にんじんしりしり

 前話で書いた通り、本来なら小屋で冬を越す野菜たちの一部が、僕の部屋にやってきました。正直言って邪魔です(笑)。


 南瓜1個と人参とじゃが芋の少々を、週末に妻が実家のマンションに持って行きましたが、未だ僕の部屋には大きな発泡スチロールの容器が2つある訳ですが、僕の部屋に来たことで凍ってしまうことは避けられましたが、普段ドアを閉じて暖房も無い部屋とは言え、筋トレルーム化しているので、筋トレ日は部屋を暖めるため筋トレ開始前からドアが全開になり、それなりに室温も上昇します。だいたい16~7℃くらいだと思います。上半身裸で筋トレしに入ると、最初は『寒っ!』って思うくらいです(笑)。

 さらに廊下は20℃くらいはあるので、野菜の保存に関して言えば、凍らないけど決して保存には向かない環境に置かれていることは明白です。

 否が応でも筋トレのたびに野菜の入った容器を持ち上げることになり、その都度野菜の量を確認させれられる訳で、痛む前に使ってしまわなければという思いは強くはなります。


 僕が炊事担当になってから久しいですが、最近は僕が居なくなった後の老後を心配してるのか、まぁ僕も心配なので、ちょっとした調理は妻にやってもらってます。

 とはいえレパートリーは片手ほどですが、それでもポテトサラダと南瓜の煮つけは出来るようになりました。

 で、問題は人参なんですよ・・・・。


 もともと妻は人参があまり好きじゃないみたいで、カレーのゴロゴロ野菜の人参だけは小さくしてくれ、なんならカレーは人参入れなくても良い!くらいだったので、我が家の定番カレーの野菜をFPで細かく刻むことになった原因は、実はここにあったりするわけです。

 じゃあ、うま煮や八宝菜など人参入れなくても良いのかというと、彩り的に入れてくれと言うんで、食べれることは食べれますが、あくまでもビジュアル的な問題が先行してるという訳ですね。

 かといって、大量にある人参をどう食べたものかと悩んでたら、沖縄かどこかでの料理で、というほぼ人参の料理があったのを思い出し、地元の人は美味しい美味しいと食べていたので、どんな味なんだろうと興味が先行して、僕だけがサラダ的に食べれれば良いや!と思い作ってみることにしました。

 ネットでレシピを確認、もう最近ではクックパ〇ドではない、他のサイトで一番最初に出てきたレシピをベースにすることにしてるので、必要なものはゴマ油、人参、白だし(無いのでめんつゆ)、卵、炒りゴマと、すべて自宅にあるもので出来ることが判明、さっそく作ってみました。

 あ、クックパ〇ドのレシピを参考にしないのは、信用して無いと言うことではなく、むしろ色んな人のレシピが出てきて、見だすと止まらなくなるからです(笑)。


 まぁどの料理も、調理段階より事前準備が面倒なことが多いもので、参考にしたレシピには「人参細切り、細ければ細い方が良い」とあったので、これは妻の嫁入り道具のひとつ【超使いにくいスライサーセット】の出番です。

 いや、妻のことをディスってるわけじゃ無いですよ(本当!本当!本当!)、使いにくいのは妻も認めていて、結婚後に別のスライサーセットを買って、いつもは殆ど新しいスライサーを使ってるんですが、なぜか妻は古いのを捨てないんです。

 一応嫁入り道具のひとつですから、僕が勝手に捨てることも出来ませんし、妻は稀にこの嫁入り道具を使ってるみたいで、使い終わると洗われて、新しいスライサーセットの中に収納されてしまってます。

 しかし、新しいスライサーセットの細切り用は、古いものより太めにしかカット出来なく、でもまぁ普通に調理する分には新しいセットで十分事足りる訳ですが「細ければ細いほど」と言われちゃあ仕方ありません。


 さて、何が使いにくいって、まず小さいこと。大根のツマなんかを作る用だと思えますが、普通サイズの大根の皮と切った状態ではスライスできません。今回は人参なので何とかなりますが・・・。そしてスライサー本体のみのセットなので、スライスされたものを受け取る容器もありません。さらに、何か器の縁に引っかけて、スライスされたものを受け取る汎用的な使い方が出来るようなもなく、まな板の上に先端を当てて、手で固定しながらスライスするしか方法が無いのです。もっというと小さいと言うことは厚みも無いので、先端を支点として使うと、スライスする野菜を押し当てるとんです(汗)。

 スライサーが上手く固定できないため、人参が小さくなってくると歯に掛かった抵抗力に耐え切れず、すっぽ抜けて指先をスライスしそうになりながら、当初3本の予定を2本で終了しました。怪我したら元も子もないですしね。

 それでも大根のツマ程度の細さにスライスされたため、見た目のポリュームはあったので早速調理開始!


 食材は上に書いた通りシンプルで、作り方もシンプル。細切りした人参をゴマ油で炒めて、しんなりしてきたら麺つゆで味付け、全体に味が回ったら卵の溶いたものをザバーっと掛け、チャンプルーの様になったら炒りゴマ掛けて完成です。

 人参をスライスしてるときから人参臭?が漂い始め、さらに炒めるとキッチンが完全に人参臭で覆われたので、妻は絶対食べれないだろうなと思いながら味見、処理されたものは思ってたほど人参臭くもなく、なかなか美味しいものになってました。

 いつも通り洗顔を終えた妻がやってきて


『ん?これ何の匂い?』

『人参がたくさんあるから消費するために、って料理を作ってみたんだ』

『うわーまさに人参だね』

『テレビ番組でも言ってたけど、思ったより人参っぽくなくて美味しいんだけど、お姉さんは無理だと思うよ』

『んー、どれどれ、一口だけ・・・』

『どう?』

『うん、美味しいわ!これなら食べれるというか、好きな味かも』

『え?食べれるんだ?』

『卵が入ってチャンプルーみたくなってるからなのかな?』

『じゃこれでたくさん作っても消費できそうだね』

『優しい味だから、週末実家に持って行っても良い?』

『それじゃ金曜日の夜にでも、大量に作っておくね』


 嬉しい誤算というか、これで自家製人参が痛む前に、ちゃんと食べれる予定が立ちました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る