需要と供給

 数年前、郊外にある妻の実家を解体し、そこに小さい小屋を建てた。

 その家は妻の父親が40数年前に建てた大きな家だったが、経年劣化というか解体の10年前ほどから別に買った都会のマンションに引っ越していて、趣味の畑仕事をする夏の間だけ使っていた。

 妻の父親もかなりの高齢だが、冬になり雪が積もると誰も居ない実家の屋根の雪下ろしをしに行くわけで、命綱も着けずに屋根に上がり雪を下ろす父親が帰ってこないと連絡が来る前に、壊そうとなったわけである。

 あ、その家は土地が悪く、年々傾いていたこともありました。


 それまでも、趣味の畑でとれた食材、春はサヤエンドウトから始まり、夏はキュウリ・トマト・ナス・ピーマン・シシトウ・モロッコ豆・西瓜、秋には大根・南瓜・じゃが芋・トウモロコシなどなど・・・野菜には困ることがなかったのですが、ある意味困ることも・・・


 野菜を作った人なら分かると思いますが、実が付き始めると一斉に採れ始めるのです。

 最初は、初物だというサヤエンドウトを味噌汁にしたり、茹でてサラダにしたりと順調なのですが、そのうち妻の父親から


「おい、サヤエンドウトが沢山出来てるから週末採りに行け。え?うちか?もう、食べきれないくらいあるから」


 週末、場合によっては平日会社帰りに小屋へ行き、畑泥棒よろしく成った野菜をせっせと収穫します。

 そのまま腐らせるのは勿体ないですからね。

 サヤエンドウトなら、たくさん採れると言っても、バケツ一杯分くらいですから、茹でたり炒めたりすれば消化はできます。


 強敵は、ナスとシシトウとトマト・・・


 あー実がなってきたね。なんて思ったらすごい勢いで実が出来る。

 シシトウなんてサヤエンドウトと変わらないでしょう?なんて思うかもしれませんが、実のなるスピードが全然違うんです。


 ラタトゥイユや夏野菜カレー、ごま油で炒めて醤油で味付け・・・追いつかないです。

 ナスが大量に採れたときに、ナスの揚げびたしを作ったら、妻がたいそう喜んで食べてました。


「これなら冷蔵庫で保存できるし、たくさん食べれるから、今度からこれ作って」


 えぇ、季節が真夏じゃ無ければ作りますとも、真夏じゃ無ければね。

 北海道ではまだまだ自宅にエアコンが無い家もたくさんあります。

 マンションの8階のうちも例外ではなく、窓を開ければ風が通るしエアコン要らないよね理論で、はい、エアコンなんてありません。


 対して、ナスの揚げびたし。


 ”揚げ”というだけあって油で素揚げしなければならず、まして持ち帰ってくるナスの量が・・・長時間揚げ油の前に固定されるわけです。

 そこで何とかならないかと考えた結果、揚げずに油を多めにフライパンで焼くという方法を試したところ、大幅にコンロの前に居る時間と、台所の温度上昇を抑えることに成功。

 今では100均の一番大きいなタッパーを3つくらいまとめて作ります。

 作り方は簡単で、適当に切ったナスと破裂防止に穴をあけたシシトウをフライパンで揚げ焼きし、めんつゆにショウガの細切りを入れただけの汁に熱いまま入れて漬けるだけ。

 あとは粗熱をとって冷蔵庫で冷やせば出来上がり。

 そのまま食べるもよし、そうめんの汁として使うとナスとシシトウ、それにめんつゆの滲みた生姜が良い薬味になり美味しいですよ。


 現在では、妻も野菜作りを始め、ナスやシシトウより手ごわい野菜の栽培を始めましたが、その話はまた別のときにでも。

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