可児六郎ブルース

 私は可児室原にある『可児村』の土豪・可児六郎左衛門秀行という。何故、村が地方の名前である『可児』かというと、単に全員可児を名乗るからだ。

 こういう地名をそのまま名字にするのはよくある事だ。でなければ世の中は源・平・藤原で溢れている。誰だか分からなくなるだろう。

 ウチの可児家は土岐家や斎藤家に仕えていた。しかしこの二家で出世する事は出来なかった様だ。門閥の大豪族の力が強過ぎて出世出来ないんだ。これは大体何処も一緒だ。

 この大豪族が強いから土岐家は斎藤家に乗っ取られた。その斎藤家も長井家に乗っ取られている訳だが。大豪族には自分の都合に良ければ頭は誰でもいいという連中が多い。

 実力があればのし上がれる戦国時代っていうのは、実力(大豪族の支持)があればの話だ。

 隆盛を誇った斎藤家も大豪族に見限られてああなった訳だ。だから出世も大豪族に連なってないと出来ないのは、何処の国でも変わらない。大豪族の養子になったり、嫁を貰えればまた話は違ってくるんだけど。

 そんな現状に嘆くしかなかった私に転機が訪れる。織田信長様の勢力拡大だ。

 今川義元の上洛で潰されるだろうと思っていたら、逆襲して大勝利。しかもこの奇跡の勝利に尾張の豪族達は殆ど関わらなかったため、その勢力は大きく後退し、相対的に織田家の勢力は大きくなった。今川義元が勝つと見込んで日和見してたんだろうな。

 そしてこの拡大の流れは加速する。犬山城が落ちたと思ったら、直ぐに東濃まで落ちた。

 その東濃の領主として森可成様が入った。今の私の主君であり、この時に私は森家臣になった。だって、可児室原は東濃だし。

 更にあれよあれよの間に伊勢国が落ち、美濃国も完全に落ちた。

 これを主導したというのが『犬山の猫』こと池田恒興様だ。この方は信長様の乳兄弟だ。やはり出世に縁故は必要なのか。羨ましい。

 だがこの方は縁故に依らない採用をする。私の幼馴染みである可児才蔵さえも召し抱えているんだ。池田様と才蔵に接点が無い事くらい、調べんでも分かる。

 しかも五百石で親衛隊長だ、どんな厚遇のされ方なのか。真面目に森家に仕える私でも百石なのに。一応、才蔵がいなければ私が可児一族の出世頭なんだ。

 だがこんな事を考えていても仕方がない。更に忠勤に励み、才蔵なんて追い抜かしてやる!


