御禁料押領問題 その三

【まえがき】

 恒興くんはいつも以上にキレ散らかしておりますニャー。相手が明智光秀さんなので。

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 池田恒興は織田信長の屋敷の廊下を歩いている。明智光秀が待機しているという部屋へ向かって。

 明智惟任日向守光秀。恒興の前世において『本能寺の変』を起こしたとされる人物。転生した当初の恒興は光秀を見付け次第、即殺すつもりだった。しかし光秀を殺したからといって『本能寺の変』が起こらないとは限らない。寧ろ、彼を泳がせて謀叛の兆候を掴む方が大事だと、今は考えている。それこそ、光秀に同調した者も一網打尽にするつもりだ。

 故に恒興に光秀を殺す気は無い。無いのだが、それと好悪は別問題である。恒興は殺す気までは無いが、イライラする程に彼が気に入らない。顔の表情は厳しく、わざとドスドスと音を立てて歩く。


 明智左馬助秀満は現在、明智光秀の取り次ぎの役目に就いている。通常、客は主人と会う場合、まず取り次ぎに申し出て、取り次ぎが主人に伝える。そして取り次ぎが主人の意思を客に伝える。これが会見の為に踏む手順だ。余程、仲の良い友人でもなければ、この手順通りにするのが慣例だ。そして取り次ぎは主人の護衛も兼ねているので、腕の立つ信頼出来る者を置く。

 その明智秀満は屋敷の奥からドスドスと音が迫って来るのを感じ、そちらに視線を向ける。信長の屋敷内で曲者という可能性はまず無い。秀満は一応、動ける心構えをし、わざとらしい音を立てて迫り来る客を待つ。


「む?これは池田上野介殿」


 現れたのは織田家重臣で犬山城主・池田上野介恒興であった。


「おう、明智左馬助か。惟任は居るニャ?」


「はっ、お待ち下さい」


 明智光秀は居るか?と恒興に問われ、秀満は頭を下げて主君に伝えようと立ち上がる。しかし恒興は歩く速度を止めず、秀満の前を通り過ぎようとする。


「要らん。直接行くニャー」


「いやいや、暫しお待ちを!」


「うるせーニャ!退け!」


 秀満は慌てて恒興の腰の辺りにしがみ付く。光秀に伝える前に恒興を通すのは、常識的に有り得ないからだ。しかし、恒興は無理やり押し通ろうとする。恒興の腰にしがみ付いて止めようとする秀満。秀満にしがみ付かれて、立っていられなくなり匍匐前進で光秀の部屋に向かう恒興。ここにグダグダな戦いが始まった。

 部屋の外でバタバタと暴れる音に明智光秀は気付く。誰かが来たのだろうか?と光秀は外で待機している秀満に声を掛ける。


「どうした、秀満。来客か?」


 返事は無い。その代わりに部屋の襖が少しだけ動く。その隙間から見えるのは外の景色。いつもと変わらない。いや、隙間の下の方に何かが有る。誰かの顔の一部が覗いている。鋭い目と猫耳、非常に湾曲した口と白い牙が見えている。そして不気味なソレ・・がボソッと呟いた。


「惟任、見〜付けた〜ニャー」


「ギャー!?秀満にニャー男の呪いが!?」


「誰が呪いだ、ゴニャァァァー!!」


 不気味なソレの正体は明智秀満にしがみ付かれた池田恒興だった。恒興は匍匐前進状態だったので、足下から覗くというホラーな感じになっていたのだ。

 恒興は秀満を振り解き、部屋に入る。


「何でニャーが来たのかは理解るよニャ?」


「そりゃ、まあ……」


「お前が山科卿に端金はしたがねを贈った事は知っている。ニャんでアレでいいと思ったんだ?」


「いや、まあ……」


「ハッキリ言えニャー。山科卿を怒らせる結果にしかなってないだろが」


 恒興は光秀を問い質す。何故、自分が来たのか理解しているか、と。理由など簡単だ。明智光秀が山科言継に端金を贈った結果、彼が怒って帰ってしまったからだ。光秀も理解している、その件で彼は信長の屋敷に留まっているのたから。

