第7話『日方連合艦隊出撃・アリサの記憶』
日本・方舟連合艦隊──総旗艦、護衛艦『こんごう』艦内──
FIC──旗艦戦闘指揮所では海自でも珍しい女性自衛官が指揮を執っていた。
「鈴村司令、全艦、スマーケンを中心に輪形陣完成しました」
「わかりました、引き続き対潜、対空、対水上警戒を厳に」
色香の中にも凛とした声で
「……やまとと繋いで」
副官が回線を繋ぐ。
『──こちらやまと艦長、
「同感ね」
……護衛艦やまと就役当初、ベテルギウス迎撃などを指揮した東城宏一艦長(当時)のもとで鈴村、長瀬はそれぞれ副長、砲雷長として働いていた……
「レーダーで敵を捕捉! 魔族軍の軍艦五隻です」
「全艦、対水上戦闘用意! ……スマーケンの魔力が貯まるまで時間を稼ぎます」
士官の報告を受け、鈴村が命じる。
……今回の作戦の目的は、美咲を乗せたスマーケンの護衛のみならず、スマーケンの魔力を利用した新兵器が発射できるまでの時間稼ぎにあった……
「機先を制する──対艦誘導弾! 攻撃始め」
『ハープーン攻撃始め! 目標敵艦隊! 発射弾数、十発!』
『発射始め!』
護衛艦やまと、こんごう、あきづきのミサイル発射筒が火を噴いた!
噴煙の中を対艦ミサイル──ハープーンが突っ走る。
ディスプレイにミサイルを示すアイコンが灯る。
みるみる敵艦隊に近づき──命中!
『──敵艦隊のうち四隻を撃沈! ……旗艦には何らかの方法で攻撃を防がれた模様です』
歯ぎしりをする鈴村。
「……やまとに通信。『射程に入り次第レールガン攻撃を開始』──」
* *
歌姫を乗せた艦隊が魔族軍と交戦する頃──
──方舟王都。
閣議室に詰める女王ミュラの傍らには宰相ローデウスが控えていた。
「陛下。作戦は順調との報告が入りました」
入室したイナバが報告した。
「そう──確かに太陽因子が高まるのを感じるわ」
ミュラが両手を見つめ、呟く。
その時、扉を開く者がいた。
「アリサ……」
「ミュラ……やっと思い出したわ、戦場に響く歌のお陰でね」
自身の額に手を添え、アリサが告げた。
ついにアリサが前世──『アリス』の記憶を取り戻したのだ。
アリサは続ける……
「で……ミュラとロストは、アリスのこと、どう思っているの?」
「……どうして、それを聞くのかしら?」
「いいから、答えて」
アリサは声を絞り出した。
「今も昔も、アリスは命の恩人です」
「アリスは強くて美人で優しくて格好良くて、ずうっと私の憧れよ。会わせてあげたかったわ」
ロストとミュラが答えた。
「……そう」
なおもいい続けようとするミュラを遮り、アリサは部屋を飛び出た。
「アリサ?!」
その時、廊下に大きな影が現れた。
* *
大口径の主砲からプラズマが
対艦ミサイル攻撃の失敗を受け、護衛艦やまとはレールガン砲撃を敢行していた。
『レールガン、砲弾正常飛行!』
船務士が報告する。
『
「やったか?!」
洋祐が成功を祈るが……
『──目標健在!!』
ディスプレイには敵艦を示すアイコンが輝く。
艦長長瀬がマイクを取り、こんごうFICに報告する。
「レールガン、弾かれました!」
『……バシス大公に確認してみるわ』
鈴村がスマーケンに無線を繋ぐ……
『バシス大公、敵艦に攻撃を防がれたようです』
『……恐らく魔力の一種だ……だがこちらも態勢を整えることができた』
あらかじめ渡されていた無線機でバシスは発射態勢が整った旨、返答した。
『──わかりました。前衛のやまとに連絡……『ただちに前衛より待避』』
やまとがその巨体を揺らし、艦隊左側面へと移動する。
入れ代わりにスマーケンが前衛へと移動し、魔法陣を展開。横向きの赤いリングが艦首を中心に周り、徐々に拡大する──
「美咲殿、ここは危険だ」
「分かりました」
バシスが美咲に歩み寄り、甲板からの待避を促す。
巨大リングは高速回転し、海原を赤く照らし出す。
バシスが舳先に立ち、右手を正面にかざした。
「──火よ、あの艦を凪ぎ払え!」
詠唱し、手にいっそうの力を込める……
──艦隊前方に閃光が走った!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます