※王立図書館の資料(2)

ネスコーの魔女《『ネスコー地方の民話』1818年刊より》

 *-*-*



 二つの満月が輝く夜は、魔法の力が高まるのだと誰かが言った。

 魔物や魔女、悪魔たちが騒ぐからと、せっかく美しい月なのに、人間たちはみな、家々でなりを潜める。

 見つかりませんように、連れて行かれませんように。


 ネスコーの魔女は、美しい少年が好き。

 だから特に、男の子は外に出てはいけません。

 黒い髪、黒い瞳、黒い衣を纏った魔女は、美しい少年の使い魔を連れて、月の下を歩くのだ。

 魔女は人間を喰うという。

 見つかったら最後、もうお家には帰れない。


 怖い怖い。


 さぁ、よい子は早く眠りにつきましょう――……



 *-*-*

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