 光秀は問い質されても口籠るばかり。そこには言いたくない理由が存在していた。しかし、恒興に詰められて光秀はとうとう白状する。


「……仕方がないじゃないですか!お金が無いんですよ!あの時はアレでも精一杯だったんです!」


「は?金が無い?そんなに贅沢したのかニャ?」


「そんな訳ないじゃないですか。切り詰められる物は切り詰めています。これ以上は家臣の俸給を削る事になりかねません。だから延暦寺の荘園を押領した訳で」


 明智光秀が何故、山科言継という大物公卿にお小遣い程度を賄賂として出したのか。それは単純な理由で『金が無い』からだ。

 光秀の領地は近江国滋賀郡で琵琶湖の西側南部。東山道の始点である瀬田、京の都や膳所という商業地域が近い。近江国の中でも有数の穀倉地帯であり、京の都から敦賀に街道も延びている。これだけでも発展性が高く、稼げないなど有り得ない。それに、その地域にはある金の成る木まで存在している。


「ニャんの冗談を。お前には金の成る木こと『堅田衆』が居るじゃニャいか。金が無いなんて……」


「堅田衆ってそんなに儲かるんですか?最初から大した事ありませんでしたし、最近は上納金も目減りしてますよ」


「ニャにをバカな……、はっ!?」


 冗談だろうと言いかけて、恒興は気付く。いや、思い出した。それは小一郎との他愛も無い世間話。

 長浜の開発資金には秀吉の貯め込んだ金をもちろん・・・・投入する。しかし、それだけだと資金が底を着けば終わりだ。重要なのは開発中でもちゃんと利益を出していく事だ。その鍵を握っているのが、琵琶湖東岸に勢力を持つ菅浦衆だった。しかし菅浦衆は堅田衆に遅れて織田家傘下入りした為、最初から苦戦が予想されていた。だからこそ小一郎は兄の秀吉も動かして、菅浦衆が少しでも有利になる利権を確保した。

 織田家の上納金は利益に対する割合で出される。だから菅浦衆の利益を増やす事は重要なのだ。

 しかし小一郎はこんな事を恒興に言った。菅浦衆の成長が想定より早い、と。それに対して恒興はお前が頑張ったんだろ、とだけ返した。小一郎は少し照れながらも、納得はしていない様な微妙な表情だった。その絡繰に恒興は気付いてしまう。


(小一郎の話は菅浦衆が好調なんじゃなくて、堅田衆が不調だったんだ。だから菅浦衆は楽に巻き返す事が出来たんだニャ!)


 堅田衆と菅浦衆は琵琶湖通商におけるライバル関係だ。その勢力比は堅田6に対して菅浦4といったところだ。京の都に近い堅田衆の方が昔から有利だった。

 そして早くに織田家傘下となった堅田衆は素早く安土に進出し地歩を固めた。後発となった菅浦衆は苦戦が予想され、勢力比は堅田7菅浦3と見られた。だから菅浦衆には川並衆の扱いに慣れた羽柴秀吉と羽柴長秀の兄弟が付いた。これでようやく堅田6菅浦4くらいの均衡を保てると、恒興は考えていた。だが、そこに誤算があった。


「おい、惟任。お前は何をやってんだニャー。いや、何もやってないな?」


「え?」


「堅田衆への手当てを何もしてないニャって聞いてんだよ!」


 絡繰など簡単だ。秀吉と小一郎の尽力により菅浦衆が勢力を伸ばしているなら、光秀は堅田衆に何もしていないから衰退しているのだ

 それを恒興に指摘されて、光秀はキョトンとした表情で彼を見る。


「手当てとは?堅田衆は金の成る木なのでしょう?」


「アホか、テメェ!どんな木でも水やり世話しなきゃ成る物も成らんわ!お前が堅田衆の為になる利権を確保して手当てしなきゃ、利益ニャんか増えるわきゃねーギャァァァ!!」


「え?えええ!?」


 明智光秀はこれまで農村しか担当した事が無かった。農村の指揮は村長がやるし、必要な手当ては農業用水くらいで済む。あとは家臣に任せて放置しても特に問題は無い。

 だが、水軍衆はそれでは済まない。舟を動かすだけでも大金が必要となる彼等には儲けを効率良く稼げる『利権』が必須なのだ。一応、地域性も存在するので、様子を見ながら手当てする必要がある。光秀が怠っているのはこの点だ。


(ダメだニャー。コイツ、素人だった。これでは秀吉と小一郎の二人に勝てる訳がニャい。いや、ボロ負けだ)


