第9話氏家陽の出現した件!

「えーと・・・氏家くん。

ごめんね。」

久坂が頭を下げ謝る。

氏家を見ると困惑していた。

なぜ謝るのか分からない。

もちろん俺も。

そして氏家は、訊いていいか逡巡しゅんじゅんしていたが訊くことに

決意した。

「あの、どうして突然

謝るのですか。

久坂さんは、何もしていないのでは?」

そうお互い笑って話していたのに

突然の謝罪の言葉。

困惑する俺達に久坂は、

シュンと著しい落ち込みをして

返事をする。

「その・・・わたしあなたに

陥れるような勝ち方をしたでしょ。」

「・・・そうだね。」

優しい声音で言う氏家。

まだ、よく分からず怪訝そうに

微笑んでいた。

・・・なんだかリア充だな性格的にも。

そんなことより懺悔ざんげを続ける

久坂。

「わたし夢中で戦って・・・

あなたのこの後の立場を考えないで

全力で挑んで・・・そして

走っていく姿にわたしまた

無意識で傷つけてしまったんだ・・・

本当にごめんね。」

後半から喋るうちに涙目になっていく。

(それにしても久坂の奴、

そんな表情をしていなかったが

・・・いや、そんな行動をしていた

気がするな。

そうなると俺が思っている以上に奴は

優しい。

・・・不安になるぐらいに

優し過ぎるがな。)

それは、美徳で美しいが

その性根しょうねは、

自尊心にいいだろうけど

今みたいに謝って罵詈雑言だって

遭うのは想像難くない。

そんな生き方に疲れるのに

やめられないのだ

この優しさは。

俺もそうだったから分かる。

氏家が怒りをぶつけてるかもしれない、

その時どうすればいいか・・・。

「えっ、

それ、久坂さん悪くないよね。」

「・・・え?」

拍子抜けするイケメンに

久坂は驚きの表情で見る。

氏家は、美少女に涙目による上目遣いに

頬を赤くして視線を逸らす。

あっ、そうだった!

告白したのだからそんな風に見られて

恥ずかしくなったのだろう。

ただの臆測だけど。

「え、えーと・・・僕が勝手に

告白して勝負を挑んだわけですから

全責任は、僕がある故に

久坂さんはまったーーく

これぽっちも悪いなんてそんなこと

ありませんよ!」

男らしく優しく言う奴は、

なんだか眩しいな。

氏家陽。

本当に優しい奴とは思わなかったなぁ。

「そ、そんなことないよ。

わたしがわるかったんだよ。

そんな事を・・・」

「違うよ。

久坂さんは大袈裟すぎるんだよ!

そんな事を責任を負うような

事をしなくてもいいんだよ。

相手の非を自分の罪に苛まれるのは

間違っているんだ。

だから久坂さんは・・・悪くない。

そしてそんな無駄な優しさなんて

捨てていいんだ―」

「違う。それは違うだろ。」

俺は氏家の言葉を遮る。

「「え?」」

もちろんだが二人は驚き

こちらを見る。

優しさを捨てていいんだよ・・・だと

そんな台詞はいいだろうね。

救われるような台詞だが

そう簡単に捨てることなんてできない。

宿るこの感情は本人の意思で

捨てることなんてできるはずがない!

そんなことできれば

とうに人間は感情をいつでも

殺せる生物になる。

そんな者は一人もいないのだ。

だから否定して本当に久坂の奴に

この言葉を俺は伝える!

「捨てるなんてできるはずが

ないだろう。」

氏家は、唖然となっていたが

微笑まずに真剣な眼差しで言うのは。

「だけど、そんな生き方を君は

やらせるつもりなのか!

苦しませろと!」

奴は奴なりに好意を抱くが失恋した

相手にここまで考えているのかと

感心するが今回はその台詞が

間違っている。

そして久坂は、熱くなる俺達に

不安そうに俺と氏家に視線を繰り返し

見ている。

どう止めるのか分からずにへどもど。

わるいな、いまそれを伝える。

俺は久坂を見る。

「久坂!

お前のその優しさスゴいと思っている!」

「・・・・・えっ、

そ、そのどういう?」

困惑するよな。

そして、思ったことを伝える。

岡目八目おかめはちもくなんて

四字熟語があるように

第三者の俺からするとお前はわるくない。

だけど感じるのは仕方ないことだ。

そして・・・その優しさは

いつかは誰かを救うことに繋がる。

だから、捨てるな!!」

力強く声を出す。とくに捨てるなには。

久坂は、涙を一滴、また一滴と流れ

そしてどんどん落ちていく。

「・・・うぅ・・・

うわあああぁぁぁぁぁぁ!!

今までそんなこと言われたことないよー!

わあぁぁぁぁ!!」

膝を床につけ泣き叫ぶ久坂。

どうやら救ったかもしれないな。

僅かなでも、後々に成長をさせるだろう。

このランクSの久坂ならなぁ!

「っ!

あっちゃんどうしたの!?」

部室の入り口にエリーゼ・アダムスが

現れる。

確か久坂篤をあっちゃんとあだ名で

呼んでいたな。

慟哭どうこくの久坂は

俺に指をさしてエリーゼに答える。

「ぐすっ・・・ゆ・くんが・・・

わだじにぃ・・・・・ばを・・・。」

嗚咽で言葉が所々が途絶えていた。

エリーゼは、分からなかったが

状況を・・・理解していない。

仇討ちするような視線を俺に向ける。

「・・・あっちゃんを悲しませた

あなたには許せない罪がある。

だからわたしはあなたを討たせて

もらうことにした。

これは絶対に果たす。」

す、すごい物騒なことを言っているのだが

助けを求めようと隣の氏家に

目配せする。

エリーゼにおののく奴は俺のシグナルを

無視をする。

き、貴様ぁ、見捨てるつもりなのか!

「仇敵、最後のセリフなんて与える

価値もない。」

動き出すエリーゼ。

その剣幕に俺は・・・。

「は、話をすればわか――

ギャアアアァァァァ!!」

無慈悲なるパンチやドロップキックの

数々。

「ぐすん。

・・・って・・・ちがぅの。」

久坂は、まだ嗚咽でうまく言葉を

発せず俺がボコボコにされるのを

止めようと手を伸ばすが

結果は、なにも起きず

理不尽な目に俺は遭うのだった。

怒りの矛を収まるのは久坂が

喋れるまで。





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