第8話『火之神の幻・太陽因子の呪い』
──護衛艦やまとCIC(戦闘指揮所)。
「映像回復。スマーケンからの魔力攻撃、敵艦への着弾を確認」
「敵艦、反応消失しました」
戦場の歌姫作戦──太陽因子を宿す美咲の歌声で精霊魔法を高め、敵艦隊を焼き払う作戦は成功した。
「……ふぅ」
洋祐が安堵し、肩の力を抜く。
……が、
「──待ってください! 当該海域に高エネルギー反応!」
「全てのレーダー、センサーに電波障害発生!」
船務士の叫びに頭を跳ね上げる洋祐。
……現代艦艇において、電子機器のダメージは死を意味する……
長瀬は焦り、マイクを取る。
「至急回復に急げ……艦橋、当該海域を視認できないか!?」
『CICこちら艦橋、何も視認できない』
『待ってください! 当該海域に光が!』
「どうした艦橋!」
異変はそれだけにとどまらなかった。
「っ……」
「東城三尉!?」
激しい頭痛に教われ、洋祐の意識は途絶えた……
* *
……深淵。
目が覚めると、そこは果てしない暗闇だった。
自身の身体が淡いオレンジ色に光るのを感じる。
「(ここは……?)」
辺りを見回す洋祐……見慣れた人影が視界に飛び込む。
「美咲!」
「? ──洋祐! 一体ここは?」
「まさか……あの世か……?」
ふたりは肩を寄せあう。
人影が次々と出現する。
──岸本。
──荒垣。
──ミュラ。
──バシス。
──ローデウス。
──イナバ。
……方舟王族、重臣らと、日本国政府、特事対メンバーだった。
皆、混乱し、辺りを見回している。
すると、玉座が彼らの前に現れた。
そこに座るは、烈火鮮血の深紅の瞳を宿す一柱の神──
「か、カグツチ!!?」
洋祐が叫ぶ。
頬杖をついていたカグツチは洋祐と美咲に向き直り、不敵にも笑う。
「……まさか、歌で精霊魔法を増幅するとはな。転移が一歩遅ければやられていた」
カグツチが肩をすくめる。
「……帰って」
怒りを封じ込め、ミュラは低い声で告げた。
「帰れって……言ってるのよ!!」
「ミュラ!」
ロストの制止も聞かず、ミュラはカグツチに殴りかかった。
その拳はカグツチに当たるが、手応えが全く無かった。
舌打ちするミュラ。
カグツチは慇懃な様子で襟を整え、口を開いた。
「方舟現王ミュラ、そして日本国の宰相に告ぐ。──私は日本国に戦争を仕掛ける」
顔をしかめる岸本。
「……あんたはっ、あんたは何がしたいのよっ! 意味が分からない!」
ミュラが激情を露に叫んだ。
「私は太陽因子を宿す皇国が目障りなだけだ……そうだ。アリサという名の小娘はいるか?」
「っ! ……なんであんたがアリサのこと知ってるのよ」
「ふっ……まあいい」
──次の瞬間。
閃光を放ち、一同の目がくらむ。
……カグツチは消えていた。
* *
……数日後……
戦場の歌姫作戦は精霊魔法の効果を高めることが実証されたものの、カグツチの宣戦布告という大きな禍根を残すこととなった……
首相官邸会議室では、方舟王族、重臣らを交え、特定事案対策統括本部の緊急会合が開かれていた。
「……医学的な観点から申し上げますと、何らかの外的要因により、皆の意識が飛ばされたものと考えられます」
カルテを一瞥し、副本部長の高原が報告する。
ミュラが考え込み、口を開く。
「あの時、デューゴス……カグツチは『太陽因子を宿す皇国が目障り』だと言っていたわ」
太陽因子、と岸本がぼやく。
そして……
「私は皇居に参内し、陛下に伺いを立てたいと思います」
「!」
「天皇陛下に……!」
驚く異世界組。日本側も同様だ。
「岸本総理……」
洋祐が固唾を飲み、岸本を見やる。
「なお、荒垣防衛大臣、高原副本部長にも同行していただきます……日本の国体がひっくり返るかも知れません」
……新たなる日本神話は、皇室にまで及ぶ。
果たして、その真実は──
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