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さあ、今日は集団お見合いの日だ!

気合いを入れていくぞー!おー!


……なーんて、言ってほみたものの……当日の私には特にする事がない。

だって、私は部外者だもの。(byみぃーがる)

精々、お節介な聖獣として、ちょっかいを出す位だろう。


現在、王城の広い中庭には、色とりどりのドレスを身に纏った沢山のお花達で溢れかえっている。


……未婚&婚約者のいない令嬢ってこんなにいるんだ。

私は、そう思いながら……お茶菓子にそっと手を伸ばした。

私専用のテーブルである。


おっ!このチョコレート味のフィナンシェ!しっとり濃厚で美味しいぞ!

私はニッコリと頬を弛ませながら、モグモグと口を動かした。


先日のが功を奏したのか、騎士達は自らお茶の給仕をしたりと、みんなマメに動いているからだ。

イクメン計画……成功?

マメな騎士達の姿にポーッと見惚れている令嬢の多い事、多い事。

男性が自らあれやこれやをしてくれるのも珍しいが……今日は、特別な式典でのみ使用される濃紺に銀色の縁取りのされた騎士服を着ているから、令嬢方の目は更に釘付けだ。

(王のヨハネス様に許可をもらったよ!)

眼鏡をかけている騎士には、シルバーのチェーンを用意してみた。

すると、あら不思議!

チェーンを付けただけなのに、執事にも見えるというお得感!!


騎士達全員が今日は一味違う仕様になっているから、誰かの好みにはきっと合うはず!

筋肉を愛するが故に身体は引き締まっているし、そもそも騎士は顔の良い人が多いのだ。


アインさんの事が大好きな、お店担当の準男爵家のミアさんも、うっとりと頬を染めている令嬢の中の一人である。

私との約束通りに、接客に対する心を入れ替えたミアさん。その働きに免じて、ジルにお願いをしてメンバーに追加してもらったのだ。

うむ。良きかな、良きかな。

今後もこの調子で精進してくれたまへ。


さて、肝心のアインさんとミアさんだが……私から見て、アインさんはミアさんの事をまんざらでもないと思っているはずなんだよねぇ。


因みに……。

この会場内で、ジルの方に行ってしまった令嬢方を除いても、まだ令嬢は沢山残っている。

目の前の欲に駆られる事なく、堅実な方を選択した令嬢方である。

王のヨハネス様と王妃コーネリア様も協力してくれたのが大きいが……身分も性格も文句無しの素晴らしい令嬢が多い。滅多に人前に出てこない深層の令嬢も参加をしているらしいよ!


ジルがいる事で、ミーハーな気持ちになっていまう令嬢を責める事は出来ない。

だって、究極の玉の輿だもんね!

逞しい肉食系女子も素敵だ!!


……たまに、ジルから恨みがましい視線を向けられているが…………私は知りません。

そんな視線には気付いていません!!


ジルよりも、大切なのはアインさんとミアさんの今後である。


……ここは、なるもので二人の仲だけでなく、他のメンバー共々も一気に進展をさせてあげようではないか!


『吊り橋効果』とは、吊り橋の様な不安、恐怖を感じる場所で、恋愛感情を抱きやすい心理効果の事。緊張してドキドキしていると、それを脳が恋愛によるものと錯覚し、恋愛対象として意識するキッカケになる……。

つまりは、一緒にドキドキすると疑似恋愛感情が芽生えるのである。


という事で用意しましたのはー……コレだ!!



「きゃー!!」

「うわぁー!!」

「ぎゃーーっ!!」

「いやぁーーー!!」

数々の悲鳴が木霊する箱上の空間。

『お化け屋敷』である。

ジェットコースターとも迷ったけど、みんな格好良い服や綺麗だったり可愛いドレスを着ているのに……グシャグシャになったら勿体な……コホン。可哀想なのでコレにした。


しかも、このお化け屋敷だが、ではない。

怖いものが苦手な私が、絶対に入りたくないと思っている空間を如実に再現してある。

パッと見は都会のコンビニ(小さい)に見えるが……入ったら一時間は出て来れない様に空間をねじ曲げて作ってある。

邪魔な時は手の平サイズにまで縮小が可能だ。聖獣の万能チート力最高!!

……手元に置くのは怖いので、終わったら神にでも押し付けてしまおうか……。


二人一組になった男女には、建物の入口にて靴を脱いでもらう。

日本でもこういったアトラクションで靴を脱ぐ事はあったが、靴を脱ぐ事に抵抗がないはずの日本人でも躊躇するのだから、この世界の住人は更に戸惑うだろう。


靴を脱ぐ事にも意味があるのだよ。ふふっ。

足の裏でもゾワゾワっとする体験をしてもらうのだ。

勿論、お約束のアレもあるよ!

足首をガシッて捕まれるやつとか、ぐんにゃりした嫌な物も踏むし、肩にも手首乗ります!!


「さあ、いってらっしゃーい!」

「え?え?」

「み、ミーガルド様?」

中から聞こえて来る叫び声に顔を引きつらせていたミアさんとアインさんを中に押し込んだ私は、そのまま入口に鍵を掛けた。


「あ、靴は脱いで靴箱に入れてから進んで下さいねー」

二名様ご案内~。


さあ、これで入口には戻れない。

頑張って先に進んでくれたまえ。若者よ。


私はふふんと鼻歌を歌いながら、出口へと向かった。

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