第4話【lesson①ヒルデガルデ(魔力について)

「うう‥」


「やっと起きたか少年。」


目を冷ますとヒルデガルデがニヤリとした表情を見せていた。


つい先日にも似たような‥。


って‥「ぬぅぉぉぉおぉぉぉぁぁぁ!!!!」


何?なんで?なんでこんな事に!?


俺は落ちていた。それもとんでもなく高い場所から。


何処から落ちたとかの説明は出来ない。


辺り一面雲だ。地は見えないが只々、上空から落ちている事だけは確かだ。


「かかかか!その驚きっぷり!最高だ!!!ナイスだ少年!」


ヒルデガルデが親指を立てる。


「ナイスな訳あるかぁ!!!説明しろぉ!!!」


焦る俺とは真逆でヒルデガルデは共に落ちているにも関わらず、冷静を保ちドヤ顔で腕組みをした。


「"獅子は我が子を千尋の谷に落とす"。正にことわざの如く第1レッスンだよ少年。」


「馬鹿野郎!!何がレッスンなんだよ!!死んじゃうよぉ!!!」


「かかか!だがこれは必要な事だ。少し教えてやろう。冒険者は数多くいるが、その中でも少年の様にランクがいつまでも最弱のまま上がらず停滞する物がいるのは何故だかわかるか?」


「しるかよ!才能とかじゃないの!?ってかそんな場合じゃないんですけど!!」


死ぬぅ!!!


「才能か。半分正解だが半分外れだ!いやむしろ外れだ!少年!!」


「そこまで強調して言わなくてもいいでしょ。半分外れでいいじゃん」


「ならん!!何故なら大半の人間はある程度までは必ず強くなれる素質を実は秘めているからだ!。」


「は?何言ってるかわかんないんだど!!」


「かかか!やっと聞く気になったか?」


「聞きたくなくても聞こえるし聞かなきゃいけないんだろ?」


どうせ落ちてるし。真横だし!聞かなきゃ死にそうだし!!


「うむ。なかなかの精神力だ。では教えてやろう。その違いは【魔力コントロール】だ。魔力とは普段、炎や水などに具現化させたりする事はできるが目に見える物ではない。そして皆が勘違いしがちなのが、自分の体内にある魔力と勘違いしている。魔力とは、空気中に無限とある魔素が元となっている。」


「魔素?初めて聞いた。なら疑問点があるんだけど‥」


「なんだ?」


「無限に存在するならマジックポイントの底は無くなるんじゃないのか?」


「ちっちっち。考えが浅はかだよ少年。」


ヒルデガルデは指を横に降る。


「例えばだが、魔法使いがマジックポイントを使い切ったとしよう。使い切るとその人物はどうなる?」


「えっと‥。」


考えると直ぐにマドカの姿が思い浮かんだ。


マドカは魔法を一日7~8発が限界で、それを超えると衰弱しきったように倒れこんでいたっけ‥。


「たお‥れる?」


「そうだ。何故倒れてしまうのか?答えは簡単。大気中にある魔素と自分の精神エネルギーを体内で混合し、生み出すのが魔法だからだ。これは人間が息をするように無意識にできてしまう生まれ持った才能だ。しかしそれには容姿同様に個人差がある事も事実だ。つまり生まれ持って精神エネルギーの器は決まっているという訳だ。」


「なら一日に7~8回しか撃てない様な魔法使いじゃ到底、ランクを上げることは難しいんじゃないの?」


「甘いな少年。人間の平均寿命は病気や事故などに巻き込まれなければ約80~90歳まで生きると言われているんだ。そして人間の寿命置を決めるのは他でもない精神エネルギーだ。例を出すとするなら弱小と謳われるゴブリンだな。ゴブリンと戦った時、此奴細身の癖に力があって素早いし体力があるなと感じたことはないか?」


弱小と言われた俺達パーティーでは思いあたる節はいくつもあった。


「うっ、確かに。」


「だが不思議な事にゴブリンの平均寿命置は10年とされているんだ。」


「つまり?」


「ゴブリンの素早い動きや強い力は常に【#身体強化__ブースト__#】という魔法を使っているからだ。」


「【#身体強化__ブースト__#】!?」


接近戦を得意とするタイプがよく使う魔法だ。


だけど内のシンジは体力が消耗するからといつって此処ぞの時にしか使わなかった。


なのに常時【#身体強化__ブースト__#】をかけたままなんて事、考えられない。


え?けど待てよ。さっきヒルデガルデは精神エネルギーの器は寿命に関連すると言っていたよな。


つまり‥。


「気付いたようだな。そうだ、ゴブリンに関わらず魔物全体の内、10分の7が平均寿命50未満なのに対して人間はその倍近くある。つまり精神エネルギーにおいて、本来人間は魔物よりも圧倒的優位の位置にあり、尚!、魔法も魔物よりも数段と放つ事もできるのだ!!!」


