千代が泣くから

 秋も深まってきた頃、庭に出て遊ぶ自分の養女達を眺めていた。縁側に座り、一人考え事に耽っていた。

 恒興の考え事は近江出兵準備の事である。問題は如何にして出兵準備を六角家に覚らせないかだ。当然だが、織田家は六角家と敵対しており、そこかしこに六角家の間諜が紛れているだろう。

 現状では最前線となる佐和山城を攻略しなければ南近江には入れない。この佐和山城を無視して南近江に侵入するのは難しいのだ。何故なら佐和山城の付近に街道が通っていて、織田家の輜重隊はここを通らねばならず危険なのだ。

 それなら大軍を持って佐和山城を重包囲してから通ればいいと思われるかも知れない。実際、織田軍は大軍となるのだから出来るだろう。しかし大軍勢で攻め込むにはまず集める時間が必要である。そして織田家が集め始めた時点で六角家も集めるだろう。という事は、どう考えても佐和山城近辺に防衛線を張られる。突破するのにどのくらいの時間が掛かるか分からない。

 たとえ突破出来ても佐和山城にはかなりの兵数が籠る事になる。五千人も籠られたら、その3倍の一万五千人は包囲に置いていかなければ抑えきれない。

 そうなると南近江攻略に使える兵数が減るし、実際は包囲にこれ以上に必要となる。何しろ佐和山城の西には『琵琶湖』があるからだ。そしてこの琵琶湖が『水』である以上、『利権』がある。即ち『湖賊』と呼ばれる水軍衆が存在しているのだ。

 湖賊の中で大きいのは二つ。南近江堅田かたた付近を根城している『堅田衆』、もう一つが北近江西浅井を根城にしている『菅浦衆』である。

 この二者は敵対関係で六角家の支配下にはないのだが、六角家から相応の謝礼を貰えば依頼は受けるだろう。

 この者達が襲ってくる可能性も考慮しなくてはならない。

 恒興にとって佐和山城対策は頭の痛い問題なのだ。これは恒興が前世の歴史に逆らった結果なので責任は取らねばと思っている。前世の佐和山城は浅井家所有で同盟関係だったので、素通り出来た訳だ。

 現状では農繁期が終わり次第、徴兵を開始して進軍となっている。つまり佐和山城は正攻法で攻め落とす事になる。ただこれだと時間制限までに間に合うかが焦点となる。

 恒興が一息ついて再度庭で遊ぶ少女達を見ると、いつの間にか両側に正室の美代と側室の藤が座っていた。彼女達も恒興と同じ様に庭で遊ぶ少女達を眺めていた。美代は主に千代を見ている様だが。


「織田家の猛将ー♪掛かれ柴田の68ヶ城ー♪退き佐久間に米五郎左♪木綿藤吉、一夜城ー♪」


 少女達は歌いながら交代で毬をついていた。歌っているのはどうやら最近流行っているもので、織田家の有名武将の事らしい。掛かれ柴田とは柴田勝家の事、攻める時に必ず「掛かれ、掛かれぇーぃ」と叫ぶのでそのまま異名となった。退き佐久間は殿戦を得意とする佐久間信盛。米五郎左は丹羽長秀で米の様に無くてはならない者ということ。木綿藤吉は木下秀吉の事、木綿の様に丈夫で役に立つという意味だ。

 それはいいのだが、その歌の中に変な物が混じっていたので恒興は思わず口にした。


「……ニャんだ、一夜城って?」


「墨俣城の事やろ」


「一夜で出来てねーギャ」


 墨俣城に建築には二週間ほど掛かっている。一夜で出来たのは精々外壁と櫓くらいだろう。そもそも空堀と土台は川並衆によって事前に作られていたのでその程度で済んだと言える。

 まあ、砦としては最低限は出来ていると言えるかも知れない。完成したと言うには二週間くらい掛かったという事だ。


「そうなんですか?噂になってましたので、そうなのかと」


「ま、調べようにも既に海の底だがニャー」


「おねさん、大丈夫やったんやろか」


「心配いらんニャ、最初から住んどらん。居たのは秀吉達と川並衆くらいで、増水前から逃げ出しとる」


 墨俣城はこの夏の木曽川の増水によって1年程の短い生涯を終えた。既に稲葉山城の攻略も終わり美濃全域を収めたので用済みではある。因みに再建予定は無い、また流されるだけで無意味だからだ。

