第17話第一次帰路談話

ドタバタしたいつものクイズ部の活動は

終わり由利騎魅正は、

黄昏る空の下に一人だけ歩くはずだったが。

「なんだか、俺達だけなんて

珍しいよなぁ!」

このスーパー実力者のランクS

安藤左内あんどうさないがいなければ

一人だったのだ。

「そうだな。

いつも久坂かエリーゼがいたから

一対一で話すのは無かった。

・・・だが、偶に出くわしたなんて

別の目的があるんだろ!」

安藤は、瞳孔を開きすぐに

元の表情になる。

「はは、まさか勘違い暴走の由利が

そう言われるとは。」

「なんだよ、その勘違い暴走は?」

「僕達、部員の三人で決めた二つ名だよ。」

親指を上げて言う。

「・・・お前達・・・そんなことを

話していたのか。」

なんだか頭痛がしてきた。

最近なんだか俺をリアクションさせたいのか

訊きたいぐらい

色んな奴が言うことが多い。

「ごめん、ごめん。

・・・由利の言葉通り偶然は口実で

相談して、訊いてほしいんだ。」

真剣な眼差しになり

安藤が次の言葉を言うまで待ちながら

歩く。

隣の安藤は、なかなか言えずにいたが

覚悟を宿したまなこになる。

そして、口を開く。

「俺は・・・エリーゼが・・・・・

好きなんだ。」

決心した安藤の言葉に驚いた。

「・・・・・冗談・・・ではないなぁ。

どうして俺に言ったんだ?」

そう付き合いが長くもなければ

深くもない俺にそれを相談にするにしても

リア充の奴が友達が多く相談も多いのだから

俺なのが分からない。

混乱しているようにはみえない。

だから、分からない。

好きな相手を伝えた安藤は、

いつもの笑顔に照れている。

「そうだな、由利は相手の大事な秘密を

言わないのと、

これからライバル宣言かな?」

「はぁ?ライバル宣言。

どう言う意味なんだ。」

ライバル宣言がクイズとしてなら

快く返事するけど

お互いライバルで仲間なのは認めている

はずだ。・・・勝手にそう思っているだけだが、意図が分からない。

「隠さなくたっていいよ由利。

同じ人に好きになったんだから。」

・・・理解した。

理解したが確認したい。

どう勘違いしたらそう認識したのか

俺のただの勘違いか。

「エリーゼの事か?」

「ああ!

いつも古典的な恋愛を見せつけられたら

誰だって気づくよ。

はっきり言って厳しいだろうなぁ。

諦めようと思ったよ・・・でも、

諦めなかった。

だから由利に言ったんだ。

お互い怨みがないようにしたいから。」

悲痛そうにして語る安藤は、

その真摯な想いのが伝わった。

まさか、宣戦布告するためと

俺と睨むような関係を恐れたのを知った。

だが、それは杞憂だ。

「安藤、1つ言うぞ。」

「・・・ああ。」

「俺はエリーゼが好きじゃないから、

安心しろ。」

「え?」

今度は安藤が驚く番となった。

俺はそんな顔になる安藤につい

笑いそうになるが堪える。

「つまりお前の勘違いだ。

くっくく。」

「そ、そうなんだ。

・・・なんだか安心したよ。」

安堵する安藤に俺は奈落に落とすような

発言する。

「だが、エリーゼは恐らく好き

相手がいる。

一応言うとお前じゃないぞ。」

「なっ!?」

驚愕する安藤。

今日はこいつの色んな顔を見れたなと

関係ないことを考え

悪いこした罪悪感が後からなって

襲う。

しかし、相談の義務で俺は言わないと

いけないのだ。

「だ、誰なんだその好きな人は!?」

自分ではないと分かると焦る安藤に

全て言いたいがそれは出来ない。

エリーゼが恐らく好きなのは

久坂だ。

そして、俺が勝手に二人の許可なく言う

資格ないので黙秘するしかない。

「・・・ごめん、言えないんだな。」

「・・・ああ。」

言ってしまたら久坂を部長と慕う奴に

関係が変わらないなど

俺の希望的観測だ。

悪い方に流れば責任など取りたくても

元の関係や傷を無かったことは

出来ない状況にしたくない。

だから、返事がどうしても

できずにいた。

「お兄さん!」

幸運か、悩んでいるとよく会う幼い少女の

声が耳にした。

黒髪ツインテールの小学四年生の

佐久間香菜祢が手を振ってやって来る。

「佐久間さん、どうしたんだ

こんな時間に。」

俺が頭を撫でると嬉しそうに

笑顔が溢れんばかりになる。

「近くまでコンビニに買い物を

していました。

お兄さんクイズです!

