第五章 夢なら良かったのにな

 あの日、オレが給食を食べた終わったころ、担任の田賀先生がごつい手を振ってオレを呼んだ。

「お母さんが来るからな。今日は早退になる。母ちゃんを支えてやるんだぞ。あとなんかあったら先生に言えよ。力になるからな」

 田賀先生はうちの家庭事情を知っている。



 じいちゃん家に行くと、布団に横たわった動かないマー兄ちゃんがいた。


 夢なら、覚めるのに。

 夢だったら良かったのに。



 オレは、いや家族みんながたぶん現実なんて思いたくなかったんだ。


 思えなかったんだ。

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