 恒興が妻達と会話していると廊下の隅から加藤政盛が姿を現す。


「殿、来客です」


「ん?予定はニャいはずだが、誰だニャ」


「実は……」


「……そうか、ちょっと待たせておくニャー」


「はっ、ではその様に」


 政盛は恒興にだけ聞こえる様に耳打ちする。恒興はその人物が誰かわかると待たせる様にと指示を出した。


「おーい、千代。ちょっとこっち来るニャー」


「どしたの、お兄ちゃん」


 次いで、恒興は庭で養女達と一緒に遊んでいた千代を呼び寄せる。来客の件に少々関わるので話しておこうと思ったのだ。


「いや、実は山内一豊の事ニャんだがな……」


「そうだよ、一豊様は何時、帰ってくるの?」


「いや、ニャーにそんな事を聞かれてもニャー」


 恒興から切り出した事ではあるが、そんな事は彼にも分からない。今は南近江で仕官に成功した様なので当分帰ってこないのではないかと思う。

 だが、そんな恒興の返答を聞いて千代は涙目になって泣き出してしまう。


「うわああぁぁぁーーん!絶対、都女にうつつを抜かしているんだー、うわああぁぁぁーーん!」


「いやいや、そんな事はニャいって!もしそうならニャーがぶち殺すから!」


「うわああぁぁぁーーん!一豊様が死んじゃうー、うわああぁぁぁーーん!」


 慌てて恒興が慰めに掛かるが、これは逆効果となり、千代は更に泣き出す。


「どういう慰め方をしているんですか、あなた様は!」


「恋する乙女に恋人殺すとか、何て事言うてんのや、旦那様は」


「兄、流石に引くぞ」


「あ、はい、スンマセンですニャー」


 怒る美代に呆れる藤、更に庭に居た蔑んだ目をしている妹の栄にまで責められ、恒興は小さくなって謝る。どうにもこの池田家では女性が強くなる傾向が顕著だなと恒興は思う。美代などは嫁いで来た頃は借りてきた猫が空回りしている印象だったが、妊娠してからというもの正室という強さが増している感じがある。

 これも母親の教育の賜物なんだろうかとも思う。


「心配すんニャ、千代。もうすぐ上洛が始まるニャー。そのついでに一豊も連れ戻すから」


「ぐすっ、ホント?」


「ああ、ホントだニャー。もし浮気してても折檻くらいで済ますから」


「……嘘ついたら針千本だからね」


「あ、はいですニャー」


(この目、マジニャんですけどー。こうなったらアイツ、簀巻すまきにしてでも連れ戻すか。居場所は知ってるしニャー。コイツのおかげで)


 千代の視線に冷ややかなモノを感じながらも、恒興には勝算があった。それは山内一豊との繋がりが切れていない点である。その繋がりがやってきたので千代と会わせておこうと思って呼んだのだ。話は変な方向にズレていったが。

 恒興は部屋の端に移動して襖をスパーンと開け放つ。するとその奥に土下座して控えている若者が居た。


「そこんとこどうニャんだ、為浄?」


 そこに居た若者は山内家家老の五藤為浄。家老とは言ってもまだ15歳で少年と言ってもいい。彼の父親が家老だったので、家督継承に当たって家老職も継承した。現在は山内一豊に伴って、付いてきた家臣達の纏め役をしている。

 恒興への来客とは彼の事であった。


「あれ?為浄君だ。どうしたの?」


「はっ、一豊様におかれましては、その様な事は一切御座いません。私も見張っておりますので、ご安心を」


「そうなんだ、よかった~。それの報告にわざわざ来てくれたの?」


「あ、いえ、そのー。池田様にお願いをと……」


 千代の素朴な疑問に為浄は口籠る。主人の恥にもなりかねない要件故、あまり口外にしたくないのだ。

 恒興は当然、それを知っていた。為浄が来る事は最初から予想していたからだ。


「その願いはニャーの私室で聞くニャー。来い」


「はっ!」


 恒興は為浄を伴い自らの私室へと向かう。準備自体は大分前からしていたので渡すだけである。

 それにここからは女性陣には聞かせられない。恒興の本領、調略の分野なのだから。


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 私室にて、恒興は為浄を座らせると戸棚から荷物を取り出して、彼の前に置く。