「殿、可児六郎左衛門秀行、御召しにより参上仕りました」


「ああ、来たね、秀行君。君に申し渡す事があってね」


「はっ、何なりと。この森家忠臣・可児秀行にお申し付けくだされ」


 私は主君・森可成様に接見する。今日は重要な話があるという事で呼び出されたのだ。

 重要な任務かも知れない。この主君のためなら命を捨ててでも真面目に任務を果たす、この心が出世へと繋がるんだ。私はそう思っている。

 この森家も元は土豪だった。だから森家内は門閥が少なく、働き次第で出世も出来るはずだ。

 私は主君が申し渡す如何なる任務もこなしてみせると気合いを入れた。


「うん、ありがとう。君、明日から森家の家臣じゃないから」


「……え?」


「明日から池田恒興君に仕えて貰えるかな?」


「えー……?」


 殿はその爽やかなイケメンスマイルで、私を奈落へと突き落としたのだった。


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「えー、こんな芋虫の世話すんのか」


「気持ち悪いがね」


「触りたくねえなぁ」


「いや、皆さん、お殿様のお達しですよ」


 津島に本拠を置く商人である大橋清兵衛は可児村を訪れていた。そこで村人にある幼虫を見せ、その世話を依頼していたのだ。


「そうは言うても、清兵衛さん」


「こんなん飼ってどうするがや」


「ただの芋虫じゃねえべさ」


「皆さん、この蚕が繭を作るんです」


 その幼虫は『蚕』。関東から取り寄せたもので、緑の桑の葉の上をもぞもぞ動いていた。その数は沢山としか言い様がない。

 コレを見る村人達の顔は一様に『気持ち悪い』と書いてあった。


「繭作ったらなんだべさ」


「んだんだ」


「……ふう、いいですか。この蚕が繭になったら『売れる』んです。因みに金額は繭1個でコレです」


「は!?嘘だべ!?」


「桑の実、籠一杯にしてもこんな金額にならんがや!」


「冗談ゆうとりゃーせ!」


「皆さんと長く取引をしている私が嘘をつくと?」


「「「……」」」


 大橋清兵衛が提示した金額を見た村人達は一斉に驚く。可児村の人達は田んぼや畑をやる合間に桑の実を収穫しているのだが、これは大した収入にはならない。だが貧しい村にとっては貴重な収入だった事は間違いない。

 可児村と長く取引している商人から提示された金額はそれを遥かに上回っており、村人達は仰天した。そして彼等の幼虫を見る目の色はあからさまに変わっていく。


「な、なんやぁ、よお見たら可愛らしいでよぉ。真っ白でさぁ」


「あたし、この色、好きかも」


「ちょこちょこ動いとるがや。可愛ええなぁ」


 その様子に大橋清兵衛は頷いて、説明を続ける。


「この蚕は鳥が狙ってきます。ですので窓は目の細かい網を張り、扉はしっかり締める事。日の光に弱いので外に出さない事。あと乾燥を嫌いますので常に水瓶を置いておく事、水をあげる時は少量を細かく振り掛ける程度で。いいですね」


「「「はいっ!!」」」


 私が村に戻った時には、既に池田恒興様からの命令が来ていた。この村で養蚕をやるらしい。蚕を見て最初こそ気味悪がっていた村人達は、大橋清兵衛殿から買取り値段を聞くや目の色を変えてしまった。

 ここで私が池田家に仕えないなんて選択肢を選んだら、一体どんな事になるんだろうな。既に拒否出来ない状況になってるよ。

 気が重い、やっと森家に慣れてきたのに。池田家に行って新参イジメでもあったらどうしよう。憂鬱だ。


 それでも行かねばならない。宮仕えの哀しさか。

 私は誰に声を掛けるでもなく村を出て犬山に向かった。そしてそこにはよく見た顔が待っていたのだ。

 そう、池田家に仕える五百取りの幼馴染み、可児才蔵だ。そうだった、コイツが居たんだった。


「よう、六郎、来たな」


「……才蔵か。ホントに居たんだな、犬山に」


「まだ信じてなかったのか、テメー」


「それどころじゃないんだよ、こっちは」


「相変わらずそういう肝は小さいのな。戦場のお前とは大違いだ。ま、心配すんな、殿には俺に次ぐ槍の腕前って触れ込んどいたからさ」


「お前の触れ込みねえ……」


「その目は信じてねえな、おい!」


 私は才蔵と軽口を叩きながら池田邸に案内される。腐れ縁の幼馴染みではあるものの、正直助かったとも思う。お陰様で話し相手もいない孤独は避けられそうだ。

 そして私は新しい主君である池田恒興様と接見する。猫耳みたいな癖毛があり背丈は低め、どう見ても武芸が出来る様には見えない。才蔵の様な武芸者を護衛に欲しがりそうだと私は思った。


「お初にお目にかかります。可児六郎左衛門秀行であります」


「お前が可児秀行か、待っとったギャ。ニャーが犬山城主・池田勝三郎恒興だ」


「ははっ、よろしくお願いします!」


 特徴的な喋り方をするなぁと思った。だが主君からの第一印象が良さそうなのは幸いだ。

 才蔵からの触れ込みが効いているのかも知れない。


「今回は無理言って悪かったニャ。その詫びという意味ではないが給料は二百石、そして親衛隊副隊長に任命するニャ」


(き、給料が倍増!?しかもいきなり親衛隊副隊長!?)


