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「……大変失礼を致しました」

にこやかに微笑む青年クラウディス。


そんな爽やかな笑顔には騙されないんだからね!?


先程の騒動(?)から、神殿内の別室に移動した私達三人だが……

そこで私は衝撃の事実を知った。


このクラウディス。なんと!この国の五大神官の内の一人だそうだ。


……この変……げふん……が……?


私達が通された、この別室こそが彼の位の高さの証明となるそうだ。


通常、何の役職も持たない神官は三人~五人の大部屋で生活をする。

結婚をすれば別に住まいを持つ事も可能だそうだが……基本的に神官は独身者が多い。しかし、それは別に宗教が結婚を禁じているからではない。

神様達を心から信仰し愛する変……げふん……が多いので、結果的にそうなっているだけなのだそうだ。(Byシーカ)


寧ろ、神様達は子孫繁栄を説いている。

……彼らの行動は、神の教えから逆行している事になるのだ。

信仰とは……これ如何に……。


クラウディスは信仰により、この若さで今の地位まで上りつめた。この国の神関係の歴史や教えで彼の右に出る知識の者はいない。


つまり……クラウディスは究極の変態……あ、言っちゃった。テヘッ。

そんな変態ではあるのだが、彼ならば私が求めている情報を知っているかもしれないのだ。


しかし……。

「はぁぁ……。ミーガルド様が私の部屋に……」

クラウディスは先程から、『部屋の空気を全て吸い込んでしまうのではないか?』と思う位に深呼吸を繰り返している。

まさに変態……。私的には一刻も早くこの部屋から出たい……。


シーカは友の奇行には慣れているのか、死んだ様な目をしてはいるが……出されたお茶を黙って飲んでいる。


クラウディスの私室にあるソファーセットの片側に私とシーカが一緒に座り、向かい側にクラウディスが一人で座っている状況である。

クラウディスは私と一緒に座りたがったが、この状態でなければ嫌だと大きな声で主張させて頂いた。


「チェンジで……」

「ええっ!?」

おっと、思わずポロッと本音が出てしまった。

目を見張りながらオロオロと慌て出すクラウディス。


この変態以外の知識人はいませんかー!?

シーカに半眼を向けると、シーカは同じく半眼のまま首を横に振った。


「こいつが一番マシだ。諦めろ」

なんと……!が一番マシだと!?

神はどれだけ私に試練を与えるつもりだ……って。

ソレもコレもあいつのせいか。

私は天井の方を睨み付けながら見上げた。


「さて。ミーガルド様の質問ですが……」

先程までとは打って変わり、急に真面目な顔になったクラウディス。


……え?どこでそのスイッチが入ったの?

黙っていればイケメン神官なのにつくづく勿体ない……。


「申し訳ありませんが……ミーガルド様の質問の答えは私には分かりません」

膝の上で手を組み、視線をその上に落としたクラウディス。


私が彼に質問をしたのは『神子の事』だ。


神の意思を民に伝える役割の他に……この世界の穢れを自らの身の内に溜め込んでしまう神子達は、その責務により平均寿命は三十歳前後と短命である。

神子達の身体に穢れが溜まらない様にする方法はないのか?

世界の穢れを神子が自らの内に溜める事が出来るならば、その役割を聖獣が代わる事が出来るのではないか?

過去に顕現した聖獣がそうしていた事実は無いか?

……等々。色々な質問をさせて頂いた。


クラウディスの様な究極の変態でも分からないのか……。

やはり神に聞くしかないのか……と、肩を落とした時。


「ミーガルド様の望む答えではないかもしれませんが……」

いつの間にか顔を上げて、真面目な眼差しを向けて来たクラウディスが話し出した事は、私が予想だにしていなかった内容だった。


三代目の神子までは短命ではなく、なんと六十代まで長生きしていたのだと、クラウディスは言った。

それが何故か四代目以降から短命になってしまったそうだ。

という事は……三代目神子と四代目神子を調べれば原因が分かる……!?


希望に満ちた視線をクラウディスを向けると、彼は瞳を伏せて首を横に振った。

「私もそう思い……調べたのですが、何も資料が残っていないのです」

「え……?それって……」

「厳密に言えば、三代目神子までの資料は残っています。がないのです」


背筋がゾワッとした。

これは明らかに……四代目の神子の時に何かがあったとしか言えないではないか。


元々、神への愛が強い変態クラウディスだが、今代の神子が王族のミーシャ姫になった事で更に研究を深めたそうだ。

自らの力が強過ぎて更に寿命を縮めていたミーシャ姫。

四代目の謎が解ければ、幼い姫神子が長生き出来る。

クラウディスは神関係において変態だが、神子達の早死にを推奨しているわけでは決してないのだ。


そんなクラウディスが調べて何も分からなかったのなら……やはりここは神に直接聞かなければならないのだろう。

神ならば全ての理由を知っているはずだから。


はあ……。割り増しで絶対に殴ってやる。

再度、私はそう誓った。




因みに……。

自らの身体に神が降りていたのを知ったクラウディス。

バッタリと床に倒れた後に、自らの身体を抱き締めながらゴロゴロと転がりながら悶絶し始めたので、シーカと私は何も言わずに部屋から退出した。


そしてそのまま厨房に戻り、少し強めのお酒を貰ってシーカと二人で飲んだ。


うん。何も見なかった!!!!!

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