応援に来た久坂ファンらに

俺と応援に来たランクS三人は驚く。

一方、クイズ部三人のランクSは

普通に手を振って答える・・・えっ!

もしかしてこれ・・・普通なのか?

歩いているとファンらは

俺以外のクイズ部に

殺到するのだ。その勢いと熱狂はまるで

アイドルのようだった。

「・・・スゴいですね。」

轟香菜がそう呟く。そして、一人だけ

なぜか俺の方に向かう人がいる。

「お前も、応援に来たのかよ。」

大柄のどこかのスポーツ部だろうか俺に

苦々しく睨んでそう言うのだった。

「かなり睨んでいるけど、勝手に

入ってきて偉そうにした人よね。」

本田牡丹は静かに敵視しながらそう言う。

「その態度は流石は、よくないよ君。」

あの、爽やかな氏家も俺を守るように前に

出て警戒する。

「氏家さん、本田さん・・・由利さんの

ために庇っているのにわたしは・・・」

自分を追い込んでいるのか俯いて

苦渋そうにする轟香菜。

そして、乱暴そうな男は言う。

「チッ!ランク最下位がランクS様に

庇ってもらうなんて情けねぇなぁ。

なぁ、そうだろ!」

いや、一人だけではなかった。

奴の後ろには

侮蔑の眼差しを向ける普通の容姿の

仲間が嗤う。

「まったくだぜランクSに迷惑を

掛けて恥ずかしくないのかよ。」

「これだから、最下位ランクは

卑しい生き方しかできないんじゃないか?

あっはははは!!」

これ、俺をバカにするためにわざわざ

来たのかそうだとしたら、

無視していくとのが得策だろう。

だけど、俺のために来た三人は違った。

「・・・いい加減にしなさいよ。

卑しいのは・・・・・」

「・・・ここまで友を侮辱すると

黙っていられないなぁ。」

「・・・わたしの尊敬する由利さんは

そんな人じゃないのに。」

三人は今でも爆発してもおかしくない

状況だった。だが、火種を増やし自ら

追い込み敵を作ろうとする愚者は

気づかないでいた。

さて、どうする・・・無かったことにする

には難しい・・・うーん、強引で

好きではないがやるしかない。

「それなら、俺一人でお前達全員でクイズ

戦わないか?」

俺の提案に反応は色々だった。

「はっ!いいぜ身の程をしれよザコ!」

「負けたらどけ座だからなぁ!」

「・・・お前たちやめろ。」

「そうだ!痛い目にあうぞ。」

「もしかして怖じ気づいたんですか

秋田さん?」

「ああ!?」

内輪揉めを始まると、周りも気づき

久坂が駆けてきた。アイツ、こんな危険な

場所で来て怪我するだろ。

「えっ、由利さん?」

隣にいた轟香菜が驚いているだろうなぁ。

とりあえずこの怒りを抑えなければ。

そして、俺は走って大柄の方に向かう。

「とりあえずケンカやめろ!」

「そもそもお前がこんな事をだな。」

右の拳を俺の顔に放とうとする。

だが、その動作よりも早くスピードを上げ

拳を放とうと俺はする。

「っー!?」

相手は反射的にガードをしようとする。

そして、俺は左の拳に力を込め放つ・・・

っと見せ掛け本当の狙いは相手の足を払う。

「なっ―――!?」

大柄の男は倒れる。

「暴力かよ!いいぜ卑しい奴。」

仲間達は、怒りの感情のまま

俺に拳を振るおうとする。

そう拳を振るおうと力を入れる動作を

増えて隙ができ後ろに下がり空振りすると

続けて足を払い転倒させる。

三人目からは、警戒しているので

俺はここで声を発する。

「落ち着け!こんな所で暴力を出すと

俺もお前たちもただでは済まなくなる。」

「そんなの・・・!?」

仲間さんは周りの注目の的になって

いることに気づき戸惑う。

立ち上がった大柄さんは、俺に激しく睨む。

「こらー、秋田くん乱暴は駄目だよ!」

「く、久坂さん!?・・・・・はい。」

秋田くんと呼ばれた人は渋々、従う。

そして、心配させてしまった久坂は

俺の前にくる。

「ごめんね。また、乱暴なことを

させてしまって・・・。」

「いや、構わない・・・それより、

なんだか配下のような言い方に

聞こえたのだが?」

「あはは、配下じゃないよ。

何て言うか知り合いかな?わたしの

応援によく来るんだ。」

「なるほど・・・わからんけど、

秋田くんとその取り巻き達あまり

ご主人様に迷惑を掛けるなよ!」

俺がその乱暴な集団にそう言うと

分かりやすく嫌な顔をする。

とくに秋田くんは。

「だれが・・・」

「だから、由利くん主従関係

じゃないんだから!」

ツッコミをする久坂に他の人達はざわめく。

「あれ、仲良くないか?」

「もしかして、カップル?」

「ちがうだろ。」

なんか変な噂が始まったのだけど

気にする必要はないか。

それにしてもどこか見たことがある。

「秋田くん気になったんだが

どこか合ったような気がするんだけど

俺の事を知っているなら教えて

くれないか?」

「はぁー?ぶざけているのか!」

さらに怒らせてしまったもよう?

「いや、ふざけるならもっと面白いことを

言うから・・・それより

教えてくれないか?」

「・・・マジかよ!おら、あれだ。

俺達複数で勝ったことがあるだろうがぁ。」

苦々しく語ってくれた秋田くん。わるいけど

覚えていない。でも思い出さなければ!

うぅーん、思い出せ!

「複数で・・・勝ったこと?

ああ、あの取り巻き連中か。

一応忠告するけど、暴力は犯罪だ!

しっかり、覚えていないと

大変な目に遭うから気を付けろよ!」

サムズアップして秋田くんゆかいで暴力な

仲間達に忠告をする。

「ふ、ふざけるなぁ!

それぐらい知っているんだよ。」

「まぁまぁ、落ち着こう。

お互い戦った仲じゃないか秋田くん。」

「・・・くそっ、覚えていろよ。」

そう言って去ろうとすると、自然に仲間も

ついていく。

「由利くんなんだか迷惑を

かけてしまって本当に――」

「いや、それはいいから。

それよりも応援に来た奴等に苦しそうに

されるのが嫌だったに過ぎないし

お前が命令じゃあるまいし、

だから謝るのは違うだろ。」

「・・・・・うん、そうだね。」

拙い笑顔で答える久坂。この答えでよかっただろうか・・・そう悩んでいると

うるさい声が耳に入る。

「貴方!勝手に動かないでよ。

ワタシの命令に従うのが貴方の

役目でしょ!」

本田牡丹は指を向けながら言う。

「いや、いつからそうなったんだ。

もしかしてお前・・・

従者のように思っていたのか!?」

「さ、さあー・・・少しあるかもねぇ。」

「相変わらずの平常運転スゴいぜ!」

「それは・・・ありがとう。」

「いや、褒めていないよ!?」

そんなバカ騒ぎをして目的地に本当に

向かうのだった。

やっぱり人と話すのは色々と疲れる。

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