天涯の夜明 5
「この
まぶたを開いたイーリエから真っ先に投げつけられたのは、盛大な
「仕方ないだろ! 急いでたんだ!」
「だからってねえっ」
おそらくは羞恥にか、
と、地鳴りとともに強い揺れが辺りを襲った。足もとをすくわれた者たちから悲鳴があがる。いきなり始まった言い合いに目を
あちらこちらで嫌な音がする。建物の崩れる音だ。見える範囲でも、いくつかは完全に潰れ、辺りに
「わかってるだろ、この状況。オレに突っかかる方が大事なら、あんた本物のバカだぞ」
他の者同様よろめきながらも踏みこたえたアズナは、羽ばたく
ぐ、とイーリエが
「わかっているわよ。約束だもの、守るわ」
少女神は自らを抱き上げたままのタキアへ、おろしなさい、と声をかける。
「人手も
「ああ」
地を踏みしめた少女へうなずくアズナに、続く細かな揺れに耐える者たちのうちから、
「お前が何をしようとしてるかが、オレたちにはさっぱりわからん。説明しろ」
そうだった、と思い至る。これから行うことを、
まっすぐに彼の目を見た。
「ケルス全島が沈むのを止める」
「できるのか?」
うなずく。
「
「『水上の
翼をたたんだタキアが、
「そいつは伝説上のものじゃ?」
いや、と答えたのはイビアスだ。
「復元されたものがある、
ゴッ、と地鳴りとともにまた足もとが揺れ、何かが崩れる音がする。揺れのおさまりを待って、アズナは続けた。
「イビアスとロゼニアは、
「わかった」
うなずいて赤毛の
「
「
「
はばたき、タキアは空へと舞い上がった。戦場に散らばる眷属たちへ、
「ロゼニア」
イビアスがあかがねの髪のクスビを呼ぶ。
「
「
あかがね色の髪に結ばれた
「手を」と、ともに
「全員オレに触れてくれ」
七本の腕が彼へ伸びる。両腕に触れる彼らの手のひらを感じ、〈
「――
時空を開き、自らの力を展開した。
*
何かが入りこむ
地がゆれる。
ゆれのおさまりとともに
両手足に力をこめ、まだ重い体をゆっくりと持ち上げた。〈
足元から立ち上げた竜巻に乗り、闇深き空へと浮かびあがる。
*
いちめんの
地鳴りが聞こえ、少なくない者たちが、ハッと身をこわばらせた。次いでやってきた突きあげるゆれに、悲鳴こそあちこちからあがったが、おおむね
「だれがここの指示を?」
地のゆれが落ちつくや、イビアスが手近な
「ハッ。
あちらに、とふり返った先、
「
思わず走り出したアズナの声が届いたのだろう、
「セアト、
「そちらこそ」
向かい立ちあわく笑いうなずいた
ほぅと息をつき、いくぶん青ざめた
「根のクスビたち、と……ほかのお二人は?」
「
危急時だ、
地鳴りが聞こえる。またもや足もとからあがってきたゆれに、
「
心やさしき
「長くはもたない」
「約束は生きてますか。崩壊を止めます。新しい
金銀の髪の月神と視線が合わさる。
「
言い切った。
「行こう」
うなずきあい、身をよじる大地をもろともに足早に歩き出す。
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