第四章 あの日

 今年オレは、小学6年生になった。

 クラスには仲良しのヨッシーとフーちゃんがいたから気楽だった。


 ヨッシーもフーちゃんも幼稚園からの友達で、フーちゃんは女なのによくいっしょにカブトムシをとりにいったりザリガニ釣りをした。


 ヨッシーは惣菜屋の息子で、マー兄ちゃんとしょっちゅうヨッシーん家のコロッケをやまほど買いに行った。


 マー兄ちゃんはオレの友達にも人気があった。

 オレの友達とも一緒に遊んでくれた。


 マー兄ちゃんはまだ結婚してなかったが美人の同い年の彼女がいて、もうすぐ結婚するんだといつも言っていた。



 あの日は朝早くに、突然なっちゃんから電話があった。

 なっちゃんは、母ちゃんとマー兄ちゃんの妹だ。

 末っ子のおばちゃんだ。


 母ちゃんは電話で話しながら大きな声で泣いた。

 オレはただごとじゃないとおもった。

「正広が死んだ」

 ボソッと母ちゃんが言った。


 信じられなかった。


 オレはとりあえず母ちゃんが学校へ行けというので、行かなくちゃならなかった。

「いやだ。

 マー兄ちゃんに会いたい」

 オレが一言言ったら、母ちゃんがまた泣いた。


「うそかもしれない。生き返るかもしれない。わたしが、母ちゃんが確かめてくる」

 母ちゃんの口調は強かったので、オレは学校へ行った。


 母ちゃんのパートを休むという電話の声が…玄関までひびいていた。



 オレは学校に行ってからも、ずっと気が気じゃなかった。

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