経済封鎖 再び

 池田恒興が小堤城に戻った翌日、別働隊を率いていた土居宗珊と木下秀吉が小堤城にやって来た。今回の作戦の経過報告とこれからの事を話し合いに来たのだ。


「藤吉、宗珊、ご苦労だったニャ」


「おー、勝三殿。竜王城に周りの砦も順調だでよ」


「殿、日向山城も順調ですぞ。そして所定の場所の砦も」


 経過は順調で、今のところ問題は発生していない。甲賀の北西を囲む様に建築している砦群も順調に数を増やしている。恒興は秀吉の伴で来た青年を見て声を掛ける。


「ふむ、『あの場所』で間違いないんだよニャ。中村一氏、いや『瀧孫平次』よ?甲賀者しか知らない道ってのはニャー」


 青年の名前は中村一氏。前の名前を瀧孫平次といい、甲賀出身である。彼は自分の立身出世を願い、尾張まで来た。ただ、そこまで上手くはいかなかった様で、彼は川並衆で日雇労働者をしていた。そこで家臣を探していた木下秀吉にスカウトされ、現在は武将の一人として活躍している。

 恒興は一氏に甲賀の道情報を聞き出していた。それこそ乱波者しか使えない様な道まで。その情報が砦の建築場所の参考になっている。


「そういう事ですか、あんな細道の事まで根掘り葉掘り聞かれたのは。ああ、まさかその情報で故郷を苦しめる事になるとは……」


「お前はニャーの部下ではない、藤吉の許可さえあれば拒否は出来たな。だがな!その場合、ニャーは本気を出したぞ。何れだけの人死にと苦しみが出るとしてもだニャー。お前が情報を渡さなきゃ甲賀は長く多く苦しむ事になっていたんだ。……ニャーは手加減せんぞ」


「……分かってます。誓ってウソは言ってませんよ……」


 今更言っても詮無き事だ。既に情報は恒興に渡り、それを基に砦は建てられている。そして甲賀から近江国や山城国に到る道は全て塞がれた。

 それに加担してしまった中村一氏は肩を落とした。こうなると恒興の言葉がウソではない事を祈るしかない。


「そう、ヘコむニャ、一氏。上手く行けば人死には出ないニャ。言ってしまえば、お前は甲賀の皆を救ったんだ(ニャーから)。まさに英雄的行動じゃないか、ニャーは感服したニャ!」


「え?そ、そうですかねー。いや、それ程でも〜」


(チョロいニャー)


 一氏がガックリきているのを見て、恒興は励ましの言葉を入れておいた。何しろ彼は故郷の敵に加担する事で故郷を救ったのだ。誰から救ったのかと言えば恒興からなんだが。


「しかし勝三殿、まだ道を塞いだ程度だがここからどうすんだ?」


「どうするも何も、もう終わってるニャー」


「え?そうなんか?」


「道を塞ぐ。それは人流と物流を制限する事。つまり伊勢国の経済封鎖の再現ですな」


「そうだ、宗珊の言う通りだニャー。だが、思い返せば伊勢国は時間が掛かり過ぎた。その結果を活かして今回は『完璧な経済封鎖』を実現した。驚くほど速く音を上げるだろうニャー」


 今回の作戦は伊勢攻略戦の再現である。たがその内容は伊勢攻略戦の反省を活かしたものになっている。伊勢攻略戦は実質的に開始から終了まで約1年を要した。浅井家の対応も控えている恒興には悠長にしている時間は無いのだ。


「勝三殿、まさか物流全部止めて甲賀の民衆を全員、飢え死にさせるんか!?」


 その言葉を聞いて秀吉は全員餓死させるのかと戦慄した。現状で出来る事といえば兵糧攻めだと予想したからだ。

 それに対して恒興は即座に否定する。


「アホか。今回止めるのは一つ、『塩』だニャー。だいたい甲賀に兵糧攻めなんぞ効かん。城を相手にしているならそれでもいいニャ。だが今回は甲賀地方そのものだ。食料くらい山に入ればそれなりに何とかなるし、だからと言ってニャー達が甲賀に入れば山林でどんだけ被害が出るか分からん。ここの乱波どもは山林戦に特化してるしニャ。だから『塩』をメインに物流を止めるんだニャー」