「まずコレだろ。持っていけニャ」


「……お見通しの様で。恐縮です」


「ま、仕官が叶ったのなら、まず困るのはコレで間違いないからニャー」


 恒興が為浄に出したコレとは風呂敷に包まれた荷物であった。結構な重量はある様で置いた拍子にジャラッと鈍い金属音が鳴る。中に相応の銭が入っているのは明白だった。

 恒興は一豊が仕官出来たのなら金に困る事くらい、最初から予想済みであった。だが一豊の性格上、彼が恒興を頼るとは考えにくい。とは言え、異国で頼れる者も皆無であり、進退が極まっているだろう。

 そんな状況を見かねて為浄は独断で犬山に来たのだ。立場的に家老で主人と弟の如く近しい彼は一早く金の工面に動いた。そして迷う事なく、犬山にやって来たのである。

 何しろ、恒興は以前に旅費を出している。……だけではない。実はあの旅費の中に置き書きを入れてあったのだ。家老としてお金の管理をしていた為浄はそれを見て犬山に来た。こう書いてあったのだ、『金に困ったら来い』と。

 山内一豊は南近江瀬田城主・山岡景隆の元で仕官した。経緯は領内見廻りをしていた景隆が一豊の一団を見付け、事情聴取しているうちに意気投合したというもの。とりあえずは景隆が個人的に雇った小者といったところだ。

 とは言っても、仕事をするとなれば他の家臣との共同作業も多い。その山岡家臣達と上手く仕事をしようと思えば当然、仲好くなる必要がある。

 その方法が軍談と称した『宴会』である。同僚を招いて酒や肴を振る舞い語り合うのだ。恒興の所にも前田利家や佐々成政がよく出入りしているのがそれに当たる。

 これらは普通、持ち回りでやるのだが、余所者である一豊は特に気合いを入れてやらねば家中でイジメられ追い出されるだけだ。

 この宴会費用の他に一豊の部下の給料もある。とても俸録だけでは足りないだろう。

 恒興はそこまでお見通しであった。


「受け取ってばかりで心苦しいのですが……」


「そう言いながら、お前も分かっているんだろ?話せニャ」


 恒興はニヤリと嗤って話を促した。つまり返礼として情報を渡せと暗に示唆しているのだ。為浄もそれを察し喋り始める。


「はっ、噂ではありますが……どうも六角家新当主・義治と筆頭家老の後藤賢豊の仲が上手くいってない様です。何でも後藤はここに来て織田家との和睦を提案したとか」


「ふむ、それで?」


「これも噂ですが、六角義治は後藤賢豊の次男で佐和山城代の後藤高治を探っている様です。幾人かの甲賀者が派遣されました。……山岡家は六角家の甲賀交渉役ですので、依頼は山岡家に来ました。確実に近い噂です」


「ふーん」


「……もしかして何かされました?」


「べっつにー。ニャーは何もー」


 恒興は惚けた振りをしながら、自分の工作成果が出始めている事にほくそ笑んだ。その一方で為浄は恒興が何かしたのだろうと予測していた。

 本来であれば六角家側に属する為浄は主人に通報しなければならない立場だが、そこには恒興が口に出した言葉が有る。彼はその真偽を確かめる事にした。


「……先程の話は本当なので?」


「何の話だニャ?」


「一豊様を連れ戻すという話です」


 恒興が口に出した言葉は千代との約束。即ち、『山内一豊を連れ戻す』である。これが実行されるならば為浄は織田家の不利に働く事は出来ない訳だ。だからこそ確かめなくてはならなかった。


「それは一豊次第だっていうのは分かってるんだろ。アイツにその気がニャいと無意味だ」


「それはそうなのですが」


「まあ、今にアイツも思い知る時が来るニャー。池田家での未来、山岡家での未来、お前はどっちを選ぶ?主人のために、己のために。そこんとこよく考えて動け」


 そう言われて為浄は考える、池田家での未来、山岡家での未来を。山岡家の当主との仲は良好だし、山岡景隆も良い主君と言える。だが一豊は所詮、小者で余所者なのだ。山岡家の身代はそう大きいものではないし、そうそう出世出来るものではない。