「ま、才蔵の推薦だしニャ。お前も見知った人間が居ればやりやすいだろ」


「はっ、有り難き幸せに御座います!」


(才蔵、お前の事をちゃらんぽらんでただ飯たかりでろくでなしの穀潰しでただのアホだと思ってたんだけど、ちゃんと私の事を考えてくれてたんだな。済まない、そしてありがとう……)


 才蔵の推薦で給料は倍増、更に親衛隊副隊長に任命された。才蔵の部下というのが少しだけ躊躇うところはあるものの、同じ職場に見知った者が居るというのは心強かった。

 それに才蔵は私のためにここまでしてくれたのだから、今までの事は全部忘れて感謝するべきだと思った。

 だが私はこの後、主君から信じられない一言を聞いてしまうのだ。


「ホント頼むニャー、秀行。そこの親衛隊長、サボりがちだからニャー」


「は?」


「やだなぁ、殿、あの時は腹痛で……」


「……お前、ニャーのところに苦情が何十件来てると思ってるんだニャー?親衛隊は家族だつってんだろ。ニャーは日常的に声を掛けてんだよ」


「あ、いや、はははー」


 話はどうやらこの様だ。才蔵の推薦は本当にあった。私の槍の腕前は才蔵には敵わないが、そこら辺の武芸者なら一蹴出来ると自負している。才蔵が異常に強いだけだ。

 それを聞いた主君・池田恒興様は新しい護衛&指揮官として私を見込んだらしい。それは何故か?コイツがサボるからだ!この才蔵という男は自分じゃなくても出来るだろうという仕事はよくサボるのだ。村の桑の実を守る寝ずの番もかなりサボっていた。

 というか、それが斎藤家での乱闘の原因だったのに、まだ反省してなかったのか。


「何やってんの、お前!さっきの私の謝罪と感謝を返せー!」


「何の話だーっ!?あ、あれだよ、『工房大工にも腕の誤り』ってヤツ」


「それを言うなら『弘法大師にも筆の誤り』だニャ。しかも用法が間違っとる、そもそも弘法大師はサボらん」


「才蔵ェ……」


「殿!六郎を他の者に引き合わせてきます!では、失礼!」


 アホな言い訳をしながら才蔵は私を連れて、池田邸から飛び出した。主君の溜め息をつく様が、昔の自分と重なって見えた。

 次に行ったのは近くにある家老の土居宗珊殿の屋敷だった。


「初めまして、可児六郎左衛門秀行と申します」


「ウム、それがしは池田家家老の土居宗珊だ。君には期待している」


「ははっ!」


 剃り上げた坊主頭は得度(出家してお坊さんになる事)しているのだろう。顎髭を蓄えた厳しそうな面持ちの壮年男性、それでいて静かな様相を漂わせている。私の第一印象はそんな感じだ。


「時に才蔵、某が前に言い付けておいた……逃げたか」


「え?あれ?いない!?」


 宗珊殿は才蔵にも声を掛けるが、……いつの間にか居なくなっていた。何でいきなり逃げてるんだよ。


「全く、あの者は」


「あ、あの、何か御座いましたでしょうか?」


「君が恐縮する必要はない。才蔵にはサボりの罰を言い付けておいたのだが、その罰もサボっている様なのでな」


(マジで何やってんの、アイツ)


