ぺしゃんこにしてやると誓ったモノ
信長との会見を終わらせた恒興は京の都で借りている邸宅に帰る。ここには恒興が連れて来た池田家親衛隊と金森長近が居る。それ以外の者達は土居宗珊に預けて撤収作業中である。今頃、池田軍団は犬山に向けて帰還中だろう。
恒興は別室で待っている金森長近の所に行く。信長の財源造りを早速始めて欲しいからだ。特に計画を主導する金森長近にはほぼ全ての情報を渡す必要がある。たとえ不測の事態が起きたとしても、計画の達成に向かって長近の裁量で修整して貰わねばならない。一々、恒興に聞いていたら間に合わない事もあるだろう。
だから恒興は長近だけを別室で待たせたのだ。彼だけに情報を渡せる様に。
「長近、待たしたニャー」
「お、殿。信長様への報告は終わった様だね」
待っていた長近はフレンドリーな感じで接してくる。二人きりなので人目を気にする必要がないからだ。恒興もそれでいいと思う。今回の件を完全に理解して貰う為にも、遠慮の無く意見をして欲しいのだ。聞いてませんでした、知りませんでしたは通用しない仕事だ。
「ああ、横山城で事業計画を開始する。で、長近には悪いんだが今回は『横山城代』として務めてもらうニャー」
「え……私はまだ城主になれないのかい。……そんなぁ、やっと金森村に残っている者達を引き上げてやれると思ったのに……」
城代と告げられて長近は
「まあまあ、勘違いすんニャって。稼ぎは城主くらいにあるから、残してきた者も全員引き上げてやれ。ただ、お前くらいしか上手くやれそうなヤツがいないんだ。浅井長政に隙を見せず、横山城で『ある産業』を手掛けられるヤツがニャー」
「『ある産業』?」
悄気る長近を恒興は宥める。城代と言っても俸禄は城主くらいの物を渡す予定だ。ただ信長にも報告した産業を構築するには金森長近とその家臣しか適任がいないのだ。事業を構築し、販売を手掛け、浅井長政に隙きを見せない軍事も必要だ。長近の家臣達は主人を支える為に行商していたので商売スキルを身に着けている。事業構築スキル、商売スキル、軍事スキルと揃えてなければ不合格なのだ。恒興の家臣の中では金森長近以外には無理である。
「ああ、それはニャー、『油』だ!」
「……『油』?でも、油くらい何処でも作っているじゃないか」
恒興は事業で扱う品物を発表する。信長に報告した通りの『油』である。しかし油と聞いて長近は首を傾げる。油くらい全国で作っているじゃないか、と。
「長近、今の油事情をどう思うニャ?油生産業者は油に混ぜ物して水増し、質の悪い油を大量に流しているニャー。アレは燃やすと
「……」
「おお、なんて可哀想ニャんだ。この問題は津島会合衆や堺会合衆でも解決出来ていないニャ。そもそも商人は生産業者から買っているだけだから、既に混ぜ物されているんだ。ニャーは民衆の豊かな暮らしの為に尽力すべきだと思うんだニャ。解るだろう、長近!」
恒興は大袈裟な身振り手振りを交えて長近に訴える。その必死な訴えに、長近は胡散臭さしか感じていない。だが、恒興の言う事はウソという訳ではない。ただの戦国時代の常識的な事だ。混ぜ物油の流通が横行しているなど当たり前だからだ。
その現状には問題が有るとは長近も思う。だが本当の問題は、何故に池田恒興がこの問題に着目しているのか、だ。いったい何が目的なのか?事業として手掛ける以上は長近に知る権利が有るはずだ。長近は臭い芝居を続ける主君に直裁に聞く事にした。
「……で、本音は?」
「
長近に本音は?と問われて、恒興は爆発する。叫びたくて叫びたくて仕方がなかった標的の名前、『大山崎油座』である。
「わーお、凄い本音が出て来た」
「当たり前だニャー。ニャーが慈善事業をやる様に見えるのか?見えるなら眼医者を探して来い!で、その大山崎油座は畿内の油販売を一手に握る存在な訳よ」
大山崎油座というのは少なくとも平安期には活動している組織であった。その頃に油座とは名乗ってはいないが、離宮八幡宮の