 それに自分達の事を思えば、現在は小者の手下だ。そこら辺の野武士とそう変わらない。武士としての誇りを保つのも難しい。現に幾人かは絶望感を抱いている様子がある。

 だが、もし一豊が池田家に行けば状況が一変する。何しろ彼は誰が何と言おうが池田恒興と相婿で義弟なのだ。一門衆、最低でも準一門衆になる。現状を考えれば恒興に一門の男が一人も存在しないので、一門衆筆頭すら有り得る。

 となれば、自分達も池田家一門衆の家臣。当然だが家中でも一目置かれる。武士の面目も大いに保てるだろうし、給料も良いはずだ。

 そしてこの池田家は10万石を超える大領の持ち主。自分で管理しきれない城は無条件で任せられる可能性すらある。池田家の領地なのだから他人に任せるより、まず身内に預けるだろう。

 そう思うと為浄としては織田家のために動いた方が一豊のためだと考えた。


「……何をすればよろしいのでしょうか?」


「特に何も。疑われて追い出されない様にしろニャー」


「それだけですか?」


「ああ、それだけだニャ。黙っていても時は来るニャー。ただ、犬山に来るのはこれを最後にしろ。だからこの金はよく考えて使えニャ」


「は、はぁ」


 恒興は彼等に何かをさせる気はなかった。というより、現在山岡家の小者をしている一豊達に出来る事など殆ど無いし、出来る事は既に金森の部下達がやっている。そこにブッキングさせてもいい事は無いし、大した効果も望めない。

 彼の出番は六角家本拠・観音寺城攻略後に訪れる、恒興はそう考えていたのだ。

 為浄はその後、荷物を受け取り帰っていった。恒興は一人部屋で為浄から得た情報を元に考えていた。


(六角義治が後藤高治を探るために甲賀者を派遣したか。……愚かニャ。甲賀衆にも後藤派はかなり居る。義治の行動は直ぐに後藤賢豊の知るところとなる。賢豊が息子に嫌疑を掛けられて黙ってる訳がニャい。これは近いニャー)


 恒興は六角義治の暴走は近いと見た。自分の仕掛けに獲物が掛かった確信を得たのだ。

 ならば出来る限り気取られない様に準備をせねばと、恒興は予定を組み始めた。


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【あとがき】

べ「あけましておめでとうございます」

恒「本年もよろしくお願いしますニャー」

べ「早いもので、この小説ももうすぐ二年になります」

恒「二年掛けて上洛戦が始まらニャいって、どんだけ遅筆なんだニャー」

べ「な、何とかがんばろー。という訳で、本年の目標となる言葉は……『一寸先は闇』」

恒「お前の小説そのものじゃねーギャ!」


恒「ふっ、ニャーはネットを駆使して、直義と師直のケンカについて新情報を得たニャ。それによれば師直は悪行三昧で清廉な直義に嫌われていた。だから派閥が割れたんだニャー。領地横領、寺社焼き討ち、そして覗き趣味まであったんだ!どうニャ!」