 私は宗珊殿に全力で謝罪してから屋敷を出た。それを見計らって才蔵も出てきた訳で。本当にコイツは相変わらずだなと私は嘆息した。


 次に訪れたのはうまや。ここの管理をしているのが商家出身の加藤政盛殿だ。彼は伝令から伝えられた情報を殿に伝え、殿の命令を早馬で報せる秘書の様な役割だ。

 そもそも厩舎の管理は武士の花形の仕事だと言える。朝廷の官位にも存在する、右馬助や左馬助がそれだ。それほど馬は軍事の要なのだ。

 上級の武士は戦に行く時、馬に乗って偉いのだという事を示すものだ。情報伝達にも馬は欠かせない。人では運べない荷物も馬なら運べる。更に馬は農作業にも活躍する。

 その武士の花形の仕事を商家出身の彼がやっているというは驚きだ。だから私は池田家なら出世出来るかもと思った。

 彼はきっと実務能力で、この地位に就いたと思うからだ。つまり殿は人を家柄ではなく能力で評価している事に他ならない。

 私と才蔵は仕事をしている細身な男性に近付いていく。


「君が『真面目な』可児殿か。私は加藤政盛だ。政盛でいい」


「私は可児六郎左衛門秀行です。こちらも秀行で……『真面目な』?」


 私は変な枕詞まくらことばが付いてきた事に首を傾げる。まるで真面目じゃない可児がいる様な……横に居たわ。


「や、やだなぁ、政盛殿。お、俺はちゃんとやってますって、ははは」


「そう言いたいなら、桜見物している殿やご家族の方々の警護中にふいと居なくなって、屋台で買い食いしないように」


「いやー、飯食ってなかったもんで」


「三回も行くほどか?」


「ねえ、お前、何やってんの?マジで!」


 才蔵はどうやら春の桜見物で殿とそのご家族を放といて屋台へ行ったらしい。祭などで屋台が出るのは相当珍しいが、それだけ犬山が発展していて安全なのだろう。だからと言って警護中に親衛隊長が買い食いしていい訳はない。

 もちろん、他の隊員も警護に付いているだろうが、隊長が率先してサボっているのは示しというあたりが問題だ。


「あ、ちょっと厠へ行ってくる!」


「あ、コラ、てめー!」


「逃げたか」


「すいません、政盛殿!」


「構わないさ。君の様な真面目な人が副隊長になったのは喜ばしい事だ。頑張ってくれ」


 政盛殿は逃げた才蔵を追う事はなかった。またか、くらいの表情で慣れてしまった様だ。私は政盛殿に謝罪をしておいたが、彼からは励ましの言葉を貰ってしまった。

 そしてまたタイミングを見計らって出てきた才蔵と私は合流した。


「お前、いい加減にしろよ」


「いやー、俺って正直者だからウソが下手で下手で」


「正直者はそもそもウソつかねーよ!」


コイツは何れくらい痛い目を見たら反省するのか教えて欲しい。ホントに。見栄や保身の為の嘘は弄さない男ではあるのだが、言い訳と誤魔化しはしてくる。しかも超が付くほどの下手くそレベルで。多分、みんなはサボりだって判ってると思うぞ。


 今度は警備所である番所にきた。そこには池田家備大将の飯尾家当主・飯尾敏宗殿が居た。かなりガッシリとした体格で武人然とした人物だ。

 彼も政盛殿と同じく池田家の隆興を支えた重臣だ。小豪族の部屋住み次男坊から始まって、今では六千石の当主、その内五千石は自分で増やしたというのだから驚愕だ。

 殿が凄過ぎて目立っていないが、これはかなり凄い事なのだ。


「貴殿が『真面目な』方の可児殿か。私は飯尾敏宗と申す」


「可児六郎左衛門秀行です……って、また!?」


 そしてまたあの枕詞が付いてくる。共通認識なのか?


「や、やだなぁ、敏宗殿。お、俺はちゃんとやってますって、ははは」


「そう言いたいのならば、治安警備会議にはちゃんと出るように」


「あ、あの時は親父が危篤で……」


「その言い訳は三回目だ」


 呆れる敏宗殿の顔が印象的だったのだが、それ以上に聞き逃せない言葉が私の耳に入ってきた。アイツの親父さんの事だ。


「て言うか、お前の親父さんはとっくに亡くなっただろ。子供の頃にさ!」


「あ、バカ、六郎!」


「ほほう」


「ねえ、何やってんの?ねえ、何やってんの、お前!?」


 ヤツは事もあろうか亡くなった親父さんを蘇らせて危篤にしていたらしい。親父さん、草葉の陰で号泣してるぞ。


「あ、稽古の時間だ、急がなきゃ。てな訳で仕事行ってきます!」


「あ、てめ、才蔵ーー!!」


「ふう」


「も、申し訳ありません、敏宗殿!」


「いや、気にしなくていい。もう慣れた」


「よく皆さん、アイツを放逐しようとしませんね」


「ああ、普通ならそうするのかもな。だが殿は大体全部を知っていて尚、才蔵をクビにする、罷免する、放逐するとは言わない。ただの一言もだ。ならば我々が言う事ではない」


「は、はあ」


「だが、職務に影響が出るのは困る。貴殿には本当に期待している」


 敏宗殿は最後に私の肩に両手を置いて、真剣な眼差しで期待していると言った。その迫力に私は頷く事しか出来なかった。


 どうしよう、上手く馴染めるかなんて悩んでいたら、新しい殿に、家老に、最古参の重臣に『期待している』なんて言われてしまった。それだけじゃない、会う人会う人に言われるんだ。て言うか才蔵のヤツ、ホントに何してるんだよ。

 あんなんで五百石取りとか悪夢だろ。殿がいい人過ぎる。ここは一つ、私が才蔵のヤツを更生させるべきか?

