壊れた招き猫

小学3年生の正男君の部屋には、招き猫があります。


正男君は、ベットからいつも招き猫を見ていましたが、あまり好きではありませんでした。



「お母さん、どうしてこの招き猫は僕の部屋にあるの?」


「そういえば、いつからあったのかしらね。誰のだったかしら、忘れてしまったわね」


「お母さん、僕の部屋には招き猫いらないよ。どこかに持っていってよ」


「わかったわ、じゃあ玄関にでも置いておきましょう」


お母さんは、招き猫を下駄箱の上に置きました。


夕方、お父さんが仕事から帰ってきました。


「ただいまあ。あれ、何で玄関に招き猫が置いてあるんだ、どこかに持っていけよ」


お父さんは、招き猫が玄関に置いてあるのが気に入らないようでした。


お母さんが言いました。


「正男の部屋にあったのよ、その招き猫どうして家にあるのか覚えている?」


「さあ、覚えていないな。置く場所がないなら捨てたらどうだ」


正男君は言いました。


「捨ててしまうのはもったいないよ。じゃあ僕の部屋に置いてもいいよ」


正男君は招き猫を自分の部屋に持ち帰り、窓の端に置きました。



次の日、正男君は熱を出しました。


とってもとっても高い熱でした。


正男君は入院しました。


正男君は熱にうなされながら、何故か招き猫のことを思い出しました。


「お母さん、病院に招き猫を持ってきて」


お母さんは、招き猫を正男君のベットのそばに置きました。


翌日、正男君の熱は下がり、元気になりました。


正男君は思いました。


『きっと招き猫さんが僕の熱を下げてくれたんだ』


お母さんが正男君に聞きました。


「どうして招き猫のことを思い出したの?」


「何故か分からないけど、小さい頃からずっと部屋にあったから、なんだかすごく恋しくなったんだ」


それから正男君は、招き猫を大切にしました。



ある日、正男君はお友達と川に遊びに出かけました。


晴天で、とても気持ちの良い日でした。


正男君は楽しく遊んでいました。


しかし、お友達が川の中で足を滑らせ、流されてしまいました。


正男君は、助けようとしてお友達の腕を掴みましたが、川の流れが突然速くなり、お友達と一緒に流されてしまいました。


「誰か助けて!!」


正男君は叫びました。


そのとき、正男君の洋服が運よく木の枝に引っかかりました。そして、近くで見ていた人が二人を救出してくれました。



正男君は、しょんぼりして家に帰りました。


『怖かった。本当に怖かった』


正男君が自分の部屋に入ると、招き猫が床に落ちて二つに割れていました。


よく見ると、小さな紙切れが落ちています。


どうやら、招き猫の中に入っていたようです。


正男君はお母さんを呼んで言いました。


「お母さん、お母さん、ちょっと来て、招き猫の中に何か入っていたみたいだよ」


お母さんは、落ちていた紙を拾い、広げました。


「正男、これは正男が生まれる1ヶ月前に、亡くなったおばあちゃんが書いたお手紙よ!」


「えっ、なんて書いてあるの……?」


お母さんは読みました。


「生まれてくるかわいい正男君へ、おばあちゃんは正男君には会えないけれど、正男君がいつも元気でいられるように見守ります。いつまでも見守ります」


お母さんが思い出したように言いました。


「そう言えば、この招き猫、おばあちゃんの部屋にずっとあったわ」


 正男君は悟りました。


「僕はおばあちゃんに守られていたんだ!!」


この出来事は、正男君をずっと励まし続けました。



壊れた招き猫は……?


正男君が接着剤で一生懸命修理しました。


心を込めて、そして仏壇に置きました。


正男君は毎日仏壇に手を合わせます。


お婆ちゃん、ありがとう。



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