第3話【転機は突然に‥】


「よう!やっと起きてきたか少年!昨日はすまなかったな。」


朝起きてすぐ下に降りると既にヒルデガルデ達が待ち構えていた。


ヒルデガルデも素の凛々しい感じに戻っていた。


昨日は色々あって周りを気にする余裕が無く気付かずにいたが、やはりブラッディウルフ海賊団の貫禄は桁外れに凄かった。


明らかに皆が向ける視線も違い、その場所だけが違う空間になっている事が肌でも感じられた。


シルフィードに席に着くよう指示された俺はヒルデガルデ達が囲む丸テーブルの輪の中に腰かけた。


「昨日私が言った発言について早朝から皆と会議したんだが‥、現時点で加入させるのは難しいという事になった。」


なんだ。やっぱり‥な。最弱の俺が入れる訳がない。


しかし断ろうとしていたから好都合でもある。けど残念な気持ちもある。


本当に俺は矛盾した人間だな。と情け無い気持ちになっていると急にヒルデガルデが俺の間近に顔を寄せた。


急な行動に動揺した表情を俺は見せる。


「え?」


「なので少年を鍛える事に皆の意見が一致した。」


「は?‥!!?はいぃ!?」


いきなりの展開で頭の回転が追いつかない。つまり返す言葉が思いつかない。


「なぁに、気を追うこたぁないさ。直ぐにパーティーに入れる。丁度私達は国王きっての依頼で1カ月程ここに滞在する予定だったしな。さっそくだが今日から1カ月少年を鍛える事とする。」


「な!?いきなり?え?」


「言っておくがお前を助けたのはブラッディウルフ海賊団の総長である私だ。つまり少年の命は私の所有物なのだ!少年に拒否権は無い!!」


「そ、そんな無茶苦茶な‥」


「ごめんなさいね。ヒルデは一度言い出すとキリが無いのよ。でも、やるからにはみっちり教えてあげる。」


「総長の命令だから仕方なくよ。有り難く思いなさい!言っておくけどマーリルは貴方の事認めてないんだからね!」


「皆んな弟子を持つの始めてだから張り切ってるねぇ。」


「アンタもでしょ!」


「まぁね。と、いうわけでハル君宜しくねぇ~。」


「私めも丹精込めてお教えさせていただきますぞ。」


いや、いやいやいや。


意味わからん!!


ガシャ。


ヒルデガルデに金属でできた腕輪を有無も言わさず取り付けられた。


「これは皆にも付けてもらっている【誓いの腕輪】というアイテムだ。これがあれば私達がどんなに離れていようと念じればその方向を指し示す。」


「なっ!ちょっと待っ‥!?って、え?外れない?」


「ははは!誓いの証だから当然だ。付けた本人が死ぬか外すかせん事には外れん。」


ドヤ顔でニヤリとするヒルデガルデ。


「な!!?なんてもん付けやがんだこの野郎。外せぇ!!」


思わず声を荒げるとドスっと腹部に衝撃が走り意識が薄れゆく。


「よし!早速修行の開始だぁ!!!修行は2時間交代で一日2人までだ。他の待機メンバーは王国からの依頼をこなしておくように!」


「「「「了解!」」」」


○○○○


「総長は初っ端から飛ばす傾向にあるからねぇ。あの子大丈夫かなあ?」


「どっちにしろ最初がクリア出来ないようじゃ前には進めないんだから。」


「さてさて、どんな筋肉にしましょうか‥ブツブツ。」


「さて、問題はあの子が何処までの者かが重要ね。」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る