プロローグ②
眼を開けると、そこは一面の草原。
俺にはその光景に見覚えが無かった。つまりここは異世界。
転生と言っても赤ん坊からのスタートではないらしい。まあ、世界の危機を救うのだから大人になるのを待っている暇はないだろう。
すらりと伸びた色白の手は確実に俺のものではなかった。
指も長い。視線を足下に向けると……脚も長い。
ベルトの上に軽く乗っていた贅肉は消え去り、服の上からでもわかる割れた腹筋。
生まれ変わった俺の身体は理想的なものだった。顔も輪郭を確かめただけでわかる。コレ、絶対イケメンじゃん!
俺TEEEの始まりだぜ!
意気揚々と、第一村人を探しに異世界チート探訪の第一歩を踏み出した瞬間、
「そこまでだし、チート野郎」
いきなり現れた少女は腰に手を当て、不遜な態度で、
「お前の冒険は今日、ここで終了だし」
なにやら言っている。
「ごめんよお嬢ちゃん。俺には世界を救うという重要な任務があるんだ。だから邪魔しないでくれるかな?」
優しく、穏便に伝える。自分は崇高な使命を背負った存在なのだと、
「はぁ? 何言ってるのかわかんないし」
眼光鋭く、口の悪い少女は舌打ちをして、
「めんどくさいから一回殺しとくし」
「お嬢ちゃん。そんな言葉を使ったらダメじゃないか」
宥めるように言うと、乱暴な言葉使いに拍車が掛かる。
「お前、ムカつくし。臭い息吐いてんじゃねぇぞ、マジで殺す」
第一村人との接触は見事に失敗に終わった。けど、気にすることはない。何せ俺は選ばれた存在なのだから。
チート能力を駆使して俺TEEEする、その野望の邪魔はさせない。
「ごめんねぇ、お嬢ちゃんに構ってる暇はないんだよね」
「こっちも、お前なんかに構ってる暇はねェし」
次の瞬間、世界が暗転した。
……は?
気が付けば俺は空を見上げていた。
視界の端に少女の顔がある。汚らわしいものを見るような、蔑んだ瞳を向けている。
そこで自分が少女に転がされたのだと気付く。
「このっ!」
少女を視界から消すべく手を払う。
ヴォン、と風を切る。
超人的な身体は不可能を可能にする。
立ち上がり、大きく伸びをする。
油断大敵、ここは異世界。どんな力があるか分からない。気を引き締める。
それでも負ける気はしない。この肉体と授かったチート能力をもってすれば俺は無敵なんだ――、
「なんで……?」
俺は地面に転がされていた。
ありえない、初めての戦闘で敗北――完膚なきまでの敗北。
魔法も肉弾戦も剣術も、全く歯が立たない。
「お前が誰からその力を授けられたのかは知らないけど、その力、取締りの対象だし」
「取締り?」
意味が分からない。取締りってなんだ?
困惑が表情に出ていたのだろう。
「取締りは取締りだし」
何の回答にもなっていない。
「私は帰るし、後はヨロシクだし」
「はいはい」
!?
唐突に第三者の声。
「誰だアンタ!?」
「僕ですか? 僕は異世界転生・転移管理局、第9係所属、
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