 秀吉は水軍衆にどんな利権を確保すれば有利になるか熟知している。小一郎はその利権を効率的に手当てし指揮する事に長けている。菅浦衆は欲しい権利を小一郎に要求し、小一郎は即座に秀吉に伝え、秀吉は利権を確保する。小一郎はその利権を手当てし、菅浦衆は利益を拡大して上納金を増やす。この流れが完全に出来ている。

 それに対して明智光秀は水軍衆の扱いを知らない為、堅田衆の事は堅田衆に任せて何もしていない。堅田衆は現状の利権しかなく、発展性も無い。利権を光秀に要求するだけの信頼関係も無い。つか、最初の説得以降、話もしていないのではなかろうか。

 結果として、勢力比7:3はあっという間に6:4に戻り、更に菅浦衆は攻勢を強めて5:5になる勢いなのだ。光秀の存在が明らかなバランスブレイカーになっている。恒興は頭を抱えた、光秀がここまでの無能だとは予想していなかったのだ。

 諸葛孔明が軍略知識無しに魏軍に勝てたか?アインシュタインが数学知識無しに相対性理論に辿り着いたか?どんな天才も基礎知識無しに偉大な功績は残せないのだ。明智光秀は水軍の基礎知識が無い為に、堅田衆を上手く指導する事が出来なかったのだ。堅田衆の者達は正に指を咥えて、菅浦衆の拡大を見ているしかない。


「もういい、お前は手を出すニャ!堅田衆の手当てはニャーがやる!」


「そんな……」


 恒興は光秀から堅田衆を取り上げると宣言する。この男に任せておいたら最悪の事態を招きかねない。それは菅浦衆による琵琶湖単独支配、そこに向かっている。

 もしも琵琶湖が菅浦衆の支配に落ちたら、彼等は織田家の言う事は聞かなくなる。通行料も利用料も自分達の好きに決める筈だ。ライバルが存在していないなら、殿様商売が可能なのだ。嫌なら使わなければ良いと言うだろう。それでは物流が成り立たない。琵琶湖は湖なので致命的とまではいかないが、大打撃となるのは間違いない。

 だから堅田衆と菅浦衆のバランスは大事なのだ。どちらの一極支配を許してはならない。その為に菅浦衆には秀吉と小一郎、堅田衆に光秀を付けたのだ。予想外だったのは明智光秀が水軍衆に必要な手当てを知らなかった事だ。


「はっ!?待てニャー、だったら『坂本城』の造成はどうなってんだニャ?」


「お金が無いのに出来ると思いますか?築城予定地はただの野原ですよ」


「あがががが」


 正に開いた口が塞がらない。恒興はそんな感覚に襲われる。坂本城の造成は上洛戦直後には決定していた。その目的は比叡山延暦寺を抑える要だ。そして、何れ来る幕府との戦いの際に、幕府の財源たる『琵琶湖西岸路』を塞ぐ要になる予定なのだ。今、織田信長の、恒興の戦略が無能な味方によって崩されようとしている。その事実に恒興は目眩がした。

 だが、明智光秀が完全な無能ではない事も恒興は知っている。この男には基礎知識が欠如しているだけだ。それさえ得てしまえば、誰よりも上手くやる筈だ。


「分かった、惟任。ニャーが水軍衆への手当てのやり方を教えてやる。それさえ理解すれば、堅田衆は巨大な金の成る木になる筈だニャー」


「ほ、本当ですか!?」


「加減などしニャいからな。しっかり付いて来いよ」


 恒興は光秀から堅田衆を取り上げる事は撤回する。そして水軍衆に必要な手当てのやり方を教える事にした。何があろうとも、坂本城は造って貰わねばならない。堅田衆を彼から外せば更に稼げなくなる。現状では稼ぎの良い農村は比叡山延暦寺の荘園として押領されている。光秀はそれを取り戻す為に戦い、今回の騒ぎを起こした。

 もうこれ以上の問題を起こされるのは御免だ。恒興は心の底から思った。彼は光秀の部屋にある紙と筆、墨を使って書状を書く。


「政盛ーっ!」


「はっ、殿。お呼びですか?」


「この書状を羽柴筑前に渡せ。ここに書いてある利権は堅田衆に譲れと付け加えろニャ。アイツも理解っている筈だ。……ていうか、理解っててニャーに黙っていやがったな、あのヤロウ」