この者達は畿内の油販売を独占し、商売敵は武力行使で徹底的に対応した。また神輿を担いで朝廷に強訴する事もあり、利権を脅し取り畿内での覇権を確立していた。
「大山崎油座は時の武家権力者に取り入り勢力を増していったニャ。だが足利幕府3代目将軍の義満が死ぬとその隆盛も陰り出すニャー。6代目将軍の義教なんか叩けるだけ叩いて金を絞り取っていたしニャ。そして応仁の乱でトドメとなった」
「だよね。既に活動している感じがないんだけど」
この大山崎油座は時の権力者と深く結び付いていた。特に足利幕府3代目将軍の足利義満とは関係が深く、義満は大山崎油座から多額の上納を受けていた。その見返りとして大山崎油座は多数の利権を得て、この時代に最盛期を迎える。
しかし足利義満が死ぬとその隆盛は陰り出す。跡を継いだ足利義持は父親の行いを全否定していった為に、大山崎油座の利権は少しづつ減っていった。そして足利幕府6代目将軍にあの男が就く。くじ引き将軍・足利義教である。
この男はとにかくやり過ぎた。一族である関東公方の足利持氏を重臣の助命嘆願も無視して殺し、関東公方家を皆殺しにした。足利持氏の遺児を匿った結城家も徹底的に殲滅した。女子供赤ん坊まで生かしてはおかなかった。結城家は僅かに逃れた数人しか残らず一度滅びる。そして言う事を聞かない比叡山延暦寺に対して第一回焼き討ちを敢行する。
足利義教は父親である足利義満の真似をする事があり、大山崎油座に上納をさせようとした。しかし足利義満とは要求額が桁違いであり、隆盛が陰っていた大山崎油座は拒否した。なら足利義教はどうしたか?答えは『殺してでもうばいとる』である。これで大山崎油座はより一層、衰退した。
この足利義教という男はとにかく後先を考えていない。逆らう者には殲滅で対応し、しかも気分次第なところがある。つまり少しでも不興を買えば女子供赤ん坊まで皆殺しだ。赤松家が足利義教暗殺を行った背景には、こういう事情がある。
そして大山崎油座のトドメとなったのは『応仁の乱』である。この為、大山崎油座自体は名前だけの存在となってしまった。
「本体はもう名前だけの存在ニャんだけど、朝廷に強訴して認めさせた『
「『油場銭』?」
「税金だ。主に油製造業者と油販売商人に課せられるニャー。コイツがえらく重くてニャ、生産者は水増ししないと生活していけないし、商人も高額にせにゃならん」
大山崎油座が朝廷に強訴して獲得した利権の油税を『
油生産者は油場銭が重過ぎる為に油に混ぜ物をしなければ生活していけなかった。だが、水増ししようにも油と水は混ざらない。直ぐにバレてしまう。では何を混ぜたのか?それは『適当な樹液』である。油と樹液も混ざらないだろうが、油と同じ様な粘性のある液体なら何でもいい。だから燃やすと
一方で商人達も頭を抱える。混ぜ物が入った油を卸された上に油場銭を取られる。結果として、この低品質な混ぜ物油を高額販売しなければならないというジレンマに陥っている訳だ。
「だからこんな現状なのか」
「幕府の重臣共もアイツラと結んで甘い汁を吸いまくってたからニャー。不正の取締りなんて笑える程に機能しない。働き掛けるなら朝廷だ、なんたって権利の大元だからニャ。こっちはニャーがやる。朝廷には何の得も無いからそう難しくはないだろう」
この油場銭から揚がる利益で美味しい思いをしているのは、大山崎油座だけではない。彼等は自分達の権利を守る為に時の権力者に積極的に近付いた。そう、足利幕府だ。幕臣達はこの油場銭から積極的に賄賂を受け取っている。だから油に対するありとあらゆる不正が罷り通るのである。そもそも不正を取り締まる側が腐り果て賄賂を求める現状だからだ。重ねて言う、『現状』だ。
そして世の中が乱れるとある者達が現れた。それが『油の密売人』である。何しろこの密売人は油場銭を払わない為、恐ろしい程に儲かった。この油の密売で財を為した有名人を『斎藤道三』という。一説には彼の父親こそ油の密売人であったとも言われている。
