ちょっとした妻の変化

 自分ちで食べる夏野菜の大部を自分で作るようになった妻。

 それまでは、義父ちゃん主体のものが多かったのですが、年々作り方、育て方を教わり、自分で苗や種を買い、さらに自分で耕運機で耕し、年に2回はエンジン草刈り機で雑草を刈るまでに至りました。

 自分で作ったものを自分で食べるということの喜びを知ったというよりは、夫婦でリタイヤしたあとの畑弄りを、先生がご健在のうちに習っておこうという気持ちの方が大きい様な気がしますが。


 そんな野菜たちが、もうこれ以上入りませんよというくらい冷蔵庫の野菜室を占領してる訳ですが、いくら冷蔵庫に入れたとしても生野菜です、日が経つと痛んでしまいます。

 勿体ないオバケ信者の夫婦ですから、何とか料理にして食べてしまいたい訳ですが、連日の暑さには勝てず、長時間火の前に立ちたくないので、どうしても供給の方が上を行きます。


 そんな昨日の食後、妻が大量に収穫して野菜室に入りきらない玄関にいる”待機組”ピーマンをせっせと細切りにして、フライパンでベーコンと一緒に炒め始めました。まぁ先日僕が作った同じものが、どうやら気に入ったみたいだったので。


『急にどうした(笑)』

『ピーマン痛んじゃうかと思ってさ』

『ほほう、やれば出来るこじゃん』

『まぁね(このドヤ顔である)』


 言い方を変えれば、褒めて伸びるタイプです(笑)。


『ピーマンは使い切ったけど、ナスとズッキーニもまだたくさんあるんだよねぇ』

『ん?ならナスもズッキーニも炒めちゃったら?』

『えー?ズッキーニも一緒に?』

『だって、ズッキーニは南瓜の仲間だし、合うと思うよ』

『そっかぁ~、そういえばこの前ズッキーニをあげた先輩が、すごく甘かったっていったんだ』

『まぁ南瓜みたいなものだからね、そうだズッキーニ切ったら切り口よく見て見て』

『なんで?』

『新鮮なのを切ると、透明な水みたいなのがどんどん出てくるから』

『へー、そうなんだ』

『その水、甘くて手で触るとベタベタするよ』

『ほんとっ!?』


 ピーマンを炒め終わって、ズッキーニを切ると


『ほんとだー、ベタベタするね』

『それが糖分だね』

『知らなかった』


 まぁそりゃそうでしょう、いつも僕が調理するから。

 一通りナスとズッキーニを切り終えると、何やら動きが止まりました。


『ん?どうした?』

『いや、これも塩コショウで炒めたら同じような味になっちゃかと思って』

『それなら、まず野菜をゴマ油で炒めといて、僕がタレ作るから』


 妻が野菜を炒めてる隣で、味噌、ダシ、砂糖、酒、生姜、醤油を合わせて、味噌だれを2分で作り


『量を見ながらこれを入れて、アルコールを飛ばすように絡めて行って』

『うん』


 ほどなく、キッチンに漂う甘辛い味噌の香り。


『おー、味噌炒めの匂いだ』

(どんなものになるか、まだ想像出来てなかったのか(笑))

『ほら、簡単でしょ?』

『これなら一気に和食になるから、さっきのピーマンと被らないでしょ?』

『うん、ご飯がすすみそう(笑)』

『あとは火を止めたら炒りゴマを掛けて、もう少しだけごま油を入れてね』

『またゴマ油入れるの?』

『うん、最初のゴマ油は熱で香りが飛んでるから、ここでゴマ油入れると一気にプロっぽくなるよ』

『めもめも(口だけですが)』


 理由が何であれ、多少なりでも自分で料理が出来るようになれば、もし僕がご飯を作れなくなっても、何とか食べて行けるのではないかと。

 年に1回か2回あるかないかの貴重なやる気、大事にしていきたいものです(笑)。


 味噌炒めの粗熱が取れたところで、保存容器に移し替えてたので


『そういえば、それ、味見してみた?』

『ううん』

『君はまだ匂いで判断するのは早いですよ(笑)』

『だいじょうぶ!タレはお兄さんが作ってるから』

『・・・』


 次はタレも作らせようと、強く思う旦那でした(笑)。

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