Case3:いじめ

 それから5年たち、私は中学3年生になった。

 私は名門の女子校、ひめ百合ゆり女学院中学校に通っている。あまねゆきという名前で。

 これは吉良さん──お父さんが「これからの人生にあまねく幸せがあるように」という意味でつけてくれた。

 今日も私は名門校の制服に袖を通し、学校へ通う。


 姫百合女学院中学校は、中高一貫校で、お嬢様学校でもある。

 私は小学校は元の学校に通い、ここに入学した。幸い、あまり偏差値が高くなかったおかげで合格出来たが。

 校訓は「可憐で美しく、誇り高き人間であれ」だが、生徒は可憐ではない。外見だけの薄っぺらい奴ばかりだ。

 私が言う事ではないが「本当のバカ」が通う学校だと思う。

 何しろ「変わっている」という理由でいじめるような奴しかいないのだから。

 私は学校でいじめられている。でも、そんなのへっちゃらだ。昔、元両親にされた事に比べれば。

 それに、放課後になるとお父さんが復讐の方法を教えてくれる。いつか、元両親あいつらに復讐できる。それだけで私は生きていられる。

 もうお分かりだろうが、お父さんは「裏」の世界の人間だ。

 それも、知る人ぞ知る犯罪組織「月桂樹ローレル」のボス。本名、吉良かげ。私はボスの養女という設定で、昼は学生、夜は工作員をしている。


「周ー! 周ー!!」

 放課後、私を呼ぶ声がした。急いで向かう。

「……ったく、さっさと来いよ。グズが」

 舌打ちされた。

「申し訳ありません、早乙女様。ご用は何でしょうか? 何なりとお申しつけくださいませ」

 こう言えば早乙女は満足する。

「トイレ。付いて来い」

「かしこまりました」

 私は早乙女と一緒に教室を出て、早乙女の3歩後ろを歩く。

 以前、早乙女の前を歩いてしまった時「誰があたしの前歩いていいっつった? てめぇはあたしの3歩後ろを歩け」と言われたからだ。

 個室に入ると、腹を蹴飛ばされた。いつものようにわざとらしく倒れ込んだところに、更に蹴りが入る。拷問の訓練に比べれば屁でもないが。

 早乙女の「トイレに行く」という言葉は「用を足しに行く」という意味ではなく「ボコらせろ」という意味だ。

 しばらく蹴った所で満足したらしく「じゃーね。明日は何しよっかな〜!」

 と言って出て行った。

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