恒興は大山崎油座と油場銭を徹底的にぺしゃんこになるまで潰してやると心に誓った。日の本に正常で質の良い油を流通させ、その利益を持って信長の財源にするのだ。その売り場こそ『安土の楽市楽座』であり、質の良い油の生産検査拠点が『横山』なのだ。
その為にも朝廷に交渉し、権利の大元『油場銭』の廃止をして貰わないといけない。その足掛かりとなるのが、信長から紹介された二条晴良という公卿である訳だ。この後で恒興自身が行くつもりだ。
「それはいいけど寺衆の資金源にもなっているのかい?」
「ああ、大山崎油座から神人が全国に散っているんだ。そしてヤツラは向かった先で油場銭を取り立てようとした。上手く行くと思うかニャー?」
「行く訳ないさ」
大山崎油座の神人達は少しづつ全国に散っている。鎌倉時代には『大山崎住京神人』という者達がいろんな場所に現れたらしい。そして名前だけの存在となった大山崎油座から神人は積極的に全国に散った。
神人達は行き着いた先で油場銭を徴収しようとした。自分達には朝廷から認められた権利があるのだ、と。それを真に受けて、見知らぬ人に金を払う人はいるのだろうか。当たり前の様に上手く行かなかった。
「そう、上手く行かない。だからヤツラは現地に居る組織と手を組んだんだニャー。それが『寺』だ。権利を持つ神人と武力を持つ僧兵が全国の油製造販売業者から油場銭を取り立てて資金源にしてるんだニャ。だから全国の油の質が上がらないんだよ」
「そんな事になっていたのか……」
上手く行かない神人は地元の悪僧 (僧兵)と手を組む事にした。これにより権利を持つ神人と武力を持つ悪僧が揃い、日の本全国で油場銭を取り立てる事が可能となった。勢いを得た神人や悪僧は幕臣に賄賂を贈り、取り締まられる事なく油場銭を時には暴力的に取り立て続けている。
その彼等が油の密売人など生かしておく事などない。自分達の利益を侵す者は仏の名の下に成敗する訳だ。仏罰と言いながら。そんな事をしても幕府は取り締まらないし、大名も遠慮する。だから油の密売人は大して横行しなかった。
「まずは権利の剥奪からやる。これはニャーの領分だから任せておけ。長近がやるのは横山城領域を油生産拠点にする事。あと織田領内の油生産者に通達を出し、油を横山に集めさせる。混ぜ物無しの良品をニャーが買い取る形でニャ。これで今年の販売は出来るだろ」
恒興の計画はこうだ。横山に油の生産場及び検査場を設立する。ここに混ぜ物無しの『
この清油の価格は現状の混ぜ物油の半値近くになると計算された。これでも信長に約束した『年間5、6万貫』は余裕で達成出来る目算だ。油場銭がどれ程重いかご理解頂けるだろうか。
「それでも彼等は油場銭を取り立てるんじゃないかな?」
「だったら完全に違法だ。叩き潰してやるニャー。悪徳の寺社が一目で分かる良策だろ」
恒興が油場銭の権利を朝廷に消させる理由。その一つに違法な稼ぎをしている悪僧を洗い出す事がある。油場銭が廃止されて止めるなら良し、止めずに暴虐に走るなら捕縛討伐する理由になるという事だ。
「流通ルートの整備はどうするんだい?」
「そんなん要らねーギャ。安土で大規模な楽市楽座やるから。全部、そこで販売する。その楽市楽座から津島会合衆と堺会合衆にも卸すし、全国の商人にも買って貰うニャー。そして商人を通じて油場銭が廃止された事を伝えて貰うって寸法だニャ」
安土の楽市楽座を使う理由は、『全国の商人』に買って欲しいからだ。そして清油を買った『全国の商人』に油場銭が廃止された事を拡めて欲しいのである。全国の油生産業者は混ぜ物をする限り横山の清油には勝てない。価格面でも勝てない。そこに油場銭の廃止の報が届けば、当たり前の様に混ぜ物を止めて良質な油を卸すだろう。これによって日の本全国の油の品質を爆上げしようというのが恒興の計画なのだ。