織田信長が本能寺の変でうたれますが

何年でしょうか?」

嬉々としてクイズを出す佐久間さんに

俺はそうだな。と言って悩むように

間を置いて答える。

「1582年だな。」

「わーあ、すごいお兄さん!!」

パチパチと手を叩き正解を祝われる。

なんだかここまですると癒される。

「由利は、妹さんがいたのか。

でも、佐久間さんって・・・

名字も違う、ような。」

あごに手を触れなにか考え始める安藤に

端的に説明しようと振り返る。

「その通りだ。

兄妹じゃない・・・そうだな、

一言では説明はできないとだけ

言おう。」

「はい!

とおぉっても、一言では

いえないんです!!」

俺に続き佐久間さんは、力強く言う。

相手がイケメンだからなのか

嬉々としている。

リア充イケメン略して

リアメンの安藤は、呆然となり

それから恐ろしいものを見たような

驚愕の顔つきで俺に向ける・・・ん?

「ま、まさか、

由利・・・・・ロリコンだったのか!?」

「ちがう!」

どうしたら、そう辿り着くんだ。

少し前の久坂やエリーゼも似たような

ことがあったけど

これだけでそう勘違いされるのは

甚だしく遺憾である。

「お兄さん

ロリコンって、なんですか?」

ほら、お前が変なことを言うから

この子が変な言葉を言ってしまった

じゃないか!

さすがに教えるわけにはいかず

頭を撫で答える。

安藤に余計なことはやめろと目で訴える。

「あれ?

俺が悪いのか!わるいのかぁ!?」

いや、そこまで取り乱さなくても・・・

ロリコンじゃないと伝えるのが

先だったかな。

そうだとしたら、俺が説明責任あるなぁ。

「この子は・・・後で話すよ。」

辛い過去をこの子の前では言えず

児童養護施設まで送り

手を激しく振ってバイバイと

笑顔を向ける佐久間さん。

俺達は、胸の前を手を軽く上げて

踵を返す。

少し振り返るとまだ、入り口の前で

手を振っている。

気のせいか安藤ではなくずっと

俺に笑顔と手を振っているように見えるのは

・・・いや、よく知らないイケメンに

愛想を振る舞うのはおかしいか。

手を左右、動かし答えると

驚き前よりもプンプンと激しく左右を

動かす。

(ここまで、元気になってくれて

よかった。)

あの絶望に暮れる顔は見ていて

悲痛になる。

そして、近くの公園に着き

ベンチに座りさあ、例の話をしろと

目で伝わり俺は、語る。

中学の俺が河川敷で川岸に立つ

あの子を助けたことを説明を終えると

安藤は固唾を呑んでいた。

そして、おもむろに口を開く。

「・・・そうだったのか凄絶だな。

後、お前・・・。」

怒りを宿る眼差しを向ける。

「スゴいよ。

俺だと助けようと実行できても

救えなかっただろうなぁ。

でもなぁ、一歩、間違えばお前が溺死

していたんだぞ!」

憤怒なんて滅多にしない安藤は、

睨み怒りをぶつけてくる。

俺はつい瞳孔なんて開いて聞いていた。

「だけど、どちらも救えたから

よかったじゃないか。」

「そうだけど、違うんだ。

俺が伝えたいのは・・・

自分の命を軽んじている所だよ!!」

「・・・軽んじている?」

「そうだよ!

お前・・・まるで、自分の命を軽視し過ぎ

なんだよ。

簡単に言っていて、気分が

悪かったんだよ!?

悲しむ奴だっていることを知れよ!」

奴がここまで感情を任せるのは

初めてみた。

最も意外だったのは、怒りの原因が

俺の命を天秤を掛けずに動いた

ことだ。

でも、それがなければ救えなかったと

俺は思っている。

それに悲しむ人なんて・・・当時の俺には

いなかった。

「・・・わりぃ、言い過ぎた。」

思いの丈をぶつけ、冷静になった

安藤は、謝る。

「いや、そんなことはないよ。」

俺のために怒ったのが恐らく初めてだ。

見た目以上に熱い奴なのかもしれないなぁ。

「お前の選択は間違っていない。

でも、危険なことをするなら

自分の事を次から考えてほしいんだ。

命を失うのは、周りも悲しむんだから。」

顔を歪み悲壮感を表す姿に

過去に誰かを失いその悲しみを知る

ようでなにを声を掛ければいいか

分からずにいた。

どれくらい経つか夕暮れの空を見ていると

安藤は、いつもの声音とスマイルで言う。

「なんだか、しんみりしたなぁ。

よしそろそろお互い帰るとしようか?」

「・・・そうだな。」

帰り道が別々になるまで一緒に歩くのだが

会話はなかった。



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