べ「ふーん」

恒「ニャんか反応が薄いニャー」

べ「だって、目立つ政治家の醜聞が出てくるなんて世の常じゃないか。ワイドショーネタでしかないね」

恒「ほんと興味無さげだニャー」

べ「じゃあ、一つ一つ考えていこうか」

恒「まず師直は公家や寺社の領地を奪って部下に分け与えてたってニャー」

べ「そんなの何処の武家でもやってるよ。例を出すなら織田信秀さん」


信秀「あの寺の市場欲しー。政秀、Go!」

政秀「了解。ならず者アターック!」

寺「ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ」


恒「信秀様の名前をわざわざ出すニャー!」

べ「足利家だって他人の領地を奪ってるさ。足利には元々『藤姓足利家』がある。俵の藤太こと藤原秀郷さんの子孫だ。年代的に考えて、彼等が居た所に無理矢理入ったんだよ」

恒「ふむ」

べ「面白い話を紹介しよう。足利家初代義康さんの頃、全国的に流行った事がある。それが『領地の寄進』だ。なにせ寺社領は『非課税』なんだ。だからこういう事が起こった」


武家「領地を寄進しまーす」

寺社「おK、税金は朝廷より安くしとく」


恒「……ただの脱税じゃねーギャ!」

べ「このせいで平安時代後期には日本の半分が寺社領になるという異常事態に陥った。そして足利家初代義康さんはコレを利用した」


義康「(藤姓足利家の)領地を寄進しまーす」

伊勢神宮「おK、税金は朝廷より安くしとく。源姓足利家の領地って保証してやる」

義康「ただで領地GETうめーw」

藤姓足利家「かえしてー(号泣)」


恒「ひ、ひでーニャ……」

べ「そんなに特別な事ではないってとこかな」

恒「男山八幡を焼いたのはどうだニャー。これは悪行だろ」

べ「出陣命じたのは尊氏さんだけどね。それにこれは布陣した南朝方が悪い。松永久秀さんが東大寺を焼いたのも一緒さ。そこに三好三人衆が布陣してるんだから。場所貸す方が悪いね」

恒「それは脅されて仕方なくじゃないかニャー」

べ「なら、尚の事、布陣した方が悪いね」

恒「ならこれはどうだニャー。師直には女風呂を覗く趣味があって、直義や御連枝達は彼を下卑た者と嫌っていた」

べ「覗き趣味は個人の性癖だから何とも言えないけどさ。それってあるなら昔からだよね。京都に行ってから急に目覚めた訳じゃないよね」

恒「まあ、そうなんじゃニャいかな」

べ「それは命知らずな趣味だねー」

恒「ん?」

べ「この頃の関東がどういう所か知らないのかな?例を挙げよう」


板東武者「妻が浮気した?死ねぇぇぇい!ズバーッ!」

板東武者「家の前を坊主が横切った?死ねぇぇぇい!ズバーッ!」

特別出演?「夫が浮気した?愛人宅を焼いてやる!ボワーッ!」


恒「バーバリアンかニャー、おまいらは」

べ「覗き趣味なんてあったら、もう殺されてるよ。そこに身分も理由も関係無い、殺る必要があるから殺る、それが坂東武者。まあ、お坊さんに関しては鎌倉時代初期には緩和していたと思う。北条政子さんが仏教保護をしてたから。親鸞さんが行脚出来るくらいには」

恒「全部反論されてしまったニャー」

べ「まあ、御連枝には既に捏造の事実があるからねー。そういうのは疑って見ると面白いって言わなかった?」

恒「むむー」

べ「真実は知らないし、今更分かりようもない。けどさ、コレ、師直さんを貶すだけじゃなくて尊氏さんも同時に貶しているんだよ。分かっているのかな」

恒「どゆことだニャ?」

べ「だってそういう人間を重用していた事になるからさ。主君として見る目が無いって事になる。それに関東でそういう事やってたら、まず間違いなく足利家は北条得宗家に潰されている」

恒「そこで何故、北条得宗家が出るんだニャー?」

べ「簡単だよ。尊氏さんの頃の北条得宗家は『御家人』潰しに熱心だった。なにせその少し前に日本は外国から攻められた。撃退はしたけど、その恩賞問題で財政は青色吐息だからね。なるべく御家人を潰して領地を奪わなきゃ」

恒「あー、元寇があったニャー」

べ「だから尊氏さんは北条得宗家に隙を見せる訳にはいかない。師直さんが記事の通りの人なら真っ先に処分しなければならないはずだよ。その辺に説明がつかない。まあ、政権を取ってからはっちゃけた可能性もなきにしもあらず、かな」

恒「……そうか、分かったニャー。そういう事だったんだ、べくのすけ」

べ「どうしたんだい、恒興くん?」

恒「ニャー達は真実に辿り着いたのかも知れない。尊氏が師直の味方をした真の理由、それはニャー……」

べ「それは?」

恒「尊氏は師直と同じ趣味を持っていたんだニャ!同じ覗き仲間として師直がいないと良いスポット情報が手に入らなくなる。尊氏はそれを恐れて直義の排除に動いたんだニャー!!」

べ「な、なんだってーーー!?」

恒「……」

べ「……」

恒「どうかニャ?コレ」

べ「頼むから新年早々M○R並の新説、ぶち込まないでよ」

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