 恒興は最初から甲賀に兵糧攻めは無意味だと知っていた。山は食料の宝庫とまでは言わないが、人口的にも大した事がない甲賀なら山からの恵みだけでもかなりの期間を保たせるはずだ。現状では20000人を抱える恒興の方が不利と言わざるを得ない。


「うーん、やっぱり意味が分からん。塩の代替品くらい、いくらでもあるんじゃね?味噌とか醤油とかさ」


「お前、ソレの原料はニャんだ?」


「え?そりゃあ……大豆とか穀物とか……あとこうじに……『塩』だ。ああ!?」


「分かったか。塩の代替品作るにも塩が必要ニャんだよ。塩だけは代わりが利かないんだ。味噌や醤油ってのは塩を多量に使わない為に作り出された物だしニャ」


 味噌にも醤油にも材料は地域で異なるため、様々なバリエーションがある。だいたいは穀物に麹と塩を入れて発酵させるのが一般的である。穀物の代わりに魚を用いて造る『魚醤』という物もある。中には麹を入れずに自然発酵させる物も存在する。

 だがどんな場合でも使われるのが『塩』なのだ。塩無くして塩の代替品は造れないのである。その為、海が遠い山国では塩を手に入れると直ぐに味噌にする。それだけに留まらず、海が近くても盛んに味噌を造る。味噌は日の本のソウルフード的な物になっている。恒興も赤味噌をタップリ塗った焼き豆腐『味噌田楽』は好物に入る。田楽は祭りなどでよく振る舞われる。


「殿、お話は分かりますが、やはり時間は掛かるのでは?甲賀でも備蓄はあると思われますが」


「まーだまだ分かってねーニャー、宗珊。塩が不足すると、あらゆる必需品が不足してくるんだ。味噌や醤油なんて、その典型じゃねーか。となると起こるのが、『物価上昇』だニャ。まあ、もう一つあるがニャ」


 塩止めによる効果は塩が手に入らないどころではない。塩は商人が持ってくる物なので、まずは商人の通行を止める事になる。次に甲賀から出る人も止める。これについては大まかになる。恒興の側は付城で塞いだが、伊勢方面や大和方面は付城まで造っていないからだ。

 そうなれば甲賀は塩だけではなくあらゆる物が不足する。その結果、起こるのが物価上昇となる。

 もう一つについて、恒興は言及しなかった。こちらについては恒興にとっても起きて欲しくない事なので、その前に交渉出来る事を願っている。だが長引けば必ず起こる事なので注意しておかねばと恒興は思う。


「物流を完璧に止める事は出来ねーギャ。だが『塩』に関してはほぼ完璧に出来る。何しろ塩は伊勢、近江や山城、そして大和の商人辺りから仕入れるニャ。甲賀では塩は採れないからニャー。伊勢は織田家の勢力下、近江や山城はニャー達が塞いだし、大和は松永久秀が塞ぐ」


「なるほど、物価上昇かー」


「塩というより経済で甲賀を締め上げる訳ですな」


「甲賀は山国だが経済圏だニャ。京の都に近過ぎたのが原因だ。何しろ甲賀の主力産業は『人材派遣』、昔から貴人の護衛や雑色を育てて派遣しとるからニャー。コイツは効くぞ」


 今回の要点となるのは人流と物流の制限。特に甲賀と流通量の多い近江や京の都の商人を排除する為に恒興は付城を造ったと言える。とはいえ伊勢と大和の商人も放置は出来ないので、伊勢側を長野信包、大和側を松永久秀が塞ぐ事になっている。

 大和側と甲賀との間には険しい山々があるので商路は狭く、商人に働きかけるだけでも効果はあるだろう。こちらは松永久秀が抑える。彼は寺勢力とは仲が悪いが商人とは上手くやっているので適任である。