「は、はあ。直ちに参ります」


 書状を書き上げると、恒興は大声で加藤政盛を呼ぶ。直ぐに現れた政盛に、恒興は書状を羽柴秀吉に届けろと命令する。

 そこには堅田衆に施すべき利権が列挙されている。此等の利権が堅田衆に必要な事くらいは秀吉なら理解している筈だ。彼とて水軍衆が強くなり過ぎると何が起こるかくらい把握している。いや、彼の場合は菅浦衆に稼げるだけ稼がせてから、菅浦衆を規制するか、光秀に力を貸すつもりだったのではなかろうか。そう、恒興は邪推してしまう。

 まあ、その企みは成功しない。既に小一郎がおかしいと気付いて恒興に相談している。もっと事態がハッキリしてきたら、小一郎は恒興に強く警告するだろう。恒興は何方にせよ自分が動くのかと、少しゲンナリした。


「明日、堅田衆の拠点に行くニャー。その後は山科卿のご機嫌伺いか。やる事多いニャ」


「私も山科卿の屋敷に?」


「いや、ニャーだけで行く。惟任は腹割って堅田衆の頭領と話すんだニャー」


「わ、分かりました」


 恒興は明日になったら堅田衆を訪ねると決める。そこで堅田衆の現頭領である居初いそめ三郎大夫安明と会見する。それから京の都にとんぼ返りして山科言継と会うという強行軍を敢行する計画を立てた。

 その前に聞いておく事がある。山科言継が何故来たのか、というそもそもの話だ。


「それで、山科卿は何の用件で来たんだ?それが分からないと交渉も難しいニャー」


「私もハッキリとは分かりませんが、比叡山延暦寺の荘園を私が押領した件で『詰問勅使』としていらっしゃいましたが」


「『詰問勅使』だと!?お前は『詰問勅使』の意味は理解っているよニャ?それは正親町帝がお前の行いについて聞きたいって事だニャー」


『詰問勅使』とは?まず『勅使』は天皇からの使者という意味だ。ならば山科言継が勅使となったのは納得がいく。彼は比叡山延暦寺の為に動いたのではなく、天皇である正親町帝の為に動いた訳だ。

 そして『詰問』とはそのままで『質問に答えよ』という事だ。つまり正親町帝が光秀の行状について、どういうつもりか答えよと山科言継を送った。こういう話になる。


「ええ、まあ。しかし延暦寺の僧兵を荘園から追い出しただけですよ。六角家の混乱に乗じて領地を押領した向こうが原因なのですから」


(それで何故、正親町帝が詰問勅使を送る?延暦寺の荘園の事ニャんて気にしないだろ。……ん?延暦寺?正親町帝?んんん?コレ、何処かで……。はっ!そうか、前世でも同じ事があった!)


 問題となるのは、正親町帝が何故に延暦寺の荘園を気にするのか、だ。光秀は延暦寺が六角家の混乱に乗じて荘園を押領したから取り返したのだ。まあ、境界線が曖昧なので比叡山の僧兵が居る場所は片っ端から攻撃したであろうが。

 それについては、武家視点からなら正当である。光秀の行いは責められるものではない、武家視点なら。

 しかし恒興はふと前世の記憶を思い出した。前にも同じ事があったと。


「惟任、お前はまさか『御禁料』に手をだしたのかニャー!?」


「は?御禁料?そんなバカな。私は延暦寺の……」


「延暦寺にあるんだニャ、御禁料が。今の天台座主は何方どなただ?」


「え?……あっ!」


「気付いた様だニャー。今の天台座主は正親町帝の弟君であらせられる覚恕かくじょ僧正だ。その方は天台座主におなりになった時に御禁料を延暦寺に持って行ったんだよ。死後に返却されるが、比叡山の僧兵が管理してるのは当たり前だニャー!」


 そう、現在の比叡山延暦寺の頂点である座主には正親町帝の弟・覚恕僧正が就いているのだ。彼は元は皇族だったので御禁料の一部を持っている。それを座主就任の際に延暦寺へと持って行った訳だ。

 当然ながら、その御禁料は比叡山の僧兵達が管理していた。そこに明智光秀が攻め込んで僧兵達を追い出したのだ。だから明智光秀は(正親町帝の弟である天台座主が所有している)御禁料を押領したという事で詰問勅使として山科言継が来たという絡繰な訳だ。


