第2話 モンスターへ乾杯!

 今ちょうど交差点の真ん中にいる。行き交う人は皆、寒波の影響で着込んでる。たくさんの人がいるくせに道路は寒い。


 ふとあたりが真っ暗になった。太陽が消えた?んなわけないじゃんと、顔が変に笑い出した。一瞬でまた明るくなって、みんなが見上げていた空にそのカタチが浮かび上がる。


 毛むくじゃらのモンスターが空から降ってきた。おいおいハロウィンはまだまだよ、と何かの撮影?いいや、大きすぎる!圧倒的なチカラを持つ怪物。そんな怖いものは上司やオキャクサマだけで十分だと思っていた。世の中にはまだまだ知らないことがある。というより違う世界に迷い込んだみたい。


 ビルの看板が吹き飛んだ。たくさんの人が死んだだろう。間髪いれずその大きな声が、私たちを襲った。



「うおおおおおおおおお!!!!!」



 やけに聞き覚えがあってにやけてしまった。それはみんなで騒ぐ歓声と少し似ていた。私の中から恐怖が薄れ、なんともいえない興奮だけが残った。叫び声をあげて逃げる人の波に逆らって時々タックルされながら怪物に近づいた。



 モンスターへ乾杯!



 今私は人生の大きなステージにいる

 世界の終わりのようなこの景色を

 私にくれてありがとう

 お菓子をくれなきゃイタズラするぞ

 そんなこと絶対言わない

 本物のモンスター

 ねえ私を見てよ

 あなたの故郷から

 はるか遠く辺境の日常に

 ようこそ

 青空の穏やかな雲を見ながら

 夜空に時々輝く星を見ながら

 あなたに会うのをずっと待ってた


 そんな気がする

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る