※王立大学図書館の資料(2)

今後考え得る問題点《『最後の王国・未来予想図』1995年刊より》

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 約2000年続いてきた王国に新たなる王が誕生した昨今、取り沙汰されているのはもっぱら王家の存続についてである。

 現国王グルーディエ15世は若干22歳で王の座に就いた。しかし未だ独身であり、その後継者問題を早くから論ずる専門家も多い。

 中世には当然とされてきた一夫多妻制も時代と共に衰退し、グルーディエ13世の時代には完全に消滅した。一夫一妻となれば、自然と後継者不足に陥る確率が高くなるため、王家から嫁いだり、あるいは婚姻や就職等で王宮を出た第二子以降の王族の復権を望む声も一定数ある。

 しかしながら、多子で知られたグルーディエ13世の子や孫世代の旧王族たちは軒並み高齢であり、職務を全うすることは不可能である。ひ孫の世代にまで来ると、もはや王族の地位とは無関係の職や生活をしている者も多く、そういった者にまで手を広げてしまうと、伝統として続いた王家の血を守るという目的が手段へと変わってしまうという、滑稽な状態を生み出してしまう。

 ただ、王家を存続させたいという気持ちは、王国民の中に根強くある。

 仮に、他国と同じようにグルーディエが王国ではなく共和国、合衆国の体制をとるとしたならば、それはもはやグルーディエではないという考えを唱える学者もおり、完全なる民主主義と象徴としての王家の存続について反対する議員連盟との間で論争が続いている。

 また、慣例として他国の貴族や王族を妃として迎え入れてきたが、これもまた、不可能になりつつあり、後継者問題は難航を極めている。

 1985年、アズールに残る王国は、ついにグルーディエのみとなってしまったからだ。



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