「つまり今、織田家は天皇家に対して弓を引いてる状態ニャんだよ!!何してくれてんだ、ゴニャァァァー!!」


「そんなバカなーっ!」


 どんな理由があれ、明智光秀が御禁料を押領した事は事実である。比叡山延暦寺はここを強調して朝廷に訴えた訳だ。織田信長は朝敵である、と。

 正親町帝は『朝敵認定』を出す前に『詰問勅使』を出した。まずは事実関係を確かめようとして、織田信長と親交のある山科言継を送った訳だ。まあ、いろいろと厄介な感じになったが、正親町帝が織田信長を信じたいと考えている証拠だ。問題が明らかになったのなら、直ぐに解決すれば良い。というか、するしかない。


「たくっ、とんだとばっちりだニャー」


「いいじゃないですか。貴殿は私に借りが有る筈でしょう?」


「は?借りってニャんだ?」


 やる事の多さ、重大さに恒興はとばっちりだとボヤく。それに対して、光秀は恒興に貸しがあるのだからやってくれと言う。恒興は何の話だ?と首を傾げる。


「……私を思い切り、殴り付けたではないですか。稲葉山城攻略戦で」


「身に覚えが御座いませんでそうろうニャー」


「貴殿の腰にその凶器が存在してますが?」


「松倉江も知らんって言ってるニャー」


 恒興は稲葉山城攻略戦の折りに、明智光秀を思い切り殴り付けている。鞘付き松倉江で。大した理由も無く。

 とりあえず恒興は明後日の方向を向いてすっとぼける。あと松倉江にも勝手にすっとぼけさせる。


「不本意ですが、叔母上に報告してもよろしいか?」


「止めろニャー。話がニャーの母上まで行くだろうが」


「では、お願いしますよ」


「クソっ、調子に乗りやがるニャー」


 明智光秀の叔母は織田信長の正室である帰蝶の母親『小見の方』である。彼女は斎藤道三の側室で、斎藤義龍が謀叛を起こした際に信長の所に逃げて来ていた。その時に彼女の世話をしたのが恒興の母親である養徳院桂昌だった。その事から二人は親友の如く仲良くなり、今も親交がある。

 つまり光秀が小見の方に訴えると、秒で養徳院の知るところになる。恒興は少し歯噛みしながら、動く事に決めた。


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【あとがき】


 信「比叡山を焼くのじゃ!一切合切を炎に沈め、誰一人として生かしておくな!」

 光「殿!その様な事をしてはなりませぬ。天下への徳を失いますぞ!」

 信「やかましいわ、キンカン頭がっ!さっさとやれい!」

 光「……はっ」(致し方無し、か)


 この様に子供べくのすけは学びましたニャー。全ての小説、漫画、ゲームがだいたいこんな感じでしたから。恐怖の信長さんが光秀さんイジメをしている。こればかりな印象でした。それがガラリと変わったのはネットが普及し、織田信長さん再評価、明智光秀さん再評価などの流れが起きてからと思います。


 信「ま、悪僧共の巣になってる麓部分だけ焼くか。これで比叡山に居る上層部への脅しにもなるだろ」

 光「ヒャッハー、汚物は消毒だーっ!!ハゲ山になるまで焼いてやるぜぇ!」

 家臣「流石にドン引きや……」

 信「おい、光秀、やり過ぎるなよ。悪僧共を懲らしめて、上層部が交渉の場に出て来ればいいんだから」

 光「もちろんですよ、殿。比叡山そのものを極楽浄土の地獄絵図にしてやります。お任せ下さい」

 信「人の話聞けよ。聞いてよ、お願い!」


 こんな感じだったと知り、驚愕しました。光秀さんの比叡山に対する殺意が強過ぎる、と。光秀さんが細川藤孝さんに言ったという1571年の年賀の挨拶にて。


 光「あけましておめでとうございます。今年こそは山門(比叡山延暦寺)を攻め滅ぼそうと思います」

 藤「……」(汗)


 長岡(細川)藤孝さんは聞こえてない振りをしたそうです。年始から何を言うとんねん、と藤孝さんは思ったでしょうニャ。

 大河ドラマ『麒麟がくる』では前者の明智光秀さんでした。流石に後者の明智光秀さんは主人公になれなかったのかも知れませんニャー。なので光秀さんが比叡山延暦寺の荘園を攻撃して、御禁料まで押領したのは史実だったりします。あまり語られませんが。まあ、比叡山の僧兵が管理していたので、間違えたのでしょうニャー。

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