死体の懲罰
随分と泣きわめくようになったな、と私は吊るし上げられている
防除班による
ただ、予想されていた通り、一つの問題が浮上してきた。
流布する〈
〈コープス〉は河童を滅殺できる現状唯一の兵器である。それはつまり、ばらまかれた〈
そしてカッパ製薬の目的は、〈
これはCCCドライバーの機能で賄える。CCCドライバーは体内吸収した河童の〈
だがなぜ、防除班が行うのがその名の通りの「防除」ではなく「懲罰」なのか。
河童を完全に殺すことは人間にはできない。だが河童を殺すための技術は、かなり早い段階で開発されていた。それを組み込んだ唯一の武装が遅れて開発されたCCCドライバーであるというだけの話なのである。
その技術を漏らさなかったのは、河童を懲罰し、〈
情報を抜き取られた〈
その間に、〈
カッパ製薬の狙いはここにある。数に限りのある〈
そのために、CCCドライバーの運用には慎重を要する。
河童を殺す。〈
それを防ぐために、新規に〈
CCCドライバー装着者であるトオノには当然、その役目も課せられる。
ぼろぼろと涙をこぼしているトオノの、人間となんら変わらない右手をそっと持ち上げる。
「ねえ、トオノ」
まずは小指。それを筒状になった器具に押し込み、いやいやと首を振るトオノに優しく言い聞かせるように言葉を投げかける。
「アリスは元気? きちんと守ってあげている?」
「アリス――アリス! たすけ」
筒の入り口の上部のボタンを押す。トオノが獣のような悲鳴を上げた。
筒から抜けたトオノの小指の付け根には、無数の穴が空いていた。もはや自分の意思で動かすこともできず、ぷらぷらと不格好に垂れ下がるそれを私は右手で思いきり握りしめ、トオノの悲鳴を聞きながらぐりぐりと捻って引き千切った。
がくんと倒れた頭から、〈
私はそれを慎重に引き抜き、保存液の入ったチャンバーへと保管する。
トオノの腰に巻いたままのCCCドライバーをタップしてやる。
――CURE
トオノの小指が再生する。
だけど、同じところでは刺激が鈍麻しかねない。私は今度はトオノ親指を同じ筒の中に押し込んだ。
「ねえ、トオノ」
見境なく泣きわめくトオノの身体はしっかりと縛って吊るし上げてある。
「アリスは元気? きちんと守ってあげている?」
私は微笑みながら、またボタンを押した。何度も、何度も繰り返し、いっぱいの〈
「たすけて、アリス――たすけ」
「アリスはね、私を助けてくれる人なの」
本当に、懲罰は楽しい。
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