第8話【lesson③マーリル〔魔力操作)】

ラルフレッドの修行後の3時間後。


疲労感もまだ残る中またもや荒野の真ん中にマーリルと俺が二人きり。


「一つ!!聞いて置きたいんだけど貴方!歳いくつなの!?」


「じゅ、16‥だけど。」


「ちっ。一つ上か‥。」


え?今舌打ちした?


ってか俺の一個下なの!?


「もっと下かと‥!!?」と言いかけた瞬間、俺の胸ぐらを掴み取り、自分の目線にまで引き寄せるマーリル。


「貴方!今何か言おうとしたでしょ?」


目がマジだ。相当気にしているのだろうか?


「い、‥いえ何も‥。」


余りのおっかない顔に俺は目線を逸らす。


「嘘ね。言って。さぁ言いなさい!!!何を言おうとしたのかしらぁ?マーリルの前で!!!」


何なの!!?言ってほしいのか?


っつか首しまる!!ってか気にしてそうな一言は死んでも言っちゃいけなさそうだ!!


あっ!


「い、‥いや。可愛いなぁって‥思ったりなんかして‥」


急にマーリルが俺の胸ぐらから手を離し、頬に両手をあてがう。


「なっ!?何言って!!」


まさか効果覿面!?


「本当だよ。本当に可愛いなって思う。」


まぁ可愛いのは確かだし、大丈夫!嘘は無い。


これが同世代とかだと絶対言えない様なセリフでも見た目幼女のマーリルなら不思議と言えてしまう自分にも驚きだ。


それに‥


「ばっ!!ばばばばばかぁ!!!そんな真っ直ぐ見て言うんじゃないわよ!嬉しくなんかないんだから!」


マーリルは耳まで真っ赤に染めあげている。


わかりやす!!


ある意味一番扱い易いのかもしれん。


「オッホン。じゃ、じゃぁマーリルのlessonの説明をするから心して聞きなさいよ!」


「は、はい!」


俺よりも一つ下で幼女といえどブラッディウルフ海賊団の一員だ。 実力は相当な物なのだろう。それに後から聞いた話だけど、俺を治してくれたのもマーリルらしい。


【#奇跡の治癒__サクラメン__#】。その魔法は並ランクの冒険者じゃそうそう使える人などいない。


それ程凄い魔法なのだ。


「でははじめに。マーリルのlessonは一見地味に感じるかもだけど魔力コントロールをメインとするわ。何故ならヒーラーの魔法は他の魔法と違って繊細なの。もう聞いたかもしれなけど、元の魔法に対して魔素を更に追加して強化する事は可能だけど、ヒーラーの使う魔法の場合は其れこそ精神エネルギーと一定に近い状態でなければ発動しないの。だから貴方の場合、マーリルのlessonで唯一救いだったのは、ヒーラーの職についていて【#治癒__ヒール__#】を使えるということね。そこそこ魔力コントロールに長けているという事よ。勘違いしないで、ちょっとよ!本当に豆粒程度なんだから!!」


「そこまで強調しなくても‥。」


「因みに言っとくけどつい先日、貴方にかけた魔法は只のヒールよ」


「え?、骨折した時の?魔力を強化していたんでは無いってこと?けど、治りがかなり早く感じたんだけど!」


「フン。これだから素人は困るわ。あれが本来持つ、【#治癒__ヒール__#】の魔法よ。割合がより近づけば効果も当然上がるのよ。因みにマーリルの場合は少しのブレもなくピッタリなのよ。崇めなさい。」


同じ魔法でもあんなに違う物なのか?改めて基礎の大切さに気づく。


「で、俺の修行はどんな風に進んでいくの?」


「ふふん。それはズバリコレよ!」


マーリルは懐から白色の丸い玉を取り出し俺に手渡した。


よく見るとその丸い玉には模様?の様な筋がビッシリと刻まれている。迷路?


「これは魔法操作を訓練する為の魔法道具なのよ。私も初め使ったわ。特別に貸してあげるんだから感謝なさい。言っとくけど総長に言われたからやってるの!貴方の為じゃ、ないんだから!」


はいはい。と俺は軽く流す。勿論言葉にはしないけど。


「具体的にどうすればいいのかな?」


「この玉の両端に一つずつ大きめの窪みがあるの分かる。」


見てみると確かに有る。


「まぁ言うよりもやって見せた方がいいかもね。もう一度マーリルに渡して。」


俺へ首を傾げながら玉をマーリルに手渡すとマーリルは手で両窪みを抑えこみ、集中し始めた。


すると手が光だし、両窪みのラインから玉に描かれた線を伝う様に光が放たれていく。


そしてその光の筋は中央でぶつかると、混合して青い光に移り変わり、更に模様の筋をグルグルと伝っていく。とうとう最後には丸い光の玉へと移り変わった。


「まぁ、こんな物ね。簡単に言ってしまえば右手から魔素、左手から精神エネルギーが出ていると考えて一定を保ちつつ玉に流し込む感じよ。今は簡単に最後まで行くのを見せてあげたけど、この玉には仕掛けがあって、途中途中から魔力コントロールがし辛くなる仕組みになっているの。だから魔力の一定が乱れれば勿論、光も消えて最初からに戻っちゃうから気をつけて。」


「わかった。やってみるよ。マーリルはどうするの?この感じだと俺個人でできちゃうんだけど。」


「そうね。その玉の進み具合で新しい呪文を教えたりするわ。それ以外はマーリルも隣で自分の修行してるから何かあったら声をかけなさい。さぁ修行開始よ。」


○○○○


1時間後。


「嘘‥だろ?」


全ッ然できねえ!!!!!


むしろ左右が合わさって青い光に変える事すら出来ない!!!


何がどうなってんだコリャ!?


さっきマーリルはあんなに簡単にしてたってのに!!


やっぱり格が違うのか?いや、当然といえば当然だ。


だって最強のブラッディウルフ海賊団の一員だし。ましてや弱小と言われ続けてた俺だし!!


むむむむ!!それにしても出来ん!!


不意にマーリルをチラ見するとマーリルは静かに瞑想をしていた。


なんの修行なんだろう?けど、きっと凄い修行なんだろうな。


今はそんな事よりやるしかない!!


けど前にすすまない。それにラルフレッドの修行後疲労感も半端なく残っている。


瞼が重い。って眠っちゃダメだ!!


意識を保つ!


っつかいっそのこと思いっきり出し切ってしまおうか!


うお!と意気込んだ瞬間、ブオォォオ!!と辺りの空気が一気に押しあがった。


そしてまたあの時みたいに七色の光が空向けて放たれていく。


な、!?なんだ!?


自分でも良く分からない!!


その状況に驚き瞑想を切ったマーリルが目を開く。


「ちょっ!?ちょっとコレどういう事よ!?」


「俺に聞かれても!?」


俺の魔力がどんどん玉に流れ込む。だが青い光はでない。むしろピキッと音を立てはじめる。


え?


パキーン!!!


コナゴナに砕け散った。


そして辺りの雰囲気が正常に戻る。


「嫌な予感‥。」


背後を振り返るとマーリルが怒り震えている。


「なんて事すんのよ!!バカぁぁあ!!?」










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