全国の油生産業者が努力すれば、織田家の油の売上は落ちるだろう。だが対応には時間が掛かるし、織田家の領地が増えれば、織田家の傘下が増えれば売上は上がっていく見込みだ。
「なるほど。全国の油生産者は混ぜ物する限り、ウチの質には勝てないから売れなくなる。質を上げる為に混ぜ物を止めれば油場銭は出せない。そこに油場銭の廃止の情報がくれば当たり前の様に止めるか。これで全国の油の質を一気に上げるんだね。しかし問題は稼ぎが無くなる寺社衆だけど」
「まあ、織田家と仲良くしている寺社衆には補填措置を講じるニャー。ま、あんまり必要ないかもだけど」
「?何故だい?」
確かに、寺社衆の稼ぎが一気に無くなるのは問題だろう。先程から『寺社衆』と言っているのだが、『社』で関係しているのは大山崎油座 (離宮八幡宮)の神人だ。そして『寺』は武力さえ有れば神人は手を組むので、割と宗派を問わない。しかし、この油場銭はある寺衆が盛んに手掛けている為、彼等以外はあまり関われない。その彼等が手出しをさせないからだ。彼等の勢力が弱い地域であれば出来るかも知れないという程度だ。
「ある寺社を除いて、あまり関わって無いからだ。寺社のはみ出し者が細々とやってる程度だろニャー。何しろ大々的にやると最大手が怒るから」
「最大手というと?」
「『比叡山延暦寺』っていうんだけどご存知ですかニャ〜ん?」
そう、油場銭取り立て最大手が『比叡山延暦寺』なのである。だから油場銭の取り立てに他の寺社が大きく関わると必ず武力闘争に発展する。油場銭が儲かるからこそ、比叡山延暦寺の悪僧達は妨害者を決して許さないのだ。
「知らない人はいないんじゃないかなー、ソレ。そうか、比叡山は全国に末寺があるから。じゃあ今回の標的は比叡山延暦寺そのものなのかい?」
「いや、油場銭を扱っているのは延暦寺に居る僧侶じゃないんだよニャー。麓に
恒興の最大の目的が近江商人を叩く事である。特に恒興が標的としている近江商人最大商家である仰祇屋仁兵衛だ。彼の仰祇屋は油問屋であり、当たり前だが油場銭の影響を受ける。しかし彼は比叡山の悪僧達に楽市などを世話しており、油場銭に関しても特別措置を受けている。そして畿内の油が仰祇屋に卸される様に悪僧達を使っているのだ。この油場銭の利鞘で仰祇屋は莫大な儲けを出し、幕臣に賄賂を贈っているのである。
「最後にこの全てを信長様の財源に創り直す事だ。もう解るだろ?お前が『城代』になる意味が、油利権がどんだけヤバいか。長近が横山城主になって油利権を一手に握ったら……お前、直ぐに信長様に粛清されるぞ?」
「おお……おぅ……」
これが金森長近が横山城代になる最大の理由。現状でも年間5、6万貫という試算を恒興が弾き出したのだ。それを知った以上、油利権を握る者など織田信長がマッハで生かしてはおかない。
金森長近が横山城代になってやる事は清油の検査体制の構築、管理のシステム作り、販売の手順の確立である。これを構築した後は信長から派遣されてきた家臣を指導し、城代の任務は終了となる。
「だから横山城は信長様の直轄地になるんだ。なぁに、心配するニャ。お前が城主を務める城と領地はニャーがしっかり整備しておくから。心置きなく横山の整備に努めてくれニャー」
「おお、じゃあ私の城はもう決まってるんだね!」
「既に決めてあるニャー。『小牧山城』って言うんだけどご存知ですかニャ〜ん?」
「……ゴフゥ」
城代の任務が終わったら晴れて城主だと言われ、長近の顔は喜びに満ちる。しかし恒興が『小牧山城』だと宣言すると、長近は胸を押さえ吐血したかの様に倒れた。流石に小牧山城はショック過ぎたのだ。
何せ織田信長の居城だった城だ。無駄にサイズが大きくて無駄に維持費が掛かる。これが長近が嫌がる理由の一つ。
「いやさ、倒れるくらいに衝撃的なのは分かるよ。でも心配するなって。ニャーがキッチリ開発するから」