 伊勢側は伊賀が完全に開いている為、完全には無理だろう。とはいえ伊勢国は津島会合衆の勢力下なので抑えは効く筈である。念の為、長野信包の軍勢が日野城周辺を塞いでいる。彼らは甲賀攻略完了と共に撤収となる。


「噂には聞いとったが、流石のえげつなさだでよ。真似出来ねー」


「流石は殿、相変わらず冴え劣る事無いえげつない策でございますな」


「やかましーんだニャ、テメェラァァァー!いい加減にしとかんと、はっ倒すぞ!!」


 そろそろえげつないと言われる事に慣れてきた恒興だが、言い返す事だけはしておかないといけない。何故なら言い返さないでいると『えげつない』が定冠詞化して『えげつない恒興』とかあだ名に付けられそうだから。


「それで殿、時間はどれくらいと見ておられますかな?」


「だいたいだが一ヶ月程度、と見ているニャー」


 それを聞いて土居宗珊と木下秀吉は首を傾げる。さすがに期間が短過ぎると。


(……疑問に思ってるニャ、二人共。ま、物価上昇なんて起きないだろうからな。そんなもん、甲賀の領主達が手を打たない訳がない。だけどニャ、この話にはもう一つヤバいモノが含まれているんだよニャー。ニャーも気を付けてやらないと)


 この経済封鎖には恒興にとって起きて欲しくない事態も隣合わせになっている。それ故に細心の注意を払わねばならない。だからこそ一ヶ月で音を上げて欲しい。この『一ヶ月』は恒興の願望も含まれていた。


「しかしよぉ、勝三殿は何で甲賀にここまで手の込んだ事するんだ?」


「甲賀衆という諜報機関を織田家に引き入れるためニャ」


 恒興が甲賀に対して無理な攻勢を掛けず付城戦術を使ったのは、甲賀の力を弱めず織田家の諜報機関として取り込む為である。甲賀は恒興が欲しがる程に諜報能力が高い。その理由が『人材派遣』である。人材を鍛えて各地に派遣して甲賀の資金を稼いでいるのだが、そこで得た情報は甲賀に送られている。およそ畿内であれば集められない情報はないくらいで、濃尾勢の動きもかなり掴んでいる。既に森三左衛門可成の出陣も知られている、運ぶ食料の事も。そして甲賀衆は昔から人材派遣をしているので別の地域に溶け込み易いという事もある。余所者を嫌う地域が多い戦国時代において、それは特技だと言える。


「え?そんだけか?諜報専門なら織田家にだって……」


「へえー、じゃあお前は情報を何処から仕入れてるんだニャー?」


「そりゃあ川並衆さ」


「そうだニャ。ニャーも川並衆と商人だわ。近江国に関しては主に金森衆だけど」


 織田家にも諜報を担当する者達は存在している。彼等の活躍と言えば何と言っても『桶狭間の戦い』で今川義元の本陣の場所を突き止めた事だ。

 だが恒興も秀吉も情報取得する上では殆ど使っていなかった。彼等が使っているのは川並衆や商人が主なのである。


「……」


「……」


「使ってないじゃん、織田家の諜報機関!?」


「お粗末な程使えねーギャ、アイツラは!物見程度しか出来ねーもん!だから欲しいんだニャ、実力のある諜報機関が」


 理由は『使えない』から。いや、この表現は正しくない。正確には『戦場以外では使えない』である。普段における周辺諸国の情報取得にはまったく使えないのだ。たしかに戦場での物見は必要ではあるのだが、それは目と足が良い者なら割と出来てしまう。恒興や秀吉が欲しい情報は戦を優位に出来る情報で、出陣前の話なのだ。

 だから恒興は商人や川並衆を重視している。商人は他国へ行く者、他国から来た者と周辺の情報を実際に見聞きしている。情報を良く集めるのも、商機を掴む為の必須スキルだ。そして商人は余所者として見られる事も少ない。地元民にとっても商人が来てくれないと生活が苦しくなる一方だからだ。つまり自然と他国に潜入出来てしまう。その商人は必ず物流に川並衆を使う。陸路よりは水路を使った方が遥かに荷物を運べるからだ。それに木曽三川の様な大河は舟でないと渡れない。だから川並衆にも自然と情報が集まるのである。織田家の諜報機関は他国に行かないので情報など集まりようもない。