「んなバカな!じゃぁなんで撃てない奴がこの世に存在するんだよ?」


「それは数字で表すと大まかだが非常に分かりやすい。精神エネルギーが10として、魔法を放つ時に魔素2を身体に取り入れたとすれば、本来2の精神エネルギーを使う。だが大半の人間は一対一の割合で魔法を放てる奴は少ないんだ。いや、むしろその事すら知らないと言ってもいい。だからマジックポイントが底につきやすい。だがしかし、これが自然と感覚で割合を近くできる奴がいる。また割合を魔素3、魔素4と繰り上げ強化できる奴もいるんだ。つまり、其奴らが上位ランクに入る連中と言う事になる訳だな。」


「って事はゴブリンは魔力コントロール能力が高いって事か。」


「そうだ!それはゴブリンに限らず魔物全てにおいて同じだ。これはわたしの勝手な推測だが、魔物の目は元々魔素を認識できているからだと私は思っている。」


「そんな事が‥」


「ふむ。細かな話はまだまだあるが、今日はこのくらいにして本題に入ろう。」


「って本題じゃなかったの!!?」


「うむ。ザックリと説明してやるから心してきくように!」


気がつけば真下に地が見えてきていた。


「うぉぉ!!いいから早くしてくれ!!」


「単刀直入に言えば、今から少年の精神リミッターを外す。これは魔力コントロール云々ではなく外すことのみに特化した特訓だ。」


「精神リミッター?さっき精神エネルギーの器は予め決まってるって言ってなかった?」


「確かに決まってはいるが、人間も魔物も元々本来の力を100パーセント最大限に使えない様になっている。使えるのは大体30パーセント程で其れを超えれる者は切っ掛けが無ければ超えられない。」


「なんで超えれない?」


「さっきも言ったように精神エネルギーを消費するからだ。精神エネルギーは脳に負荷がかかる為、消費していいのは大体30パーセントと脳が勝手にリミッターをつけているのだ。」


「じゃぁ外すと危ないんじゃないの?ってかそれとコレの関連性が全然分からないんだけど!!!」


「まぁ、言葉で説明するよりも実践あるのみだ。魔力を解放すれば自ずと分かる。」


「え?説明それだけ?具体的な助かる方法は?」


「甘えるな少年!!!師は弟子を空から落とすと決めたのだ!!これも愛だと理解しろ!」


「出来るかぁ!!!」


「しいてヒントをやるなら‥。思いかな?魔法を使う感じ? ん~‥。おう!これだ!魔法を使う時に手から放つだろう?その放つ前に何か暖かい大気の様なものを感じたことがある筈だ!あれを体全体に巡らせて熱くさせる感じ。そう、燃えるように!!」


「わかるかぁー!!」


「かかか!後は少年次第だ。いい結果が出る事を祈る。」


そう言ってヒルデガルデは姿を消した。


「嘘だろぉぉ!!!!!」


ヤバイ!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!


死ぬ!このままじゃ間違いなく死ぬ!


何処かはわからないけど真下は荒野になっている。


怖い!!それに何かに追いかけられ殺されるとかそう言った類いの怖さではない。


逃げる怖さならもしかしたら逃げ切れる?もしかしたら隠れて事が去るのを待つなど選択肢がある。


だが選択肢は2つに1つ。魔力のリミッターを外すか外さないか!


先日に死にかけた時は痛いを通り越して意識を失った。


だから死んでもいいのかも?と軽く思ってしまったけど、やっぱり生きていれば死にたくないと思うのは当然だ。


それに傷を負っているわけでもなく、それが出来れば助かると分かっていれば尚更だ。


どうすれば?


魔力を出す時?


俺の場合なら【#治癒__ヒール__#】を使う時?


集中してみる?わからん!!


意味わかんねぇ!!!


「意味わかんないよぉ!!」

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