それ、食べれるんだ?

 急きょ行くことになった義母かあちゃんのお誕生日旅行の代打、何度か泊ったことのあるホテルだったけど、お風呂の構造とか泉質を全く覚えていなかったということは、僕にとって温泉としての魅力を感じなかった宿(失礼)だと想定していたのは当たりで、夕食と朝食(ともにバイキング)を食べに行ったようなものでした。


 夕食後はお風呂にも行かず、特段楽しそうなテレビ番組もなかったため、22時過ぎには就寝、だってやること無いんだもん(笑)。

 そのお陰で、朝は5時半に目が覚め(歳ですから)朝シャン代わりのお風呂に行ってからの朝食バイキング。

 貧乏性な僕は、ここぞとばかりに沢山食べようと思ったものの、ダイエットの影響からか昔ほど量が食べれず、いつもはそんなに食べない妻が、和洋折衷そんなに食べれるの?ってほど色んなものを持ってくるのを、食後のコーヒーを飲みながら見守ってました。

 本当の予定だったら、僕は朝ご飯を自宅で食べたあと、先日の林道探検のあとに洗えなかったチビ助(ジムニー)を、小屋で洗ってあげるつもりだったので、チェックアウト時間を待たず、とっとと清算をしてホテルを出ることにしました。

 ただ、本当ならホテルで義母ちゃんに渡すはずだった、認知症予防に効くと言われるサプリを届けるため帰路は妻の実家経由となり、そうなると街の中を通っても峠越えても時間的に変わらなくなるため、折角だからと峠越えのルートで帰ることに。

 季節も10月下旬に差し掛かり、山は紅葉シーズン真っ盛り!ってのは、その2日前に林道探検行ってるので勿論知ってますが、妻は林道探検に来ていないので、車内からスマホで写真撮りまくりです。


 無事妻の実家に到着しサプリを渡して、すぐに自宅へ移動しますが、林道探検のときから知っていましたが、今年は雪虫が異常と思えるくらい多くて、迂闊に車から降りるのも憚るくらい、もうすぐ雪が降るんだなぁと実感します。


 自宅で荷物を降ろし、小屋に行くのが面倒になる前にチビ助で小屋へ。

 到着後すぐに高圧洗車機をセットし、Bluetoothスピーカーで筋トレのときに流してるハイテンションな曲を聞きながら、チビ助の裏の裏まで、流れ出る水の色が茶色から無色に変わるまで、労をねぎらうように丁寧に洗って天日干し(笑)。

 乾いたところで、せっかく小屋まで来たんだし、ちょっと早いけど冬タイヤ(スタッドレスタイヤの意)に交換してしまおうと言うことに。

 フロアジャッキ用の1平米ほどの厚手の鉄板を、小屋と畑の間の砂利に置いて、コンテナからジャッキとスタッドレスタイヤを出して、チビ助のフロントをジャッキで上げ、タイヤ交換開始です。


 ふと脇の畑に目をやると、義母ちゃんのお花コレクションに見慣れない花が咲いていました、もう満開って感じで。


『あれ?こんな花、いつも植えてたっけ?』

『あー、それね。今年母ちゃんが植えたんだよ』

『へー、今頃満開になるんだね』

『うん、そしてその花、らしいよ』

『え?マジか!』

『うん、食用菊なんだって。この前弟が来たとき、面白いからと持って帰ってたよ』


 まずは綺麗なピンク色と普通の菊とは少し形が違うその花を、スマホでそれらしくポートレート撮影(SNS用に)してから、花のにおいを嗅いでみます。


『うん、ガチで菊の匂いだね』

『私は菊の匂い苦手なんだ、仏壇の匂いみたいでさ(笑)』

『でも面白そうだから、帰りに少し持って帰ろう』

『えーーーーっ、それどうやって食べるの?』

『ネットで調べたら、酢のものが一般的らしいよ』

『うーん、私は食べなくて良いから、お兄さんの分だけで良いから』


 タイヤ交換を終え、たまたま近くに住んでいる妻の叔父ちゃん(義父ちゃんの弟)が、売れ残りの葡萄やら大根を分けに貰いに来たのに対応したりして、いよいよ収穫です。

 食用菊は花びらを食べるので、ちょっとボリューム感も分かりませんが、所詮花びらですし湯通ししたら嵩が減りそうなので、30個くらい収穫してビニール袋に詰めました。

 食べれるか食べれないかは別として、匂いは普通の菊と遜色無いため、帰りの車内も菊の香りが充満します。


 レシピサイトを見ると、花びらを取るには下向きに持って、花びらを摘まんで捻じる様にすると簡単に取れると書いてあったのでその通りに。

 いや~これ、文字にするのは難しいのですが、モサッ!とか、スポッ!って感じで、一気に花びらが取れて何とも気持ち良いです。

 そんな感じで全部花びらを取ったら、小さめのボウル山盛りになりました(汗)。


 花びらは熱湯に30秒くらいサッと通す感じで良いらしく、そのあと冷水で熱をとり水分をしっかり絞ってから味付けするだけです。

 味付けと言っても三杯酢なので、お酢1:砂糖1:お醤油1(本当なら白だしの方が色が綺麗になると思います)で作って、あとは和えるだけ。

 和えたところで一口食べてみると、さっきまであんなに主張していた菊の匂いは殆ど飛んでて、シャキシャキして癖も無く三杯酢とも良く合います。


 折しもその日は、即位礼正殿の儀の行われた祝日で、皇室の家紋の菊の御紋のペースであるその花を食べるというのは・・・ちょっと微妙な感じもしますが、祝いに食べる特別なものとして捉えると、日本らしい食材とも言えそうなので、これはこれで良しとしましょう。

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