 ……待てよ、五百石だぞ。そうだよ、五百石なんだよ、アイツ。五百石っていう事は……才蔵が可児一族一の出世頭じゃないか!

 マズイ、これは非常にマズイ!出世頭っていうのは一族を代表する人間と目される。誰にって?世間からだよ。

 つまり『可児一族代表の才蔵はちゃらんぽらん』が世間では『才蔵の可児一族はちゃらんぽらん』になる。したがって『可児一族はちゃらんぽらん』だと一括りにされてしまうんだ!

 アイツ一人のせいで可児一族の名声がとんでもない事になるんだ!

 後世の歴史家が『可児一族はちゃらんぽらん』と評するだろう。後の世に生きる子孫が『アイツの一族はちゃらんぽらん』だと罵倒される。才蔵一人のせいで。

 どうすればいいんだ!いや、諦めるのは早い。少なくとも私は殿やみんなから期待されているじゃないか。ならば私が真面目に務めて、その評価を覆してやればいい。

 そうだ、ウジウジ悩んでいる場合じゃない。私の肩には今を生きている可児一族のみんなと、将来を生きるであろう子孫達の名誉が掛かっているんだ!

 森の殿様はこの現状を知っていて、わざと私を突き放したのかも知れない。可児一族を救ってこい、お前に退路は無いんだと。(妄想)

 私は走り出した。最初に行った池田邸の庭に。まだ殿はそこに居るかも知れない。

 そして見つけた、猫の耳みたいな特徴的な癖毛の人物を。

 私はその前に跪いて宣言する。


「殿!この可児六郎左衛門秀行、誠心誠意、真面目に忠義を尽くします!」


「お、おう。頼むニャ」


 森家臣から池田家臣になった私はもう何の迷いもなかった。


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 その様子に恒興はわざわざ引き抜いた甲斐はあったかなと感じていた。


(これで少しは才蔵にも責任感が出てくるかニャーとか期待してみたりして)


 才蔵は最初の頃は張り切っていたものだが、戦が無いためか弛緩しがちであった。更に本来は親衛隊の仕事ではない治安維持業務まで入ってしまった。犬山の拡大が予想以上で人員不足が発生したためだ。だからといってサボられては困るのだが。

 そこで可児村を貰うついでに可児秀行も譲ってもらった。そのために可児村周辺二百石を猿啄城近くの一千石で交換した。秀行を連れてくる事で隊の引き締めと才蔵のお目付役としたのだ。

 それだけ恒興は才蔵を買っていた、前世の記憶による所も大きいが。あの男は活躍の場さえあれば活躍するはずだと。

 そして親衛隊では超が付くほど強いがサボる隊長より、かなり強くて真面目な副隊長の方が頼りにされる様になっていく。その様子に才蔵も焦りを感じ、少しは真面目になった。

 後に恒興は狙い通りとほくそ笑むのであった。


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【あとがき】

養蚕開始と可児才蔵の他家での喧嘩理由を勝手に妄想してコメディにしてみた感じ。因みに村人達の反応は『韓非子』が元ですニャー。

才蔵くん、親衛隊の稽古は真面目にやってますよ。みんなの生死に関わるしニャ。


越後の龍vs犬山の猫

甲斐の虎vs犬山の猫 もういないけど

相模の獅子vs犬山の猫

中国の謀聖vs犬山の猫

土佐の出来人vs犬山の猫

奥州の独眼竜vs犬山の猫 まだいないけど

薩人マシーンvs犬山の猫

……

べ「ダメだ、勝てる気がしねー」

恒「やかましいニャー!」


三河の狸vs犬山の猫


べ「あ、なんかいい勝負出来そう」

?「おいーっ!?」

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