第13話『衝撃・囚われた少女』
赤絨毯が伸びる先には、深紅の光に照らし出される禍々しき玉座。
この異様な部屋に、絶句せずにいられるだろうか。
連れて来られたアリサは顔をしかめた。
「悪趣味ね」
デューゴスは身を霧消させ、烈火の瞳と髪を宿した
「そうか? 私は結構、気に入っているのだがな」
カグツチは玉座にゆっくりと腰を沈め、アリサを一瞥する。
「……何よ」
カグツチは不敵に笑い、おもむろに口を開いた──
「──アリサ、私に協力しないか?」
「……はぁ!?」
前世で自分を殺した人物に協力を持ちかけられれば、誰でも驚くだろう。
「馬鹿じゃないの!? 第一、私にメリットはないわ!」
「では、こうしよう──私に協力したら、お前が『アリス』だった頃に時間を巻き戻そう──」
アリサは息を呑んだ。
アリサが必要ない今、アリスになっても良いのではないだろうか。
一瞬の心の隙を突き、カグツチは彼女に魔術をかけた──アリサの両手両足は赤い光のリングで縛られ、瞳からは光が消える。
カグツチはほくそ笑み、彼女の首筋、顎を撫でた。
「この世界を壊すには──愛が必要だ」
* *
護衛艦やまと、護衛艦こんごう率いる第五護衛隊をはじめとする海上自衛隊現地部隊が目撃したのは、衝撃の光景だった。
「や、なんだあれは!」
双眼鏡を覗きこみ、驚きの声をあげる隊員たち。
それは──
巨大な立体映像だった。
赤いリングで手足を拘束され、淡い金髪を垂らしうなだれる少女の映像──紛れもない、アリサであった。
次の瞬間──立体映像が赤く輝いた!
「!!?」
突然の光に、目がくらむ隊員たち。
「状況報告!」
第五護衛隊司令、
それを受け、FIC──旗艦戦闘指揮所のクルーが報告を上げる。
『中国軍空母遼寧から謎のエネルギー波を探知! ──同時に、レーダー、センサーに異常発生!現在、自己診断プログラムを実施中!』
『司令! 方舟旗艦スマーケンより連絡! 『精霊魔法の効力減少しつつあり。我航行に支障!』』
鈴村は拳を握りしめた。
「防衛省と統合任務部隊司令部に緊急連絡……急いで!」
* *
アリサ拉致の報は方舟当局を震撼させた。
同時に、前線部隊からもたらされた謎の立体映像の目撃情報は統合任務部隊司令部(自衛艦隊司令部)に上げられた。
方舟からの要請を受け、日本国政府は、内閣府特定事案対策統括本部──『
岸本内閣総理大臣と荒垣防衛大臣兼特事対本部長、方舟諜報尚書イナバも交え、緊急会合が開かれる──
首相官邸──二階会議室。
「総理入られます」
官僚の声と共に一同が起立し、岸本を迎える。岸本は「座ってくれ」とジェスチャーし、皆着席。
「総理もいらしたところで、早速始めます。本日の緊急会合の議題は、方舟要人の拉致についてです……ではイナバ諜報尚書、お願いします」
荒垣が切り出し、イナバに振る。
「はい。デューゴスはアリサを拉致し、別の空間──スマーケンと海上自衛隊現地部隊からの報告によれば、中国軍空母遼寧の艦内に連れ込まれたと思われます」
「ふむ……」
岸本が顎に手をやり、険しい面持ちとなる。
イナバは続ける……
「謎の赤い光と、スマーケンの魔力に影響が出たのは、デューゴス──カグツチの術とアリサの太陽因子が反応を起こしたためと思われます」
『アリサの奪還が急務ですな』
……統合任務部隊指揮官、
「はい。そのための奪還作戦の立案を日本国政府に要請したいのです」
イナバが立ち上がり、深々と頭を下げる。
「お任せください。自衛隊の全力をあげて、彼女を救出してみせます」
荒垣が力強く宣言し、岸本も頷いた。
* *
海面の波紋。ヘリコプターのブレードの風圧が吹き下ろす──
護衛艦やまとの甲板に着艦したヘリは、海上自衛隊SH60Jだ。
鈴村はパイロットに礼を言い、艦内へと急いだ。
会議室の扉が開かれる。
着席していたのは、バシス大公、
──すなわち、アリサ救出作戦に参加するメンバーである。
鈴村が切り出す。
「先ほど自衛艦隊司令部から、アリサ救出作戦のGOサインがあったわ。……これより作戦の最終確認を行います」
皆が固唾を呑んだ。
ディスプレイには、アリサが囚われている、中国人民解放軍空母、遼寧が映る。
海・空自衛隊、方舟海軍の総力を挙げた救出作戦が、今、始まる──
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