第2話 朝

 プラスティックサンの日差しが窓から差し込んでくる。

「あ~よく寝た……」

 小学校の教科書では朝の日差しと共に鳥という空を飛ぶ小動物の声が聞こえ、バイクのエンジン音など様々な音が聞こえたらしいが、俺は今まで21年間生きてきて聞いたことがない。鳥は食用としてNASAが加工して販売しているものしか目にしたことがないし、バイクのエンジンだって密閉世界を空気汚染から守るためにプラスティックサンからの電波を動力に変える仕組みだから音なんてしない。唯一教科書通りなのはこの声……。

「ユウマ! 早く起きなさい! 仕事遅れるわよ~!」

 そう、母の怒鳴り声である。これだけは21年間変わらずだ。


「わかってる! 今行くから!」


 俺の答えも多分21年間一緒なんだろう。


 俺の仕事は警察ってところだろうか。エーゲス博士が開発をしたタイムディスクは食料問題を解決してくれた一方、この技術を悪用しボロ儲けしようとする者が後を絶たない。時空を越え、歴史上有名人間や天才科学者の脳を誘拐し、ヒューマン社の技術で再生させ闇闇市で高額で売りさばくのだ。このような過去歴史が変わってしまうような事件を未然に防ぐ為にタイムキープをしている。


 俺が警官になる以前に起きてしまった悲惨な事件は「ケネディー大統領暗殺事件」だろう。1963年にタイムスリップしたリー・ハーヴェイ・オズワルトは地下生活から月面生活へのシフトで一儲けしようと、アポロ計画を発表していたケネディー大統領の脳を奪い取ったのだ。もしあの時ケネディー大統領の脳が奪われていなければ、人類は地下ではなく月での新たな生活をしていたのかも。もっと厄介なことはオズワルトは1963年の警察に捕まってしまったことだった。2118年からやってきた人間だなんてことが知られてしまえばパニックは避けられない。そこでタイムキープ事後処理班に所属していたジャック・ルビー巡査がオズワルド抹消に乗り出し、見事成功。怪しまれることなくオズワルド殺害犯人として死刑判決を受けるが、服役4年を経て獄中にて死亡という形で地下世界に戻って来た。当然オズワルト巡査は元気に生きている。今はタイムキープカンパニー日本支社長という役職となっているが、今でも現役のキーパーとして現場で活躍している。


「あんた! 今日から新しいミッションなんだろ~、早くご飯食べなさいってば!」


 母の声がさっきよりも大きくなっている、怒りMAXなんだろう。


「わかってる! 今行くから!」


 やっぱり俺の答えはこれである。

 そう、今日から新しい任務に就くことになっている! しかもリーダーとして……

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