第二章 いなくなってしまうということ

 オレには、父ちゃんはいない。

 浮気して出て行って、会っていない。


 母ちゃんは近所の小さなスーパーでパートで働いててさ内職もやっているんだ。

 もっともっと、わりの良いところはないかと、いつも母ちゃんは求人情報誌とにらめっこだ。


 正社員には、なかなかなれないらしい。

 

 母ちゃんは年だし可愛くないし、高卒だし資格も運転免許証しかないからとか、いくらでも正社員になれないマイナスポイントは出てくる。


 あまりぼやきたくないけど、出ちゃうみたいだ。


 母ちゃんは、大変だ。

 助けたい。

 誰か助けてほしい。

 いや、オレが助けたい。


 早く大人になって母ちゃんの負担にならないようになって、母ちゃんに楽させてやりたい。



 マー兄ちゃんがいた頃は、週に何回も、たくさんの食材を買ってうちに遊びに来てくれた。


 マー兄ちゃんは母ちゃんの弟だ。

 マー兄ちゃんは、名前を正広と言った。


 オレはものごころついたときから、近所に住むマー兄ちゃんに遊んでもらったりしてた。


 マー兄ちゃんはオレの父ちゃんみたいな、兄ちゃんみたいな存在だった。



 死んだら、いなくなる。

 もう、話してくれないし、遊んでくれない。

 

 相談したくてもいないから、出来ない。 

 冗談を言ったって、もう笑ってくれない。



 かなしくてかなしくて、オレはこんなに大事な人がいなくなることが辛いとは思っていなかった。


 消えちゃったんだ。


 オレの大好きなマー兄ちゃんは、もう消えちゃったんだ。

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