「全国の大大名はお抱えの諜報機関を持っているもんだニャー。織田家も大大名になったんだから必要だ。しかし一から育ててる暇はニャい。という訳で甲賀衆を丸ごといただこうって寸法ニャんだよ」


「なるほどなー」


(話は解らなくはない。だが、それにしても大掛かりなものだ。過ぎる程に。……殿、まだ何か隠しておられますな。他言出来ない様な事、という訳ですかな)


 全国の大大名ともなると自前の諜報機関を抱えている事が多い。有名な所を挙げると伊達家の黒脛巾組、北条家の風魔衆、上杉家の軒猿、武田家の三ツ者、六角家の甲賀衆、尼子家の鉢屋衆、毛利家の外聞衆、龍造寺家の嬉野忍者となる。

 恒興はその内の甲賀衆を丸ごと織田家に引き入れる為に、今回の計画を実行したと語る。つまり甲賀の力を削がずに欲しいのだと。

 それを聞いて、土居宗珊は恒興がまだ何かを隠している事を見抜いた。理由は単純で『資金』だ。この付城戦術は大量の資材木材を必要とし、大変なお金が掛かる。付城戦術を他の大名が真似出来なかったのもそれが理由だ。甲賀が欲しいとはいえ、やり過ぎな程の資金を消費した筈である。ハッキリ言えば割に合わないのだ。その点から宗珊は恒興に副次的な目的があると見た。そしてそれは今は言えないのだろうと察した。


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 甲賀にある村の娘はご飯の支度の為、早朝に買い出しに行った。今日は村の朝市が開かれる日だからだ。この時代、商店は町にしかなく農村には市が開かれる日が決まっていた。それが地名となっている場所は現在もある。滋賀県八日市市や三重県四日市市がその名残りだ。八のつく日に市が開かれる、四のつく日に市が開かれるという意味だ。

 だから娘は気合いを入れて買い出しに赴く。この機を逃せば次の市は10日後になってしまう。それでは食卓がとても貧相になってしまうのだから。

 市に着いた娘は市で商店を開いている馴染みの店主に声を掛ける。


「親父さん、味噌欲しいんだけど」


「あいよ」


 店主は壺から味噌を掬って娘に渡す。それを受け取って娘は怪訝な顔をする。いつもより明らかに量が少ないのだ。


「え?これだけ?もっと無いの?」


「済まねえな、戦が始まって商人が来てないんだ。みんなの分も考えて、今はこれで我慢してくんな。商人から仕入れたら声掛けるからよ」


「えー、そんなぁ……しょうがないかー」


 娘はガックリと肩を落とす。しかし仕方がないとも思う。織田家との戦は始まっており、彼女の父親も甲賀を守る為に前線に行ったのだから。だが渡された味噌の量を見て娘は「早く戦が終わらないかな」と思わずにはいられなかった。


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【あとがき】


べ「『小牧長久手の戦い』について前回少し述べた訳だけど」

恒「藤吉が秀次を総大将にしている点は問題だよニャー」

べ「でも彼以外では秀吉さんか秀長さんくらいしかなれないから仕方ないよ。じゃなきゃ、中入軍は恒興くんが総大将になってしまうね。それで中入戦術が成功した日には秀吉さんの権力確立に悪影響を与える。あくまで池田恒興くん、森長可くん、堀秀政さんを抑えて総大将になれる格が必要だった。秀次さんでギリギリ、秀吉さんの名代となれる感じかな」

恒「じゃあ、『小牧長久手の戦い』の真相は3番目だと言いたいのかニャ?」

べ「あくまでべくのすけの一意見でしかないけど、『全部』だと見ているよ」

恒「全部!?」

べ「秀吉さんが政権を確立するには織田旧臣は邪魔でしかない。これは事実だ。だから恒興くんや長可くん亡き後、両者の家は秀吉さんによって衰退した。また丹羽長秀さんが亡くなった後の丹羽家も秀吉さんから凄い言い掛かりを付けられて少大名にまで落とされた。それまでは100万石以上あった。堀秀政さんは『小牧長久手の戦い』では唯一徳川軍を押し返したし、亡くなった後も優秀な家老が居たため手が出せなかった様だ。まあ、秀吉さんに逆らわなった様だし問題無しと見たのかも。3番目はこれらから邪推したものだ」