「でも小牧山って人が居ないんだよ。寒村しかないし」
「知ってるニャー。その最大の原因は『水が無い』って事だ。井戸で何とか水を得ている状態で、井戸水程度で田んぼなんて維持出来ないからニャー」
「そこまで分かっているなら」
理由の二つ目は人口の少なさ。尾張国の平地にしてはおかしい程、人がいない。信長もこれを改善する為に小牧山城を築城し本拠地としたのだ。大名の居城の周りは発展するだろう、人が集まるだろうと。しかし人は集まらないし、発展もしない。美濃攻略も終わって用無しとなると、織田信長はさっさと引っ越してしまった。
その原因となっているのが『水』が無いである。各農村で井戸を掘り、生活水は確保出来ている状態である為、水田の維持が出来ないからだ。如何に織田信長が頑張ったとしても水の問題はどうにもならない。
だが、織田信長でもどうにも出来ない水問題のスペシャリストが恒興の家臣にいるのだ。
「まあ、聞けニャー。実は去年に墨俣が治水の甲斐無く水没した。大谷休伯はその原因を『水量』だと言った。そこで休伯は水量を減らす策を考えていたんだ。その中に『取水』という方式があった」
「取水?」
「ああ、犬山で取水口を造って、取り込んだ水を尾張内陸に流す。つまり『小さな運河』を造るんだニャー。この水を流す先を小牧山にすればいい。水車も造って水を汲み上げて、何としても水を流す!」
「おお!」
大谷休伯が考案した『取水』という手法。これは川の進攻方向に沿って並列に水路を造る。川から逆流する力の無い水だけを並列水路に引き込む。それを川本流の力で水車を回し、水を汲み上げて尾張内陸、小牧に向かって流すという手順である。取水口には万が一に備えて、鉄製の水門を取り付ける予定だ。
「前は費用が莫大でやりたくなかったけど、小牧の開発と一緒ならやる気も出るってもんだニャ。今浜、じゃなくて長浜の開発整備をやらなくてよくなったから資金的にも余裕がある。任せておくニャー!」
言ってしまえば、これは小さな『運河』を造る話である。費用はかなりのものになるので、以前はやる気が無かった。しかし、小牧の開発と木曽川の水量削減、長浜開発を木下秀吉に押し付けた事などが重なったので恒興もやる気を出した。
今の小牧は1万石あるかないかだが、開発が終われば5万石以上はある筈だ。2万石は金森長近に渡すが、残りは全て恒興の取り分になる。恒興が頑張れば、それだけ取り分が増えるだろう。
そして小牧には寒村しかない。つまり余所者の開拓村を造っても文句はあまり出ないのだ。
「ニャーは明日、二条卿に会いに行く。油場銭は必ず廃止してもらうから、長近は直ぐに横山で準備を開始してくれ。一週間後には安土の楽市楽座が開かれるから、それに間に合う様にしてくれニャー」
「了解したよ。任せてくれ」
恒興は計画の第一歩、『油場銭の廃止』を訴える予定だ。会う人物は現職の関白である二条晴良。人となりを急いで調べて会談に臨まねば、と恒興は気合を入れる。
命令を受けた金森長近は直ぐに支度をして横山城に向かった。
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【あとがき】
恒「いいぜ、お前らが不正の上にいつまでも胡座をかいて居られると思っているのなら、ニャーはその幻想をぶち殺す!」
べ「恒興くんからのパクリ決意表明でした」(笑)
大山崎油座の変遷
平安時代「朝廷なんぞ脅して利権を貰う場所じゃい。そうれ強訴一発、御神輿わしょーい!」
鎌倉時代「幕府?遠い遠いwとりあえず都務めの侍に賄賂で何とでもなるわーい」
室町時代「都に幕府?ヤバいやん、近いって、それ。幕臣に賄賂ラッシュで将軍様に近付くやでー」
安土桃山時代「応仁の乱でボロボロやねん。太閤殿下に目を掛けてもろたけど、ご臨終やで~」
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