恒「じゃあ2番目だニャー。『家康が神ってた』か」

べ「付城戦術には弱点があるんだ。家康さんは見事にソレを突いた」

恒「弱点?何ニャ?」

べ「『付城を造ってる最中に襲われると負ける』だよ。秀吉さんは多分、付城を造ろうとしたと思う。でも造り始めた直後くらいに襲われて大敗を喫したのではないかな。土木作業員達が反撃で三河武士を撃退出来るかと考えれば早いかな」

恒「あー、付城戦術って敵が籠城して出て来ない事が前提だもんニャー」

べ「だから信長さんは圧倒的兵力差で行う訳だ。でも家康さんは付城戦術を知っていると思うし、自ら出て来て暴れてるし」

恒「兵力圧倒的劣勢、小牧山城を堅城に改修して、この状況でほぼ全力出撃してくるか。判断が神ってるニャー」

べ「で、1番目なんだけど……」

恒「ニャーが信長様の戦術を理解してないって?そんなバカニャ(笑)」

べ「へえ〜。じゃあ言うけど、何で付城出来てないのに中入軍が進んでいるのかな?前陣は長可くんと恒興くんだよね?中入戦術は付城戦術が前提だ。少なくとも信長さんは付城が出来るまでは迂闊な動きはしない。戦力を集中させて付城建築現場を防御する。朝倉さんが来た頃にはある程度完成していたから全力で越前まで行けた訳だ。その間、長政さんは付城に囲まれて動けなかった。そこんとこどうなの?」

恒「……記憶に御座いませんニャー」

べ「しかもだよ、誰かさんはまだ三河にすら入ってないのにどんちゃん騒ぎしてたよね?戦勝会とか言って」

恒「……記憶に御座いませんニャー」

べ「トドメに秀次さんが家康さんに襲われた時、助けに来たのは堀さんだけだったね〜。総大将放って何処にいたのかな?連絡はとっていたのかな?」

恒「……記憶に御座いませんニャァァァー!」




べ「『塩止め』と聞いてその結果、何が起こるか知っている人はどれだけいるだろうか?」

恒「塩は人が生きていく上で絶対に必要だニャー。そんな事は誰でも知っている。無学な民衆でもだ」

べ「実は古代において塩は瀬戸内海が主な生産地なんだ。これは作りやすいかそうではないかという違いだ。瀬戸内海以外は作れないという話ではなく、瀬戸内海以外では作れる量が少ないという意味。気候の関係でね」

恒「瀬戸内海は地形的には山に挟まれてるからニャー。比較的、天候が安定してるんだよニャー」

べ「だからこそ瀬戸内海以外では塩は貴重で必需品だった。塩の消費を抑えるために混ぜ物をして保存期間も長い食べ物を造った。それが『味噌』だ。この味噌から出来る副産物が『醤油』となる」

恒「つまり味噌を造れば、自動で醤油も出来るのかニャー?」

べ「現在では味噌は味噌、醤油は醤油で造る。醤油が造れる味噌は特殊で、かなり水分を含んだ味噌だからね。金山寺味噌は美味しい」

恒「味噌はどれくらい前からあるかわからニャいが、大唐にある『醤』をベースにしているらしいニャー。その製造途中が『未醤(みしょう 未だ醤ならず)』→『味噌(みそ)』らしく、飛鳥時代にはあったそうだニャ」

べ「となれば渡来人系技術だろうね」

恒「で、この話と塩止めとニャんの関係があるんだニャー」

べ「塩は流通物だと認識してくれればいいよ。それが欠乏していく時、何が起きるのか(枯渇ではない)」

恒「ゴクリ……」

べ「答えは……ホワ○トベースが補給に動く事態になる!」

恒「それは関係ねーギャ」

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